1,2-ヘキサンジオールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿 防腐
1,2-ヘキサンジオール
[化粧品成分表示名称]
・1,2-ヘキサンジオール

[医薬部外品表示名称]
・1,2-ヘキサンジオール

[慣用名]
・ヘキシレングリコール

さっぱりした感触と優れた抗菌性を有する多価アルコール(二価アルコール:グリコール)(∗1)で、高い抗菌性を有する多価アルコールの一種であるアルカンジオールでもあります。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

多価アルコールにおける抗菌性は、以下の表のように、

多価アルコール類 抗菌性(グラム陰性菌抑制力)
グリセリン 抑制力なし
エリスリトール 抑制力なし
ソルビトール 抑制力なし
ポリエチレングリコール400 抑制力なし
プロピレングリコール 10%濃度以上で効果あり
ブチレングリコール 8%濃度以上で効果あり
ペンチレングリコール 4%濃度以上で効果あり
ヘキシレングリコール 2%濃度以上で効果あり
カプリリルグリコール 1%濃度以上で効果あり

グリセリンやソルビトールなどでは効果がみられませんが、プロピレングリコールのようなグリコール類にグラム陰性菌の抗菌作用が認められています(文献3:2006)

これらグリコール類の抗菌性は、グリコール類が自分自身を溶解させることで、微生物から水分を奪い取ってしまう作用から起こっており、微生物は増殖が不可能になるうえに死滅してしまうと考えられています(文献3:2006)(∗2)

∗2 微生物が増殖するためには、必要最小限度の水分が必要であり、グリコール類を加えることで、微生物の水分活性が減少し、微生物の生育を阻害します。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献2:2005;文献3:2006;文献5:2012)

抗菌・防腐による製品安定化剤

抗菌・防腐による製品安定化剤に関しては、2005年にマンダムによって公開された大腸菌(Escherichia coli)のMIC(最小発育阻止濃度)の検証によると、

大腸菌(Escherichia coli)に対するアルカンジオール類と他の多価アルコール類の抗菌性を比較するために、MIC(最小発育阻止濃度)(∗3)を測定したところ、

∗3 MICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さいほど抗菌力が高いことを意味します。

菌種 MIC:最小発育阻止濃度(%)
多価アルコール 防腐剤
アルカンジオール グリセリン BG メチルパラベン フェノキシエタノール
ペンチレングリコール ヘキサンジオール カプリリルグリコール
大腸菌 2.7 1.4 0.2 32.7 11.7 0.2 0.5

アルカンジオール類は、他の多価アルコール類と比較して顕著に大腸菌の増殖を抑制することが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2012)、1,2-ヘキサンジオールに大腸菌(Escherichia coli)に対する優れた抗菌性が認められています。

また2006年に高級アルコール工業によって公開された1,2-ヘキサンジオールのMIC(最小発育阻止濃度)の検証によると、

以下4種類の菌種に対する1,2-ヘキサンジオールの抗菌性を検討するために、MIC(最小発育阻止濃度)(∗3)を測定したところ、以下の表のように、

∗3 MICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さいほど抗菌力が高いことを意味します。

菌種 MIC:最小発育阻止濃度(%)
大腸菌 1.6
緑膿菌 1.6
黄色ブドウ球菌 1.6
クロカビ 1.6

1,2-ヘキサンジオールは、4種のすべての菌種に優れた抗菌性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2006)、1,2-ヘキサンジオールに4種の菌種すべてに優れた抗菌性が認められています。

さらに2012年に御木本製薬によって公開された抗菌性物質の最小発育阻止濃度の検証によると、

抗菌性原料の強さを表す最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を基準として、化粧品に汎用される8種類の抗菌性原料(メチルパラベンフェノキシエタノールBGペンチレングリコールエタノールDPG、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール)の抗菌性を、日本薬局方保存効力試験で推奨された下記5菌種を使用して検討した。

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:Sa)
  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:Pa)
  • 大腸菌(Escherichia coli:Ec)
  • カンジダ(candida albicans:Ca)
  • コウジカビ(aspergillus brasiliensis:Ab)

滅菌容器に20gの試料を入れ、1mLあたり10⁷-10⁸個に調整した微生物懸濁液0.2mLを接種・混合し、1週間おきに一部を取り出し、生菌数をMICを基準として測定したところ、以下の表(∗4)のように、

∗4 表のSa,Pa,Ec,CaおよびAbは菌の英語表記の略語です。またMICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さいほど抗菌力が高いことを意味します。

