月見草油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
月見草油
[化粧品成分表示名称]
・月見草油

[医薬部外品表示名称]
・月見草油

[慣用名]
・イブニングプリムローズオイル

アカバナ科植物メマツヨイグサ(学名:Oenothera biennis 英名:evening primrose)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。

月見草(メマツヨイグサ)は、北アメリカを原産とし、ヨーロッパをはじめ世界各地に分布しており、日本にも明治時代中頃に渡来したといわれています。

月見草オイルは古くから食用および医療用に利用されており、北アメリカの先住民は月経病にこの植物の種子を噛んだり、種子を煎じて傷薬として使用したとも言い伝えられています。

月見草オイルには、他の油脂にはほとんど含まれていないγ-リノレン酸を豊富に含むという特徴があり、γ-リノレン酸は様々な働きをするプロスタグランジンの原料となり、血行を促進し、女性ホルモンの分泌を調整(とくに月経前症候群PMSの症状緩和)などが知られていますが、これらの臨床試験による有効性は現在は認められいないのが実情です(文献5:2011)

月見草油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 11.9
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 70.6
γ-リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 9.5
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 6.2
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 1.8

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

リノール酸が約70%、オレイン酸が約10%を占めており、リノール酸は二重結合を2つもっている酸化安定性の低い(自動酸化速度はオレイン酸の約10倍速い)不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性は低いと考えられます。

またアトピー性皮膚炎、湿疹、乾燥肌、経表皮の水分損失量の増加、表皮のバリア機能低下などの障害は、γ-リノレン酸の不足と関係していることが明らかにされており(文献6:1990;文献7:1991)、γ-リノレン酸の摂取または塗布は、湿疹、皮膚炎、ニキビの症状を減少させ、乾燥肌や荒れ肌を改善し、皮膚の滑らかさを増し、紫外線による発赤や紅斑を改善することが報告されています(文献9:1990;文献10:1996)

ちなみに、経口摂取によって皮膚細胞中γ-リノレン酸量を増加させて起こる効果と皮膚に塗布して起こる効果は同様で(文献8:2002)、このことは、どちらにせよ体内に入ったγ-リノレン酸は同じメカニズムで作用していると考えられています。

一方でγリノレン酸を補う必要があるのは、高齢者やアトピー性皮膚炎のように皮膚障害を有している場合であり、健康なヒトは通常、必須脂肪酸であるリノール酸から必要量のγ-リノレン酸を体内で合成することができるため、γ-リノレン酸を摂取してもとくに効果を示さないという報告もあります(文献8:2002)

ヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
195-199 乾性油

一例としてこのように記載されており(文献3:1990)、130以上の乾性油のため、乾燥性が高いと考えられます。

乾油性とは、皮膜状に空気中に放置すると、固化して弾性のある乾燥皮膜を生じるオイルのことで、たとえば油性塗料に用いることで塗料の乾きが早くなります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、リップケア製品、日焼け止め製品などの製品に使用されます(文献4:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、リノール酸を主成分とし、またγ-リノレン酸を約10%含んでいることから皮表柔軟化作用と経表皮水分蒸散抑制作用に優れたエモリエント剤であると考えられます。

またγ-リノレン酸は、アトピー性皮膚炎、湿疹、ニキビなどの皮膚障害を改善させることが報告されており、アレルギー性皮膚炎やバリア機能の改善に適したエモリエント剤であると考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

月見草油の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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月見草油の安全性(刺激性・アレルギー)について

月見草油の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 600人の被検者に1.99%月見草油を含むファンデーションを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作性はなかった(Orentreich Research Corporation,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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月見草油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,104-110.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,14-15.
  5. 鈴木 洋(2011)「月見草(つきみそう)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,112.
  6. Campbell K.L(1990)「Fatty Acid Supplementation and Skin Disease.」Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice(20)(6),1475-1486.
  7. Melnik B, et al(1991)「Atopic dermatitis and disturbances of essential fatty acid and prostaglandin E metabolism.」Journal of the American Academy of Dermatology(25)(5 Pt.1),859–860.
  8. 田中 稔久(2002)「γ-リノレン酸を化粧品に配合した時の効果」Fragrance Journal(30)(8),86-88.
  9. Ziboh VA, et al(1990)「Essential fatty acids and polyunsaturated fatty acids: significance in cutaneous biology.」Annual Review of Nutrition(10),433-450.
  10. Gunji H, et al(1996)「Clinical effectiveness of an ointment containing prostaglandin E1 for the treatment of burn wounds.」Journal of the International Society for Burn Injuries(22)(5),399-405.

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