水添ポリイソブテンとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 感触改良 光沢 溶剤
水添ポリイソブテン
[化粧品成分表示名称]
・水添ポリイソブテン

[医薬部外品表示名称]
・流動イソパラフィン 、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン

イソブテンとn-ブテンを共重合させた後に水素添加して得られる揮発性のある炭化水素(∗1)です。

∗1 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物で、化学的に極めて不活性な物質です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、ヘアケア製品などに使用されています(文献1:2008;文献2:2016)

感触改良

感触改良に関しては、スクワランと類似した感触および物性を有しており、伸びがよく、ベタつきの少ない軽い質感のため、他のオイルと併用してクリームなどの感触改良に使用されます(文献4:-;文献5:2007)

ツヤ・光沢

ツヤ・光沢に関しては、毛髪をコーティングし、優れた櫛通りとツヤを付与するため、ヘアトリートメントに配合されます(文献5:2007)

溶剤

溶剤に関しては、主にシリコーンなどの油性成分を溶かし込み、また水添ポリイソブテン自体は酸化安定性が高く、軽い質感でベタつきも少なく、揮発性に優れているため、皮膚に適用すると良好に広がりつつ揮発していき、溶かし込んだ油性成分の特性が発揮されます(文献3:2015)

このような特性のため、油っぽい感触が好まれないアイライナー、マスカラ、口紅などのメイクアップ化粧品または日焼け止め製品などに汎用されています(文献3:2015)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2005年および2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

水添ポリイソブテンの配合製品数および配合量の調査結果(2005年および2013-2015年)

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水添ポリイソブテンの安全性(刺激性・アレルギー)について

水添ポリイソブテンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者(11-59歳)に100%水添ポリイソブテン、60%水添ポリイソブテンを含むワセリン、40%水添ポリイソブテンを含むワセリン、20%水添ポリイソブテンを含むワセリンの4つの試験物質をそれぞれ72時間閉塞パッチ適用したところ、いずれの被検者においても皮膚反応はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [ヒト試験] 51人の被検者(18-59歳)に100%水添ポリイソブテン、50%水添ポリイソブテンを含むオリーブ油、100%オリーブ油をそれぞれ24時間閉塞パッチ適用したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に水添ポリイソブテンと合成および天然スクアレンを並行して72時間一次皮膚刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激がなかった(Davis,1976)
  • [ヒト試験] 19人の被検者に66.11%水添ポリイソブテンを含むリップグロスを対象に24時間単一パッチテストを実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激性は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1999)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 59人の被検者(18-55歳、コンタクトレンズ着用32人)に4%水添ポリイソブテンを含む3色コンシーラーを29日間使用した場合の眼刺激性を評価した。1日1回眼の周りを覆うようにコンシーラーを塗布するよう指示し、8,15および22日目に眼刺激性を評価したところ、このコンシーラーに有害な皮膚反応はなく、すべての被検者の眼刺激スコアは0であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1996)
  • [ヒト試験] 敏感肌または敏感な目の診断歴のある5人の女性被検者の両眼外皮に10%水添ポリイソブテンを含む製品を午前と午後に1回ずつ5日間塗布したところ、被検者に眼刺激の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,2003)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 270人(擦過した皮膚を有する55人含む)の被検者に100%水添ポリイソブテン、20%水添ポリイソブテンを含むワセリン、100%スクアレン、20%スクアレンを含むワセリンの4種類の試験物質を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚感作反応を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [ヒト試験] 54人の被検者に4%および1.44%水添ポリイソブテンを含む製剤0.2-0.3mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚感作反応はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1996)
  • [ヒト試験] 110人の被検者(男性35人、女性75人、18-76歳)に51%水添ポリイソブテンを含むメイクアップリムーバーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者に激しい発赤がみられたが、チャレンジ期間においては激しい発赤を有する被検者を含むすべての被検者において皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかったため、この試験物質は皮膚刺激性および皮膚感作性はないと結論づけた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,2003)
  • [ヒト試験] 健常な28人の被検者(20-55歳)に17.1%水添ポリイソブテンを含むフェイスパウダーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間およびチャレンジ期間においていずれの被検者も皮膚反応はなく、この試験物質は接触皮膚感作剤ではなかった(Ivy Laboratories,2004)
  • [ヒト試験] 25人の被検者(18-58歳)に10.5%水添ポリイソブテンを含むアイシャドー0.05mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても接触皮膚感作は観察されなかったため、通常の使用条件下で反応を起こす可能性は低いと結論づけた(Ivy Laboratories,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • 健常な皮膚を有する30人の被検者に4%および1.44%水添ポリイソブテンを含む混合物を対象に光感作試験を含むHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施(各パッチ除去後にUVAライトを10分間照射)したところ、光感作反応の兆候はみられなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1996)
  • [ヒト試験] 健常な皮膚を有する26人の被検者(18~69歳)に4%および1.44%水添ポリイソブテンを含む混合物を対象に4日間の光毒性試験を実施した。試験は1日目に試験物質を塗布し、2日目にパッチ除去および皮膚刺激を評価し、UVライトを10cmの距離で15分間照射した。照射後に皮膚刺激性および光毒性を評価したところ、±を超える反応はなく、この試験物質は一次皮膚刺激性および光毒性の誘発はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの右耳内側に未希釈の水添ポリイソブテンを週5日間連続で3週間にわたって塗布したところ、2週間目までは過角化症(ハイパーケラトーシス:hyperkeratosis)またはアクネ菌増殖によるコメド形成の兆候はなかったが、3週目で2匹のウサギに過角化症の兆候がみられた。組織学的検査を実施したところ、濾胞性角化症の兆候はみられなかった(Product Safety Labs,1987)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、アクネ菌増殖性なしと報告されているため、アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

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水添ポリイソブテンはベース成分、その他にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 その他

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2008)「Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel on the Safety Assessment of Polyisobutene and Hydrogenated Polyisobutene as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(27)(4),83-106.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブック,28.
  3. 宇山 光男, 他(2015)「水添ポリイソブテン」化粧品成分ガイド 第6版,66.
  4. 日油株式会社(-)「PARLEAM」技術資料.
  5. BASFジャパン株式会社(2007)「Luvitol Lite」技術資料.

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