スクワランの基本情報・配合目的・安全性

スクワラン

化粧品表示名 スクワラン
医薬部外品表示名 スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、シュガースクワラン
INCI名 Squalane
配合目的 基剤溶剤 など

スクワランは、英名が「Squalane」であることもあり、化学分野などにおいて「スクアラン」と表示されますが、化粧品分野においては「スクワラン」と表示されるため、ここでは「スクワラン」で統一して記載します。

1. 基本情報

1.1. 定義

スクワレンを水素添加して得られる、以下の化学式で表される炭素数30(C30の炭素鎖に4個のメチル基(-CH3を側鎖としてもつ飽和炭化水素(動物系、植物系または合成系炭化水素)(∗1)です[1][2]

∗1 動物系、植物系、合成系のいずかは由来原料や製造方法に依存します。

スクワラン

医薬部外品表示名については、それぞれ、

医薬部外品表示名 本質
スクワラン アイザメ(Centrophorus)その他の主として深海に生息するサメ類の肝油から得たスクワレンを水素添加して得られる飽和炭化水素
植物性スクワラン オリブ油コメヌカ油コムギ胚芽油ゴマ油などの植物油から抽出されたスクワレンを水素添加したもの
合成スクワラン イソプレンを出発原料として得られるもの
シュガースクワラン サトウキビの糖液の発酵により得られるファルネセンを二量化させた後に水素添加させたもの

このように、由来原料によって区別されており[3a][4a]、化粧品表示名としてはすべて「スクワラン」と表示されます。

1.2. 物性・性状

スクワランの物性・性状は(∗2)

∗2 凝固点とは液体が固体になりはじめる(固まりはじめる)温度のことです。

状態 凝固点(℃) 溶解性
液体 -38 水に不溶、エタノールに微溶、エーテルに易溶、脂肪油や鉱油と混和

このように報告されています[3b][5][6]

1.3. 化粧品以外の主な用途

スクワランの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 界面活性剤、基剤、軟化、乳化、粘稠、賦形、溶解目的の医薬品添加剤として外用剤などに用いられています[7][8]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤
  • 溶剤

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、スクワランは化学的に酸化安定性がきわめて高く、また炭素鎖の中で4個のメチル基(-CH3を側鎖にもつことから液状の飽和炭化水素であるミネラルオイルと比較して油性感はなく、さらに皮膚浸透性も優れていることから、油性基剤としてメイクアップ製品、クリーム系製品を中心に汎用されています[4b][9]

2.2. 溶剤

溶剤に関しては、スクワランは油溶性の化合物や植物エキスを溶かし込む溶剤として使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

スクワランは、混合原料が開発されており、スクワランと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL NATURAL OILS SSQ
構成成分 スクワランマカデミア種子油ホホバ種子油オリーブ果実油カニナバラ果実油
特徴 シュガースクワランと4種類の植物油をブレンドした混合植物油
原料名 EMACOL CD-9422
構成成分 スクワランマカデミア種子油メドウフォーム油コメ胚芽油ヘーゼルナッツ油、シア脂油、アボカド油ホホバ種子油ツバキ種子油ブドウ種子油アーモンド油月見草油カニナバラ果実油
特徴 オリーブスクワランと植物油12種の植物由来エマルション・エモリエント剤
原料名 KSG-340
構成成分 スクワラン、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー
特徴 W/Si型、W/O型クリームをつくることができ、滑らかな感触を付与する乳化剤
原料名 KSG-840
構成成分 スクワラン、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー
特徴 W/Si型、W/O型クリームをつくることができ、しっとりした感触を付与する乳化剤
原料名 NIKKOL ニコムルス LH
構成成分 グリセリン水添レシチン、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクワランステアロイルメチルタウリンNa
特徴 ほとんどの油性成分を乳化する、チキソトロピー性のある複合O/W型乳化剤
原料名 KSG-44
構成成分 スクワラン、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー
特徴 アルキル鎖を構造にもつシリコーン架橋物がミネラルオイルに膨潤しているため、炭化水素油への膨潤性が高く、油相に粘性を付与するなめらかな感触のゲル剤
原料名 キュービックコーケンアクアジェル
構成成分 アルギン酸Na、アルギン酸PG、水溶性コラーゲンスクワランラウリン酸ポリグリセリル-10
特徴 フィッシュコラーゲン配合ゲル化剤
原料名 FLORA GREASE SまたはFLORA GREASE SS
構成成分 キャンデリラロウエキス、スクワラン
特徴 リップ製品に配合することでグロス感と付着性を向上させ、また顔料と混合することで発色、安定性の優れたカラーペーストをつくることができるキャンデリラロウの樹脂成分とオリーブクワランまたはシュガースクワランの混合品
原料名 MOISTURECUBE
構成成分 グリセリンスクワラン水添レシチンコレステロールPEG-60水添ヒマシ油
特徴 肌中の細胞間脂質を補い、保湿性を発揮する細胞間脂質構造に類似した複合成分
原料名 NIKKOL パウダーシュガースクワラン 03
構成成分 スクワランシリカ
特徴 パウダー製品へしっとり滑らかな感触を付与するスクワランを内包させた機能性球状シリカ

