オクチルドデカノールの基本情報・配合目的・安全性

オクチルドデカノール

化粧品表示名 オクチルドデカノール
医薬部外品表示名 2-オクチルドデカノール
部外品表示簡略名 オクチルドデカノール
INCI名 Octyldodecanol
配合目的 基剤溶剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、炭素数20の側鎖構造をもつ一価アルコールかつ合成アルコール高級アルコールです[1][2]

オクチルドデカノール

1.2. 物性

オクチルドデカノールの物性は(∗1)

∗1 凝固点とは液体が固体になりはじめる(固まりはじめる)温度のことです。

凝固点(℃) 溶解性
<-30 水に不溶、有機溶媒、鉱物油、油脂に可溶

このように報告されています[3][4a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

オクチルドデカノールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 基剤、乳化、溶剤、溶解補助目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 油性基剤
  • 溶剤

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、日焼け止め製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ヘアカラー製品、ボディ&ハンドケア製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 油性基剤

油性基剤に関しては、オクチルドデカノールは化学構造的に炭素数20(C20)と比較的大きいですが、側鎖構造をもつことから炭化水素と比較して油性感が少なくベタつきのないさっぱりした感触を付与し、また経時安定性にも優れるため、油性基剤としてクリーム系製品、乳液、メイクアップ製品、ヘアケア製品、オイル製品などに汎用されています[4b][6]

2.2. 溶剤

溶剤に関しては、オクチルドデカノールは主に油性基剤、油溶性の化合物および植物エキスを溶かし込む溶剤として使用されています。

3. 混合原料としての配合目的

オクチルドデカノールは混合原料が開発されており、オクチルドデカノールと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 EMACOL SKN-131
構成成分 ポリソルベート60べヘニルアルコールステアリン酸グリセリルエチルヘキサン酸セチルオクチルドデカノールステアリン酸ポリグリセリル-2ステアリン酸PEG-15グリセリル
特徴 耐塩性に優れたクリーム基剤
原料名 Innollient LO
構成成分 オレイン酸オクチルドデシル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ポリヒドロキシステアリン酸、オクチルドデカノール
特徴 高い顔料分散性とバリア機能改善能を発揮する抱水性エモリエント剤
原料名 UNIMER U-1946
構成成分 (VP/ヘキサデセン)コポリマー、オクチルドデカノール
特徴 顔料分散性をもつ油性皮膜形成ポリマー
原料名 EASYNOV
構成成分 オクチルドデカノール、オクチルドデシルキシロシド、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG-30
特徴 ソフトでシルキーな使用感をもつW/O型乳化剤
原料名 AJK-OD2046
構成成分 オクチルドデカノール、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド
特徴 オクチルドデカノールを溶剤としたアミノ酸系混合オイルゲル化剤

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1985年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

オクチルドデカノールの配合製品数と配合量の調査結果(1985年および2002-2003年)

5. 安全性評価

オクチルドデカノールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7a]によると、

  • [ヒト試験] 20名の被検者に4%オクチルドデカノールを含む保湿クリームを24時間単回閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)0.0-4.0のスケールで皮膚刺激性を評価したところ、1名の被検者に最小限の皮膚刺激性が観察され、PIIは0.03であり、この試験物質は実質的に皮膚刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [ヒト試験] 16名の被検者に3%オクチルドデカノールを含むアイペンシルを対象に21日間皮膚累積刺激性試験を実施し、総合皮膚累積刺激スコアを0.0-630のスケールで評価したところ、皮膚累積刺激スコアは7.5であり、この試験物質は実質的に非刺激剤であった(Food and Drug Research Labs,1979)
  • [ヒト試験] 197名の被検者に10.2%オクチルドデカノールを含むリップスティックを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 210名の被検者に3%オクチルドデカノールを含む製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において2名の被検者に軽度の反応がみられたが、チャレンジ期間においてはいずれの被検者も皮膚反応は示さなかった(Leo Winter Associates,1979)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%オクチルドデカノールを適用し、適用後に眼刺激スコア0.0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、1日目の眼刺激スコアは4、4日目は0であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%オクチルドデカノールを適用し、適用後に眼刺激スコア0.0-110のスケールで眼刺激性を評価したところ、1および2日目の眼刺激スコアは1、3日目は0であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して実質的に眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

5.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7c]によると、

  • [ヒト試験] 23名の被検者に10.2%オクチルドデカノールを含むリップスティック製剤を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、試験期間を通じて皮膚反応はなく、この試験物質は光刺激剤および光感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「オクチルドデカノール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,250.
  2. 田村 健夫・廣田 博(2001)「高級アルコール」香粧品科学 理論と実際 第4版,117-120.
  3. 有機合成化学協会(1985)「2-オクチル-1-ドデカノール」有機化合物辞典,184.
  4. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,44-55.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「オクチルドデカノール」医薬品添加物事典2021,101-103.
  6. 広田 博(1997)「合成アルコール」化粧品用油脂の科学,87-89.
  7. abcR.L. Elder(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Stearyl Alcohol,Oleyl Alcohol,and Octyl Dodecanol」Journal of the American College of Toxicology(4)(5),1-29. DOI:10.3109/10915818509078685.

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