抗菌剤 MIC:最小発育阻止濃度(%)
Sa Pa Ec Ca Ab
メチルパラベン 0.2 0.225 0.125 0.1 0.1
フェノキシエタノール 0.75 0.75 0.5 0.5 0.4
BG 16 8 10 14 18
ペンチレングリコール 4 2 2 3 3
エタノール 9 5 5 7 5
DPG 22.5 8 12 16 22.5
1,2-ヘキサンジオール 2.5 1 1 1.5 1.5
カプリリルグリコール 0.35 >0.5 0.125 0.175 0.175

1,2-ヘキサンジオールは他の多価アルコール類と比較して、5種類の菌種すべてに優れた抗菌性を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2012)、1,2-ヘキサンジオールに優れた抗菌性が認められています。

またパラベン類で防腐性を保証された実績のある処方において、パラベン類添加量を減らし、同等の保存安定性・抗菌性を得られるならパラベン類を削除する傾向にありますが、この場合グリコール類は最適であり、とくにペンチレングリコールは、パラベン類の抗菌性を保ち、抗菌性を増強させることから、パラベン類を極限まで減らした上で置き換え可能であることが知られています(文献4:2006)

さらに1,2-ヘキサンジオールとペンチレングリコールまたはカプリリルグリコールの併用により相乗的な抗菌性を示すことも報告されています(文献5:2006)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010-2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

1,2-ヘキサンジオールの配合状況調査結果(2010-2011年)

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1,2-ヘキサンジオールの安全性(刺激性・アレルギー)について

1,2-ヘキサンジオールの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:重度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 205名の参加者(男性42名、女性163名)に15%1,2-ヘキサンジオールを含むカルボマーゲルを誘導期間およびチャレンジ期間に48時間閉塞パッチ適用し、チャレンジパッチの48および72時間後に反応をスコア付けしたところ、205名のうち1名に刺激反応がみられたがその後4日間の反復解放パッチテストでは反応は観察されなかった
  • [ヒト試験] 224人の被検者(男性48人、女性176人、19~70歳)に0.5%1,2-ヘキサンジオールを含むカルボマーゲルで皮膚刺激テストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応を有していなかった
  • [ヒト試験] 56人の参加者に10%1,2-ヘキサンジオール水溶液を適用したところ、いずれの参加者も皮膚刺激を誘発しなかった
  • [ヒト試験] 101人の参加者の背中に0.5%1,2-ヘキサンジオールを含むゲル製剤を24時間半閉塞パッチ下で適用したところ、この製剤は皮膚刺激を引き起こさなかった
  • [ヒト試験] 28人の参加者の背中に0.15%1,2-ヘキサンジオールを含むボディウォッシュを週3回30日間にわたって適用したところ、参加者のいずれも紅斑や浮腫または適用部位に乾燥はなく、この製品は皮膚刺激を誘発する可能性を示さなかったと結論づけた

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2012)によると、

  • 50%1,2-ヘキサンジオールと50%カプリリルグリコールの混合物の1%水溶液は、重度の眼刺激剤として分類された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、重度の眼刺激性ありと報告されているため、重度の眼刺激が起こる可能性が考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 56人の参加者に10%1,2-ヘキサンジオール水溶液を適用したところ、いずれの参加者も皮膚感作を誘発しなかった
  • [ヒト試験] 28人の参加者の背中に0.15%1,2-ヘキサンジオールを含むボディウォッシュを週3回30日間にわたって適用したところ、参加者のいずれも紅斑や浮腫または適用部位に乾燥はなく、この製品は皮膚感作を誘発する可能性を示さなかったと結論づけた
  • [動物試験] マウスを用いたOECD429ガイドラインに従った皮膚感作性試験において、10,50,100%1,2-ヘキサンジオール溶液を評価したところ、皮膚感作性は陰性だった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

1,2-ヘキサンジオールはベース成分、保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2012)「Safety Assessment of 1,2-Glycols as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(31)(5),147S-168S.
  2. “株式会社マンダム”(2005)「マンダムによる独自技術 保湿成分アルカンジオールの抗菌性を応用した防腐剤フリー(無添加)処方の化粧品を実現」, <https://www.mandom.co.jp/release/2005/src/2005091401.pdf> 2018年1月15日アクセス.
  3. 苔口 由貴, 他(2006)「ペンチレングリコールの抗菌特性」Fragrance Journal(34)(4),68-73.
  4. Gerhard Schmaus, et al(2006)「化粧品処方中の防腐剤量を減少する」Fragrance Journal(34)(4),47-52.
  5. 谷口 康将, 他(2012)「最小発育阻止濃度(MIC)を基準とした予測式からの化粧品の保存効力の予測」日本化粧品技術者会誌(46)(4),295-300.

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