酢酸ブチルとは…成分効果と毒性を解説

溶剤
酢酸ブチル
[化粧品成分表示名称]
・酢酸ブチル

有機酸の一種である酢酸と炭素数4の一価アルコールであるブタノール(n-ブタノール:ブチルアルコール)を脱水縮合(∗1)した分子量116.2の揮発性エステルです(文献3:1994)

∗1 脱水縮合とは化学構造的に分子と分子から水(H₂O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応(縮合反応)のことです。

一般に多くの樹脂の良溶剤であるため、塗料分野においてニトロセルロースラッカーの溶剤として汎用されているほか、バナナ様・ラ・フランス様の甘い芳香を有していることから香水や合成香料の一成分としても使用されています(文献3:1994;文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でネイル製品などに汎用されています。

溶剤

溶剤に関しては、酢酸ブチルは100℃-145℃の中沸点溶剤であり、ネイルエナメルの主な被膜形成剤であるニトロセルロースを溶かし込み、皮膜の光沢向上および曇り抑制目的で(文献5:1990;文献6:2015)、他の溶剤と混合してネイルエナメル、ネイルカラー、ネイルポリッシュ、ネイルコートなどネイル製品に汎用されています。

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

酢酸ブチルの配合製品数と配合量の調査(2006年)

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酢酸エチルの安全性(刺激性・アレルギー)について

酢酸ブチルの現時点での安全性は、

  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:軽度-重度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に酢酸ブチル溶液(濃度不明)を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この製品は皮膚感作剤ではなかった(S. D. Gad et al,1986)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に25.5%酢酸ブチルを含むネイルエナメルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この製品は皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に25.5%酢酸ブチルを含むネイルエナメルを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚累積刺激剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)
  • [ヒト試験] 55人の被検者(約半分は過敏な皮膚を有する)に25.5%酢酸ブチルを含むネイルエナメルを少なくとも週3回3週間にわたって使用してもらい、爪および手を評価し、またネイルエナメルが触れる機会のある顔、首およびまぶたの変化も同時に評価したところ、この製品に対する有害な皮膚反応は報告されず、安全性の観点から許容されうると結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)
  • [ヒト試験] 11人の皮膚科医が参加した40か月におよぶNACDG(North American Contact Dermatitis Group:北米接触皮膚炎共同研究班)の個々の化粧品成分に対するパッチテストにおいて、149人の被検者にNACDGおよび国際接触皮膚炎研究グループの手順に従って酢酸ブチルをパッチテストしたところ、1人の被検者に皮膚反応がみられたことから、NACDGはパッチテストによって特定された皮膚炎を引き起こす成分として酢酸ブチルをリスト化した(North American Contact Dermatitis Group,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

NACDGの酢酸ブチルのパッチテストによる1例の皮膚反応については、試験データ元の論文(文献2:1982)を参照したところ、皮膚刺激か皮膚感作なのか詳細が掲載されていないこと、国内において酢酸ブチルの皮膚感作報告がみあたらないこと、報告が1例のみであることから、結論を考慮する対象としては除外しました。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1989)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に25%酢酸ブチルおよび10%酢酸エチルを含むマニキュア液0.1mLを点眼し、3匹は点眼30秒後に水で眼をすすぎ、残りの6匹は眼をすすがず、点眼後7日目まで眼刺激性を評価したところ、非洗眼群の6匹のうち3匹は最小限、2匹は中程度の角膜混濁、またすべてのウサギに角膜点描が観察され、これらの症状は7日目までに解消した。さらに中程度-重度の紅斑および浮腫が観察され、これら結膜の刺激の大部分は7日目には解消された。洗眼群では3匹のうち2匹に軽度-中程度の紅斑および浮腫が観察されたが、これらの影響は7日目までに解消された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度-重度の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は軽度-重度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

酢酸ブチルはベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1989)「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」Journal of the American College of Toxicology(8)(4),681-705.
  2. North American Contact Dermatitis Group(1982)「Prospective study of cosmetic reactions: 1977-1980」Journal of the American Academy of Dermatology(6)(5),909–917.
  3. 有機合成化学協会(1994)「酢酸n-ブチル」新版 溶剤ポケットブック,505-506.
  4. 飛塚 幸喜, 他(2011)「果実香気成分の高付加価値利用」日本食品工学会誌(12)(4),131-136.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「溶剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,439-441.
  6. 宇山 侊男, 他(2015)「酢酸エチル」化粧品成分ガイド 第6版,172.

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