水添ヒマシ油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分 増粘
水添ヒマシ油
[化粧品成分表示名称]
・水添ヒマシ油

[医薬部外品表示名称]
・硬化油、硬化ヒマシ油

[慣用名]
・キャスターワックス

ヒマシ油に水素添加することで得られる飽和脂肪酸のトリグリセリドです。

水素添加とは、比較的融点(∗1)の低い不飽和脂肪酸を多く含むために常温で液体となっている油脂の二重結合(不飽和結合)部分に水素を添加し、酸化しにくく融点の高い一重結合(飽和結合)に変化させ、酸化安定性を高めて常温で固体状にする化学的処理です(∗2)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

∗2 代表的な水素添加油はマーガリンで、あれは元々バターが高価であることから、バターの代替として開発された加工食品であり、油脂に発酵乳・食塩・ビタミン類などを加えて乳化し、水素添加することで常温で固体にしています。

水添ヒマシ油のヨウ素価および融点は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
3-7 不乾性油 82-87

一例としてこのように記載されていますが(文献2:1997)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は82-87℃で、常温で固体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、アイメイクアップ化粧品、リップ化粧品などに広く使用されます(文献2:1997)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、肌密着性に優れているため、カルナウバロウキャンデリラロウの増量剤または代替としてアイブロウ、アイペンシルおよびマスカラなどのアイメイクアップ化粧品や口紅やリップグロスなどのリップ化粧品に広く使用されています。

ゲル化による増粘

ゲル化による増粘に関しては、まず前提知識としてヒドロキシステアリン酸について解説します。

水添ヒマシ油は、水素添加によってヒマシ油の飽和脂肪酸の割合を増加させて得られますが、水素添加によって増加して主成分となった飽和脂肪酸がヒドロキシステアリン酸です。

ヒドロキシステアリン酸は、もともと廃棄食用油に適量を添加し、加熱溶解後に冷却することでゲル化し廃棄を容易にするために用いられており(文献3:1985)、この特性を化粧品にも活かし、アイペンシルなど油系のゲル化剤として硬さの調整や感触調整に用いられています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

水添ヒマシ油の配合製品数と配合量の調査結果(2002-2004年)

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水添ヒマシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品による接触皮膚感作を有しているまたは有している疑いのある1-20人の被検者に対して30%水添ヒマシ油を含むワセリンを対象にパッチテスト(手順の詳細不明)を実施したところ、皮膚反応は示されなかった(de Groot,1994)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、化粧品に対する接触皮膚炎の疑いのある患者で皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データはみあたらないため、データ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 健常な被検者に4種のカスターワックス抽出物を対象にパッチテストおよびプリックテスト(カスターワックス抽出物を皮膚に1滴垂らし、検査用の針を皮膚の表面に押し当てて、15分後に反応を観察する試験)を実施したところ、皮膚反応がなかった(Lehrer et al,1980)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

– 職業的暴露による接触性皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] カスターアレルゲンに対して職業的に過敏である3人の被検者に4種のカスターワックス抽出物22,000μgまでの濃度を対象にパッチテストおよびプリックテスト(カスターワックス抽出物を皮膚に1滴垂らし、検査用の針を皮膚の表面に押し当てて、15分後に反応を観察する試験)を実施したところ、皮膚反応は示されなかった。パッチ試験では、カスターワックス抽出物を含む半閉塞パッチを24および48時間適用し、パッチ除去24および48時間後に皮膚反応をスコア化したところ、3人の被検者は遅延反応(陽性反応)を示した(Lehrer et al,1980)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、職業的にカスターアレルゲンに過敏である被検者のいずれもパッチ試験で陽性反応が報告されているため、ヒマシ油に対して接触皮膚アレルギーを有しており、職業的に毎日大量に暴露される可能性がある場合は、使用を控えるべきと考えられます。

∗∗∗

水添ヒマシ油はエモリエント成分、ベース成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2007)「Final Report on the Safety Assessment of Ricinus Communis (Castor) Seed Oil, Hydrogenated Castor Oil, Glyceryl Ricinoleate, Glyceryl Ricinoleate SE, Ricinoleic Acid, Potassium Ricinoleate, Sodium Ricinoleate, Zinc Ricinoleate, Cetyl Ricinoleate, Ethyl Ricinoleate, Glycol Ricinoleate, Isopropyl Ricinoleate, Methyl Ricinoleate, and Octyldodecyl Ricinoleate」International Journal of Toxicology(26)(3),31-77.
  2. 広田 博(1997)「不乾性油」化粧品用油脂の科学,18-26.
  3. 太田 静行(1985)「油のゲル化剤」調理科学(18)(2),94-98.

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