水添ヤシ油とは…成分効果と毒性を解説



・水添ヤシ油
[医薬部外品表示名称]
・水素添加ヤシ油
ヤシ油に水素添加することで得られる飽和脂肪酸のトリグリセリドです。
水素添加とは、比較的融点(∗1)の低い不飽和脂肪酸を多く含むために常温で液体となっている油脂の二重結合(不飽和結合)部分に水素を添加し、酸化しにくく融点の高い一重結合(飽和結合)に変化させ、酸化安定性を高めて常温で固体状にする化学的処理です(∗2)。
∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。
∗2 代表的な水素添加油はマーガリンで、あれは元々バターが高価であることから、バターの代替として開発された加工食品であり、油脂に発酵乳・食塩・ビタミン類などを加えて乳化し、水素添加することで常温で固体にしています。
食品としては、乳脂肪に性質が近いため、ホイップクリーム、コーヒーフレッシュまたはラクトアイスの原料などにも使われています。
水添ヤシ油のヨウ素価および融点は、
ヨウ素価 | ヨウ素価による分類 | 融点 |
---|---|---|
3 | 不乾性油 | 36-37 |
一例としてこのように記載されていますが(文献1:1986)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は36-37℃で、常温では固体を保ちますが体温で溶解する特性を有しています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、アイメイクアップ化粧品、リップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに広く使用されます(文献1:1986)。
エモリエント作用
エモリエント作用に関しては、酸化安定性が高く、カカオ脂に類似したやや重めながらコシがありサッパリとした感触を付与するため、カカオ脂の増量剤や代替としてアイブロウ、アイペンシルおよびマスカラなどのアイメイクアップ化粧品や口紅やリップグロスなどのリップ化粧品をはじめスキンケア化粧品、ボディケア製品などに広く使用されています。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007-2008年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
水添ヤシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、
- [ヒト試験] 204人の被検者に10%水添ヤシ油を含む4種類のリップスティック製剤を対象に48時間単回パッチ試験を実施し、さらに14日後に48時間感作試験(チャレンジパッチ)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974;Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
と記載されています。
試験結果をみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、
- [動物試験] 6匹のウサギの片眼に10%水添ヤシ油を含むリップスティック製剤を滴下したところ、わずかな結膜炎がみられたが48時間までに反応は消失した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1975)
と記載されています。
試験結果をみるかぎり、非刺激性-最小限の眼刺激性と報告されているため、非刺激性-最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。
∗∗∗
水添ヤシ油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
∗∗∗
文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」International Journal of Toxicology(5)(3),103-121.
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