ワセリンとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分
ワセリン
[化粧品成分表示名称]
・ワセリン

[医薬部外品表示名称]
・ワセリン

[慣用名]
・白色ワセリン、プロペト、ヴァセリン

石油から得られる軟膏様半固体であり石油系飽和炭化水素(∗1)の混合物です。

∗1 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物で、化学的に極めて不活性な物質です。

主成分はC₂₄H₅₀-C₃₄H₇₀の非晶質(∗2)であり、固形炭化水素の中に液状炭化水素が存在するコロイド状態(∗3)であると考えられています(文献5:1997)

∗2 非晶質とは、原子や分子が結晶のような規則正しい構造をとらないことをいいます。

∗3 コロイド状態とは、一方が微小な液滴あるいは微粒子を形成し、他方に分散した2組の相から構成された乳化とも呼ぶ物質状態のことです。たとえば牛乳は水溶液の中に脂肪が分散したコロイド状態です。

固形炭化水素部分は、直鎖のノルマルパラフィン、微結晶イソパラフィンおよび環状パラフィンなら成り、液状炭化水素部分は環状パラフィンや環状パラフィンに側鎖のついた分岐イソパラフィンなどから成り立っています(文献6:2015)

ワセリンは大きく分けて、

  • 黄色ワセリン(非脱色・非精製)
  • 白色ワセリン(脱色・精製)

これらに分類され、脱色・精製したものは一般的に「白色ワセリン」と呼び、医薬品をはじめ化粧品においてもほとんどは白色ワセリンを用いています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されています(文献4:2016;文献5:1997)

皮膚保護および表皮水分蒸散抑制によるエモリエント作用

皮膚保護および表皮水分蒸散抑制によるエモリエント作用に関しては、非常に安定した物質であり、皮膚面に疎水性皮膜を形成し、外界の刺激から皮膚を保護し、また皮膚内からの水分蒸散を抑制する機能を有することからワセリンのみ、またはスキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品に使用されます(文献4:2016;文献5:1997)

ただし、粘性および油のベタつきを有しているため、単体での使用感は不快感をともないます(文献7:2014)

2014年に西伊豆病院によって報告されたワセリン塗布による皮膚保湿時間の検討によると、

2013年7月-9月の期間においてA病院病棟看護部職員38人においてワセリン塗布による皮膚保湿時間を検討した。

各前腕内側部を市販石鹸で洗浄後、右側にワセリン1gを、左側にワセリン2gを塗布し、塗布2,4,6,および8時間後に水分測定を行った。

測定の結果、38歳以上においては6時間の値において38歳以下と比較して有意に皮膚水分量が高かった

またワセリン1gと2gでは有意差がみられなかったが、ワセリン1gより2gのほうがより不快感があったことがすべての被検者において報告された。

これらの結果から、ワセリンの塗布量は多くなくてもよいと考えられ、ワセリン1gを6時間ごとに塗布することが皮膚保湿効果を維持できるのではないかと示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2014)、ワセリンに表皮水分蒸散抑制によるエモリエント作用が認められています。

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ワセリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ワセリンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:軽度(データなし)
  • 皮膚感作性:ほとんどなし(データなし)

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

アメリカ皮膚科学会によると、脂漏性皮膚炎を有する場合は、ワセリンの使用は推奨されていません。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化学的に類似した物質に皮膚刺激性および皮膚感作性はなく、また皮膚感作試験の基剤としても使用されており、(文献1:2014)、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

プロペト(日本薬局方の白色ワセリン)の添付文書の副作用の項目には接触皮膚炎(頻度不明)との記載があります(文献2:2015)

– 皮膚炎を有する場合 –

フランスのナンシー大学病院皮膚科の臨床データ(文献8:2004)によると、

  • 皮膚炎を有している患者を調査している間に実施したパッチテストにおいて、白色ワセリンで陽性反応が示されたため、数カ月後に改めて5つのブランドの白色ワセリンでパッチテストしたところ、陽性反応であったため、ワセリンに過敏な患者にはワセリンを配合している化粧品や外用薬などすべての製品をチェックして取り除くことが重要である

アメリカ皮膚科学会のウェブサイト(文献3:-)によると、

  • 脂漏性皮膚炎を有する場合は、ワセリンの使用は推奨しない

– 個別事例 –

アメリカのイリノイ大学医学部皮膚科の臨床データ(文献9:2004)によると、

  • [個別事例] アトピー性皮膚炎歴20年を有する白人女性(31歳)が重度のそう痒症と広範囲の紅斑および鱗屑の存在を訴えた。彼女の以前の治療には複数のコルチコステロイド、0.1%タクロリムス軟膏、1%ピメクロリムスクリームおよびシクロスポリンが使用されていたが、症状は改善されなかった。彼女は皮膚生体検査を受けたことがなかったため、生体検査を実施したところ、過敏性皮膚炎の可能性を示したため、合計89個のパッチテストを実施し48時間後に皮膚反応を評価したところ、合計70個に陽性反応があり、そのうち69個がワセリン基剤であった。またコカミドプロピルベタインに対する陽性反応を除いて液体溶液中にあった試験物質はすべて陰性であった。次に48時間の評価段階でさらにワセリンのみの4つのパッチを適用したところ、適用段階で4つの部位すべてが3+の反応を示し、96時間後にはアングリーバック症候群(∗4)によると思われる陽性反応がみられ、読み取りを不可能にした

∗4 アングリーバック症候群とは、非常に強い陽性反応が、その反応の近隣にもアレルギーを介さない反応を誘発する現象のことです。

と記載されています。

白色ワセリンは、パッチテストにおいて基剤にも使用されることからも皮膚刺激性および皮膚感作性がない物質として実績がありますが、臨床データをみるかぎり、皮膚炎を有する場合においてごくまれにワセリンに対して陽性反応を示すことが報告されています。

また脂漏性皮膚炎を有する場合において、ワセリンの使用は非推奨とされています。

眼刺激性について

化学的に類似した物質には軽度の眼刺激性が確認されていますが(文献1:2014)、試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ワセリンはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Croda International plc(2014)「CROLATUM V」Safety Data Sheet.
  2. “Pmda:医薬品医療機器総合機構”(2015)「プロペト」, <https://www.aad.org/public/diseases/scaly-skin/seborrheic-dermatitis#tips> 2019年2月26日アクセス.
  3. “American Academy of Dermatology Association”(-)「Seborrheic dermatitis: Tips for managing」, <https://www.aad.org/public/diseases/scaly-skin/seborrheic-dermatitis#tips> 2019年2月26日アクセス.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブック,28.
  5. 広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
  6. 高谷 甲波, 他(2015)「白色ワセリンの使用感の改善」YAKUGAKU ZASSHI(135)(12),1371-1375.
  7. 繁田 考祝, 他(2014)「ワセリン塗布による皮膚保湿時間の検討」日本看護研究学会雑誌(37)(3),158.
  8. G Ulrich, et al(2004)「Sensitization to petrolatum: an unusual cause of false-positive drug patch-tests.」Allergy(59)(9),1006-1009.
  9. RV Kundu, et al(2004)「Contact dermatitis to white petrolatum.」Skinmed(3)(5),295-296.

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