乳酸Naとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿成分
乳酸Na(乳酸ナトリウム)
[化粧品成分表示名称]
・乳酸Na

[医薬部外品表示名称]
・乳酸ナトリウム液

天然保湿因子(NMF)中に存在する重要な保湿成分(∗1)で、乳酸と水酸化ナトリウム溶液を反応させて得られる無色透明な粘性の保湿剤です。

∗1 天然保湿因子の11%を占めます。

グリセリンと同等の高い吸湿力を持ち、性質も似ていることからグリセリンの代用としても広く用いられています。

乳酸ナトリウムは、もともと皮膚の角質細胞に含まれている天然保湿因子の成分のひとつなので、他の保湿剤よりも皮膚になじみやすく、皮膚の水分保持を促す働きが優れています。

天然保湿因子(NMF)

NMF組成の平均的な内訳グラフ

また、吸湿力が高いのは前述のとおりですが、湿度によって吸湿力が変わることがありません。

化粧品に配合されるベース成分としての保湿剤は、皮膚の表面から水分が蒸発して失われるのを防止することを目的としており、これは保湿剤の吸湿性を利用したものです。

吸湿された水分は皮膚表面に与えられ、不足した皮膚のうるおいがよみがえり、その結果、皮膚がしなやかになります。

良質な保湿剤の条件は、皮膚の取り巻く環境の湿度の変化に対して保湿力の変化が少ないものであることですが、その点で乳酸ナトリウムは優れた保湿剤のひとつです。

そういった理由から、乳酸ナトリウムはNMF成分として保湿効果を高める化粧品を中心に幅広く使用されています。

スポンサーリンク

乳酸Naの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

乳酸Naの現時点での安全性は、もともと生体内に存在する成分で、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、重大なアレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report On the Safety Assessment of Glycolic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, and Sodium Glycolates, Methyl, Ethyl, Propyl, and Butyl Glycolates, and Lactic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, Sodium, and Tea-Lactates, Methyl, Ethyl, Isopropyl, and Butyl Lactates, and Lauryl, Myristyl, and Cetyl Lactates 」(文献1:1998)によると、

  • [動物試験]ウサギを用いて60%乳酸Na水溶液0.2%を含むフェイスクリーム(pH不明)を適用したところ、一次刺激スコアは2時間および24時間で0.11と0.06で、無視できるほどの刺激であった(Avon Products, Inc.,1995a)
  • [動物試験] ウサギを用いて60%乳酸Na水溶液0.2%を含むヘアコンディショナー(pH3.4)を適用したところ、一次刺激スコアは2時間および24時間で0.67と0.78で、最小の刺激であった(Avon Products, Inc.,1995b)
  • [動物試験] ウサギを用いて60%乳酸Na水溶液0.4%を含むナイトクリーム(pH5.25)を適用したところ、一次刺激スコアは2時間および24時間で0.22と0.11で、無視できるほどの刺激であった(Avon Products, Inc.,1995c)
  • [動物試験] ウサギを用いて60%乳酸Na水溶液を適用したところ、無視できるほどの刺激であった(Avon Products, Inc.,1995d)
  • [動物試験] ウサギを用いて50%および70%乳酸水溶液を閉塞パッチ下で適用したところ、一次刺激スコアはそれぞれ0.00と0.17で、無視できるほどの刺激であった(Guillot et al.,1982)

と記載されています。

生体内にも存在する成分で、試験結果では濃度によらず共通して無視できるほどの刺激性と評価されているため、、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report On the Safety Assessment of Glycolic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, and Sodium Glycolates, Methyl, Ethyl, Propyl, and Butyl Glycolates, and Lactic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, Sodium, and Tea-Lactates, Methyl, Ethyl, Isopropyl, and Butyl Lactates, and Lauryl, Myristyl, and Cetyl Lactates 」(文献1:1998)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いて50%および70%濃度の乳酸Naを適用し、1および24時間後、および2,3,4および7日後に評価したところ、眼刺激性スコア(最大110)は50%で11.67、70%で13.00であり、観察できる刺激はなかった(Guillot et al.,1982)
  • [動物試験] ウサギを用いて0.2%乳酸Naを含むナイトクリーム(pH不明)を適用したところ、2日間で陽性反応および角膜混濁はみられず、最小の眼刺激であった(Avon Products, Inc.,1995a)
  • [動物試験] ウサギを用いて0.2%乳酸Naを含むヘアコンディショナー(pH3.4)を適用し、7日間観察したところ、1日目で3匹に陽性反応がみられ、2~4日目で1匹、7日目にはすべてのウサギで反応はなく、軽度の眼刺激であった(Avon Products, Inc.,1995b)
  • [動物試験] ウサギを用いて0.2%乳酸Naを含むヘアコンディショナー(pH3.455)を適用し、3日間観察したところ、1~2日目で1匹に反応がみられたが3日目には反応は消失しており、最小の眼刺激であった(Avon Products, Inc.,1995c)
  • [動物試験] ウサギを用いて0.2%乳酸Naを含むヘアコンディショナー(pH4.9)を適用したところ、24時間で反応はみられず、非刺激性であった(Avon Products, Inc.,1995d)
  • [動物試験] ウサギを用いて0.2%乳酸Naを含むヘアコンディショナー(pH5.0)を適用したところ、24時間で反応はみられず、非刺激性であった(Avon Products, Inc.,1995e)

と記載されています。

試験結果では同じ濃度でもpHが酸性に傾けば傾くほど刺激性が増していきましたが、乳酸Naはほとんどピーリング的な配合は行われず、保湿目的で中性に近いpHで配合されるため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report On the Safety Assessment of Glycolic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, and Sodium Glycolates, Methyl, Ethyl, Propyl, and Butyl Glycolates, and Lactic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, Sodium, and Tea-Lactates, Methyl, Ethyl, Isopropyl, and Butyl Lactates, and Lauryl, Myristyl, and Cetyl Lactates 」(文献1:1998)によると、

  • [ヒト試験] 101人の被検者の背中に誘導期間として1%乳酸Naを含む完全に中和したクリーム20μLを48時間週3回3週間にわたって反復パッチ試験(RIPT)として閉塞パッチ適用し、17~23日後に48時間チャレンジパッチを未処置部位に適用し、その部位を適用48および96時間後に評価したところ、有害または予期しない臨床反応は観察されなかった。クリームに対する反応は誘導期間に0~+0.5の範囲であり、チャレンジ期間には観察されなかった(Stephens and Associates, 1992)

と記載されています。

試験結果はひとつですが、陰性と評価されており、もともと生体内にも存在する成分であること、また国内で重大なアレルギーの報告もないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
乳酸Na 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、乳酸Naは毒性なし(∗3)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

乳酸Naはベース成分、保湿成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1998)「Final Report On the Safety Assessment of Glycolic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, and Sodium Glycolates, Methyl, Ethyl, Propyl, and Butyl Glycolates, and Lactic Acid, Ammonium, Calcium, Potassium, Sodium, and Tea-Lactates, Methyl, Ethyl, Isopropyl, and Butyl Lactates, and Lauryl, Myristyl, and Cetyl Lactates 」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/109158189801700101> 2017年10月28日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