合成ワックスとは…成分効果と毒性を解説

感触改良 スクラブ
合成ワックス
[化粧品成分表示名称]
・合成ワックス

[医薬部外品表示名称]
・合成炭化水素ワックス

[慣用名]
・フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、合成パラフィン

化学構造的に一酸化炭素と水素を反応させるFT法(Fischer-Tropsch process:フィッシャートロプシュ法)またはエチレンの低分子量を重合(∗1)させて得られる、分子量500-700で直鎖状の飽和炭化水素ワックス(∗2)です(文献1:1984;文献2:1977)

∗1 重合とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が分子結合し、鎖状や網状にまとまって機能する重合体(ポリマー:Polymer)となる反応です。

∗2 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物であり、化学的に極めて不活性な物質です。

FT法とは、1926年にドイツのF.FischerとH.Tropschが公表した炭化水素合成法であり、この合成法を用いて得られる合成ワックスは、この2人の名前を冠して「フィッシャートロプシュワックス」と呼ばれます(文献3:1983)

この製法による合成ワックスの産生はドイツ、アメリカなどを中心に行われましたが、FT法による合成ワックスの生産は原油精製と比較してはるかに割高であることから、現在生産しているのは南アフリカ共和国のサゾール公社(Sasol)のみであり(∗3)、この事実からフィッシャートロプシュワックスは「サゾールワックス」とも呼ばれます(文献3:1983)

∗3 南アフリカ共和国は、原油の入手が困難であることと良質の石炭が豊富に埋蔵されていることから1947年よりFT法による合成ワックス産生を国家事業としています。

また、エチレン重合により得られる重合体は一般的に合成ワックスの一種であるポリエチレンですが、化粧品成分表示において分子量700以下低分子量のものは「合成ワックス」と記載され、分子量1,000以上の高分子のものは「ポリエチレン」と記載されます。

このような背景から、化粧品成分表示において「合成ワックス」と記載された成分は、フィッシャートロプシュワックス(サゾールワックス)と低分子量のポリエチレンが存在します。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、洗顔料などに汎用されています。

感触改良・形状保持

感触改良・形状保持に関しては、合成ワックスは化学的に安定性が高く、高硬度および高融点であり、またツヤ感を有していることから(文献2:1977)、スティック状基剤およびツヤ感の付与目的で口紅、リップカラー、アイペンシル、アイシャドーなどに汎用されています。

また、乳化物へのツヤ感付与目的でマスカラ、チーク、ファンデーションなどに汎用されています。

スクラブ

スクラブに関しては、以前はマイクロプラスチックビーズとして合成ワックスの一種であるポリエチレンがスクラブ剤として汎用されていましたが、環境保護の観点から2010年代より世界的に洗顔料やボディソープなどの洗浄製品への使用を規制する動きの中で、国内においても2016年以降ポリエチレンの使用が減少し(文献4:2017)、その代替品の一つとして融点が高く熱安定性に優れた合成ワックスが、物理的に古い角質を除去するスクラブ剤として用いられることがあります。

合成ワックスの中でもポリエチレンは、生分解性(∗4)がないことから生物被害および環境汚染が問題提起されていますが、FT法で得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス)はパラフィン分を含み、パラフィンワックスと化学構造上類似していることから(文献3:1983)、「パラフィン」と代替表記が可能であり(文献6:-)、またパラフィンは生分解性を有していることから自主規制の対象とはなっておらず(文献4:2017)、ポリエチレンの代替品として使用されていると考えられます。

∗4 生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことです。プラスチックは紫外線照射によって経時的に劣化・変性し、細かく壊れていき微粒子状まで小さくなりますが、このプラスチックの細片化は化学的に分解したのではなく、形が崩壊して細かくなっただけで完全に分解したわけではなく、マイクロビーズは環境中(海洋)において化学的に分解されません(文献5:2016)。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

合成ワックスの配合品数と配合量の調査結果(2002-2003年)

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合成ワックスの安全性(刺激性・アレルギー)について

合成ワックスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 209人のボランティアに6%合成ワックスを含むリップコンディショナーを閉塞パッチテストしたところ、観測できる皮膚反応はなく、この製品は刺激剤および感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 25人のボランティアに6%合成ワックスを含むリップ製剤を対象に4週間の使用試験を実施したところ、皮膚反応を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの眼に6%合成ワックスを含むリップ製剤0.1gを注入し、注入から3日間観察したところ、眼刺激性は示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

合成ワックスはベース成分、スクラブ剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 スクラブ剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Fossil and Synthetic Waxes」Journal of the American College of Toxicology(3)(3),43-99.
  2. 友重 徹, 他(1977)「合成ワックス」高分子(26)(9),637-642.
  3. 小池 清(1983)「フィッシャー・トロプシュワックス」ワックスの性質と応用,134-141.
  4. 株式会社三菱ケミカルリサーチ(2017)平成28年度国内外におけるマイクロビーズの流通実態等に係る調査業務報告書.
  5. 兼廣 春之(2016)「洗顔料や歯磨きに含まれるマイクロプラスチック問題」海ごみシンポジウム.
  6. “Cosmetic Info.jp”(-)「シンスクラブ20PC」, <https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=12496> 2020年2月6日アクセス.

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