温泉水とは…成分効果と毒性を解説

ベース 保湿 バリア改善
温泉水
[化粧品成分表示名称]
・温泉水

温泉から湧出した水です。

温泉とは、温泉法第二条によると、

地中から湧出する温水、鉱水および水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温泉源から採取されるときの温度が摂氏25℃以上または以下表に掲げる物質を有するもの

含有物質名 含有量(1kg中)
ガス性のものを除く溶存物質 総量1,000mg以上
遊離炭酸 250mg以上
リチウムイオン 1mg以上
ストロンチウムイオン 10mg以上
バリウムイオン 5mg以上
第一鉄または第二鉄イオン 10mg以上
マンガンイオン 10mg以上
水素イオン 1mg以上
臭素イオン 5mg以上
ヨウ素イオン 1mg以上
フッ素イオン 2mg以上
ヒドロヒ酸イオン 1.3mg以上
メタ亜ヒ酸イオン 1mg以上
総イオウ 1mg以上
メタホウ酸 5mg以上
メタケイ酸 50mg以上
重炭酸ナトリウム 340mg以上
ラドン 20(100億分の1キュリー単位)以上
ラジウム塩 1億分の1mg以上

参照元:温泉法第二条および温泉法第二条別表

このように定義されており、化粧品に用いられる温泉水とは温泉源から採取されたこれらのいずれかまたは複数の物質を含む水であると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、シート&マスク製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、ヘアケア製品など様々な製品に汎用されています。

角化促進によるバリア機能改善・保湿作用

角化促進によるバリア機能改善・保湿作用に関しては、まず前提知識として角質層の構造と機能および角化について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層は、角質と角質の隙間を満たす細胞間脂質によって、一定の水分を保持するのと同時に様々な刺激や物質の侵入を防ぎ、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能を維持しています。

角質細胞の中に存在するNMF(natural Moisturizing Factor:天然保湿因子)は水分を保つ働きがあることから、角質層内部の潤いを保つ役割を担っています(文献3:2002)

また、細胞間脂質は細胞同士を結びつける接着のような働きをしており、隣接する角質細胞同士の隙間を埋めることで、角質層から水分が必要以上に蒸散するのを防いでいます(文献3:2002)

次に、角化については、以下の肌図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

表皮の最下層である基底層に存在する基底細胞は、表皮のターンオーバー機能に乗り、有棘細胞 → 顆粒細胞へと形を変え、最後には角質細胞に変わります(文献4:2002)

この基底細胞が角質細胞に変わる過程を角化といい、角化が正常に行われることで、角質細胞が正常に維持されています。

このような背景から、正常な角化および角質層を保持することは、健常な皮膚の維持において非常に重要であると考えられます。

2003年にカネボウによって報告された皮膚に有用な温泉水成分の検証によると、

in vitroの適切な評価系として、表皮細胞における角化能に対する全国20箇所の温泉水(0.3%添加)の活性を、無添加を角化率100%として評価・検討した。

その結果、5箇所の温泉水に有意に角化を促進する活性を見出した(角化率はそれぞれおよそ300%,250%,200%,180%および170%)。

有意に角化を促進した温泉水の含有成分を検索した結果、角化を促進する成分としてメタケイ酸およびCaイオンを同定し、またこれらは共存することで相乗効果を示した。

とくに荒れ肌状態においては、これらの成分の皮膚浸透性も高まるため、結果的に効果を発揮すると考えられる。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2003)、メタケイ酸およびCaイオンを含む温泉水に角化促進によるバリア機能改善・保湿作用が認められています。

効果・作用についての補足

温泉水の中には、群馬県の草津温泉、北海道の豊富温泉、フランスのアベンヌ温泉などアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に有効とされ 、実際に温泉入浴により皮表黄色ブドウ球菌が激減し、アトピー性皮膚炎の症状改善例が多数報告されているものがあります(文献5:1997;文献6:2016;文献7:2019;文献8:2013)

そういった背景から、アベンヌ温泉水などはアトピー性皮膚炎の症状改善効果を有する温泉水として化粧品に用いられていますが、これは温泉水の代表的な機能ではなく、アベンヌ温泉水固有の効果であると考えられることから、補足として記載します。

温泉水はこういった固有の効果を有することも多いため、製品の販売媒体の温泉水に対する解説も合わせて参照してください。

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温泉水の安全性(刺激性・アレルギー)について

温泉水の現時点での安全性は、

  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

温泉は古来から皮膚炎、湿疹や皮膚アレルギーの治癒に用いられており(文献1:1971)、また20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

古来から入浴に利用される中で重大な眼刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

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温泉水はベース成分、保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 バリア改善成分

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文献一覧:

  1. 大島 良雄(1971)「温泉とアレルギー」日本温泉気候物理医学会雑誌(35)(3-4),3-10.
  2. 井上 紳太郎(2003)「皮膚に有用な温泉水成分を探る」日本温泉気候物理医学会雑誌(67)(1),12-13.
  3. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  4. 朝田 康夫(2002)「角質層の防壁機能とは」美容皮膚科学事典,23-25.
  5. K Kubota, et al(1997)「Treatment of refractory cases of atopic dermatitis with acidic hot-spring bathing」Acta Dermatol Venereologica(77)(6),452-454.
  6. 久保田 一雄(2016)「皮膚疾患に対する草津温泉療法」日本温泉気候物理医学会雑誌(79)(1),17.
  7. 村上 慎之介(2019)「豊富温泉入浴によるアトピー性皮膚炎抑制メカニズムの解明」日本健康開発雑誌(40),105-110.
  8. 鈴木 能里, 他(2013)「セレクチオーズ,アベンヌ温泉水による肌の保湿と製品開発」Fragrance Journal(41)(12),67-75.

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