ワセリンの基本情報・配合目的・安全性

化粧品表示名 ワセリン
医薬部外品表示名 ワセリン
INCI名 Petrolatum
配合目的 基剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

石油から得られる主にC24H50からC34H70の飽和炭化水素からなる炭化水素の混合物(石油系炭化水素)です[1][2a]

ワセリンは一般に、精製・脱色していないものを「黄色ワセリン」、精製・脱色したものを「白色ワセリン」といい、化粧品においては表示名称に直接表示されませんが、ほとんどの場合において「白色ワセリン」が用いられています[3a]

1.2. 物性・性状

ワセリンの物性・性状は(∗1)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

状態 融点(℃) 溶解性
ペースト状半固体 38-60 水に不溶、エタノールに難溶、エーテル、脂肪油に易溶

このように報告されています[2b][4]

1.3. 化粧品以外の主な用途

ワセリンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 接触皮膚炎の皮膚保護剤として用いられるほか[5]、基剤目的の医薬品添加剤として外用剤、眼科用剤に用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、ワセリンは化学的に不活性で酸化安定性が高く、粘性を有し油性感を付与することから、メイクアップ製品、クリーム系製品を中心に汎用されています[3b]

3. 安全性評価

ワセリンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

ワセリンは非刺激性および非感作性物質として知られており[7]、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ワセリン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1103.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(1982)「炭化水素」化粧品製剤実用便覧,117-123.
  3. ab広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
  4. 厚生省薬務局審査課(1982)「ワセリン」化粧品原料基準 第二版,490.
  5. 浦部 晶夫, 他(2021)「白色ワセリン」今日の治療薬2021:解説と便覧,1110.
  6. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ワセリン」医薬品添加物事典2021,742.
  7. H. Kang, et al(2004)「Allergic contact dermatitis to white petrolatum」Journal of Dermatology(31)(5),428-430. DOI:10.1111/j.1346-8138.2004.tb00698.x.

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