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2001年および2018-2019年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

スクワランの配合製品数と配合量の調査結果(2001年および2018-2019年)

5. 安全性評価

スクワランの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
    (合成スクワランのみ)
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 98名の患者に15%スクワランを含むモモ核油をパッチテストしたところ、いずれの患者においても陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1968)
  • [ヒト試験] 103名の被検者に16.8%スクワランを含むクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 600名の被検者に7.2%スクワランを含む保湿クリームを対象にパッチテストし、Draize法に基づいて皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)
  • [ヒト試験] 100似の女性被検者に7%スクワランを含むクリームをパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1975)
  • 100名の女性被検者に20%スクワランを含むリップスティック製剤をパッチテストしたところ、この製品は皮膚一次刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
  • [ヒト試験] 10名の被検者に9%スクワランを含む制汗剤スプレーをKligmanの手順に基づいてパッチテストしたところ、この製品は目に見える皮膚一次刺激を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [ヒト試験] 25名の被検者に9%スクワランを含む制汗剤スプレーをKligmanの手順に基づいてパッチテストしたところ、この製品は接触皮膚感作の兆候を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に100%スクワランを点眼し、Draize法に基づいて眼刺激性を評価したところ、眼をすすいだかどうかにかかわらず、ウサギの眼に刺激や損傷はみられず、この試験物質はウサギの眼において非刺激剤であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1956)
  • [動物試験] 6匹のウサギの眼に100%スクワランを点眼し、点眼1時間および1,2,3,4,7日後に眼刺激性を評価したところ、眼球刺激指数は1時間後で4.33であり、その後は0.0であった。眼球刺激指数が10.0未満の場合は重大な損傷を引き起こさないと結論づけた(J.P. Guillot,1977)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「スクワラン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,543-544.
  2. 田村 健夫・廣田 博(2001)「炭化水素」香粧品科学 理論と実際 第4版,108-112.
  3. ab日光ケミカルズ株式会社(1982)「炭化水素」化粧品製剤実用便覧,117-123.
  4. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブックⅠ,25-31.
  5. 大木 道則, 他(1989)「スクアラン」化学大辞典,1188.
  6. 有機合成化学協会(1985)「スクアラン」有機化合物辞典,477.
  7. 日本医薬品添加剤協会(2021)「スクワラン」医薬品添加物事典2021,318-319.
  8. 日本医薬品添加剤協会(2021)「合成スクワラン」医薬品添加物事典2021,230.
  9. 広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
  10. abR.L. Elder(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Squalane and Squalene」Journal of the American College of Toxicology(1)(2),37-56. DOI:10.3109/10915818209013146.

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