ヘーゼルナッツ油の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | ヘーゼルナッツ油 |
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医薬部外品表示名 | ヘーゼルナッツ油 |
INCI名 | Gevuina Avellana Seed Oil |
配合目的 | 基剤、加脂肪 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
ヤマモガシ科植物ヘーゼルナッツ(学名:Gevuina avellana, syn. Guevina avellana 英名:Chilean hazelnut)(∗1)の種子から得られる脂肪油(植物油)です(∗2)[1]。
∗1 ヘーゼルナッツには主に「アメリカンヘーゼルナッツ(学名:Corylus Americana 和名:西洋ハシバミ)」と「チリヘーゼルナッツ(学名:Gevuina avellana)」がありますが、ここに記載されているヘーゼルナッツはチリヘーゼルナッツを指します。
∗2 「syn」は同義語を意味する「synonym(シノニム)」の略称です。
1.2. 物性・性状
ヘーゼルナッツ油の物性・性状は(∗3)、
∗3 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。またヨウ素価とは油脂を構成する脂肪酸の不飽和度を示すものであり、一般にヨウ素価が高いほど不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ため、酸化を受けやすくなります。
状態 | 融点(℃) | ヨウ素価 |
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油状液体 | – | 80-90(不乾性油) |
このように報告されています[2a]。
1.3. 脂肪酸組成
ヘーゼルナッツ油の脂肪酸組成は、一例として、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
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パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 2.3 |
ステアリン酸 | C18:0 | 1.3 | |
パルミトレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C16:1 | 24.0 |
オレイン酸 | C18:1 | 41.9 | |
リノール酸 | C18:2 | 8.9 | |
アラキジン酸 | 飽和脂肪酸 | C20:0 | 11.1 |
エイコセン酸 | 不飽和脂肪酸 | C20:1 | |
ベヘン酸 | 飽和脂肪酸 | C22:0 | 9.7 |
エルカ酸 | 不飽和脂肪酸 | C22:1 |
このような種類と比率で構成されていることが報告されており[2b]、オレイン酸を主成分としパルミトレイン酸を20%以上含むことを特徴としています。
1.4. 分布と歴史
チリヘーゼルナッツは、チリ南部からアルゼンチンを原産とし、その葉は装飾品として、ナッツはその魅力的な味と香りからローストや様々な菓子類(チョコレート、ケーキなど)に用いられるほか、ナッツはさらに食用油や化粧品用油として用いられています[3]。
2. 化粧品としての配合目的
- 油性基剤
- 加脂肪
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、クレンジング製品、ボディソープ製品、洗顔石鹸、ネイル製品など様々な製品に使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 油性基剤
油性基剤に関しては、ヘーゼルナッツ油はヒトの皮脂にも10%以上含まれているパルミトレイン酸の含有量が多いことから、優れた皮膚親和性と展延性(∗4)を有しており、ベタつきがなく軽い感触を付与する使用感の良さから、油性基剤としてメイクアップ製品、クリーム系化粧品、乳液、ヘアオイルなどを中心に汎用されています[2c][4a]。
∗4 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。
2.2. 加脂肪
加脂肪に関しては、ヘーゼルナッツ油はシャンプーや石鹸に加えることで泡をきめ細かくし、かつ過渡の脱脂を抑制することから、皮膚・毛髪の保護を兼ねた泡質改善目的で石鹸や洗浄製品に使用されています[4b][5][6]。
3. 混合原料としての配合目的
ヘーゼルナッツ油は混合原料が開発されており、ヘーゼルナッツ油と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。
原料名 | EMACOL CD-9055 |
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構成成分 | マカデミア種子油、メドウフォーム油、コメ胚芽油、ヘーゼルナッツ油、シア脂油、アボカド油、ホホバ種子油、ツバキ種子油、ブドウ種子油、アーモンド油、月見草油、カニナバラ果実油 |
特徴 | 植物油12種の可溶化液・エモリエント剤 |
原料名 | EMACOL CD-9422 |
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構成成分 | スクワラン、マカデミア種子油、メドウフォーム油、コメ胚芽油、ヘーゼルナッツ油、シア脂油、アボカド油、ホホバ種子油、ツバキ種子油、ブドウ種子油、アーモンド油、月見草油、カニナバラ果実油 |
特徴 | オリーブスクワランと植物油12種の植物由来エマルション・エモリエント剤 |
4. 配合製品数および配合量範囲
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗5)。
∗5 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
5. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
5.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。
6. 参考文献
- ⌃日本化粧品工業連合会(2005)「ヘーゼルナッツ油」日本化粧品成分表示名称事典 第2版,525.
- ⌃abc広田 博(1997)「不乾性油」化粧品用油脂の科学,18-26.
- ⌃Crop & Food Research(2001)「Gevuina nut – a cool climate macadamia」, 2022年1月5日アクセス.
- ⌃ab鈴木 一成(2012)「ヘーゼルナッツ油」化粧品成分用語事典2012,15.
- ⌃日光ケミカルズ株式会社(1982)「過脂肪剤」化粧品製剤実用便覧,17.
- ⌃田村 隆光(2009)「界面活性剤水溶液の泡膜特性」オレオサイエンス(9)(5),197-210. DOI:10.5650/oleoscience.9.197.