馬油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
馬油
[化粧品成分表示名称]
・馬油

[医薬部外品表示名称]
・馬油

ウマ科動物ウマ(学名:Equus caballus 英名:Horse)のたて髪および皮下脂肪から得られる動物油脂です。

ウマは北アメリカ大陸原産とされていますが、北米の野生種は数千年前に絶滅しています。

社会性の強い動物で古くから中央アジア、中東、北アフリカなどで家畜として飼われ、主に乗用や運搬、農耕などの使役用に用いられるほか、食用にも利用され、日本では馬肉を「桜肉」と称しています。

馬油は、主に食用の肉を解体する際に腹や首の部位から採取され、中国最古の医学書である「黄帝内経」や16世紀に中国で著された薬学書である「本草綱目」には皮膚病の治療や筋肉の痙攣の緩和などの効能が記載されていることもあり、古くから皮膚治療の民間薬に用いられてきました(文献4:1931)

馬油については、読み方が度々議論に上がりますが、もともと中国で利用されており、中国語読みでは「マーユ」と発音されています。

一方で、1971年に現在のソンバーユを開発した薬師堂の創設者によって日本で最初に食用油として商品化された馬油の商品名が「馬油(ばあゆ)」であり、その後1988年に世界で初めて化粧品原料として承認・登録された際に、規制の関係で食用油として登録商標を取得していた「馬油(ばあゆ)」が化粧品には使えなかったため、化粧品には「尊馬油(そんばあゆ)」と名付けられて広まったことから(文献5:-;文献6:-)、化粧品においては「馬油(ばあゆ)」または「バーユ」と読むほうが根強いと推測されます(∗1)

∗1 化粧品成分用語事典2012では「馬油(ばあゆ)」と記載されています。

馬油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 脂肪酸比率(%)
全体 たて髪 体脂肪
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 7.0 12.3 – 14.9 6.1 – 8.5
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 35.5 27.5 – 30.2 25.3 – 33.8
エイコセン酸 不飽和脂肪酸 C20:1 0.8
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 10.8 13.7 – 14.5 12.6 – 17.3
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 9.5 1.2 – 3.1 1.6 – 3.4
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 0.2 0.1 – 0.2 0.2
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 3.2 5.6 – 6.9 4.7 – 7.4
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 24.9 30.7 – 32.8 29.8 – 37.8
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 5.9 1.4 – 1.9 4.0 – 4.3

このような種類と比率で構成されています(文献1:1990;文献3:1997)

主成分はオレイン酸とパルミチン酸であり、またパルミトレイン酸の含有量がやや多いのが特徴であり、二重結合が2つの不飽和脂肪酸であるリノール酸および二重結合が3つの不飽和脂肪酸であるリノレン酸が合わせて15-20%ほど含まれているため、酸化安定性はやや低い(酸化しやすい)と考えられます。

またヨウ素価および融点(∗2)は、

∗2 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
71-86 不乾性油 29-50

一例としてこのように記載されていますが(文献2:1990)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は29-50℃であり、日本においては冬など29℃以下の気温では半固体ですが、夏など29℃を超えてくると液状化し始めます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ヘアケア製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、リップ製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品など幅広く使用されています(文献3:1997)

角質水分量増加および皮膚油分量増加によるエモリエント作用

角質水分量増加および皮膚油分量増加によるエモリエント作用に関しては、オレイン酸約35%、パルミチン酸約25%を主成分とし、リノール酸やリノレン酸も含まれていることから、ヒト皮下脂肪の脂肪酸組成と類似した組成であり、皮膚浸透性がよく、乾燥した皮膚を柔軟にする優れた効果があり、油のベタつきがあまりなく、サッパリとした軽い質感のエモリエント剤としてスキンケアオイルとして使用されています(文献3:2016)

2004年に皮膚科呉クリニック、東京家政大学家政学研究科 および東京家政大学臨床栄養学科によって報告された馬油の保湿効果検証によると、

健常な7人の女性被検者に馬油を塗布した結果、角質層の水分量と油分量の増加が認められた。

また塗布2週間後に皮膚表面に残存した油量の脂肪酸組成を調べたところ、リノール酸の含有量は明らかに減少傾向を示した。

馬油の局部塗布による皮膚の水分量と油分量の増加は、主にリノール酸が皮膚に吸収され、皮膚バリア機能を維持するための保湿因子構造に十分な役割を果たさせたことによると考えた。

これらの結果から、馬油を外用剤とした経皮補給は、皮膚の健康維持と保湿に適していると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:2004)、馬油に角質水分量増加および皮膚油分量増加によるエモリエント作用が認められています。

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馬油の安全性(刺激性・アレルギー)について

馬油の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

薬師堂によると、化粧品としての利用はほぼ安全であるといえますが、ごくまれに痒みがでたり、使用後に赤くほてったりすることがあり、このほてりは馬油の血行促進作用によるものであると報告されています(文献8:2001)

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

薬師堂の安全性データ(文献7:-)によると、

  • [ヒト試験] 馬油のヒト皮膚感作性試験を実施したところ、最終被験者にアレルギー性の皮膚反応が認められなかった

と記載されています。

安全性データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

馬油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日本油化学協会編集(1990)「動物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,111-114.
  2. 日本油化学協会編集(1990)「動物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,101-104.
  3. 広田 博(1997)「動物性油脂」化粧品用油脂の科学,31-35.
  4. 李 時珍(1931)「馬」新註校定 国訳本草綱目<第12冊>,137-154.
  5. “馬油と梅雲丹の薬師堂”(-)「馬油の歴史」, <https://www.yakushido.com/history/index.html> 2019年2月11日アクセス.
  6. “馬油と梅雲丹の薬師堂”(-)「日本でも世界でもはじめて」, <https://www.yakushido.com/history/first.html> 2019年2月11日アクセス.
  7. “馬油と梅雲丹の薬師堂”(-)「ソンバーユのアレルギーテストについて」, <https://www.yakushido.com/quality/safety01.html> 2019年2月11日アクセス.
  8. 直江 総一郎 (2001)「馬油について」aromatopia(10)(4),.
  9. 呉 貴郷, 他 (2004)「馬油による皮膚の保湿効果の検討」西日本皮膚科(66)(6),621-624.

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