ワサビノキ種子油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
ワサビノキ種子油
[化粧品成分表示名称]
・ワサビノキ種子油

[慣用名]
・モリンガオイル、ベンオイル

ワサビノキ科植物ワサビノキ(学名:Moringa oleifera)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。

ワサビノキはモリンガとも呼ばれ、インド北西部のヒマラヤ山麓を原産とし、今日ではインドをはじめアジア諸国、南洋諸国、アフリカ諸国、西インド諸島、中南米諸国の熱帯・亜熱帯地域に広く分布しています(文献2:2016)

ワサビノキは、葉、花、鞘、実、茎、根、種子のすべての部位が利用可能で、90種類の栄養素を含む高機能バランス栄養食材として古くから利用されており、インド伝承医学であるアユルヴェーダやイスラム伝承医学であるユナニ医学においてはモリンガを使用したヒーリング療法、食事療法、スピリチュアル療法などが記載されています。

モリンガオイルは、ほかの植物油脂よりもベヘン酸の含有量が多いことが特徴であることからベンオイルとも呼ばれており、かつては時計の潤滑油や油絵の材料として、また繊細な香りを吸収・保持する特性を有していることから香水の原料やヘアオイルとして使用されてきており、最近では質の高い石鹸の原料としても価値を見出されています(文献3:2006)

ワサビノキ種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 1.5-3
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 65-80
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 1.5-5
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 1-1.5
エイコセン酸 不飽和脂肪酸 C20:1 2.5-4
エルカ酸 不飽和脂肪酸 C22:1 3
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 5-9.3
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 3-8
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 2-5
ベヘン酸 飽和脂肪酸 C22:0 8-8.6

このような種類と比率で構成されています(文献1:2017)

オレイン酸65-80%、ベヘン酸8-8.6%を占めており、二重結合2つ以上のリノール酸およびリノレン酸の含有量は少ないため、比較的酸化安定性は高い(酸化しにくい)と考えられます。

オレイン酸を主成分とした組成はオリーブ果実油やアボカド油などに似ていますが、炭素数20以上の脂肪酸であるエイコセン酸、エルカ酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量が高く、他の植物油脂と比較して特徴的です。

また不けん化物としてステロール類(β-シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール)が含まれていることが報告されています(文献4:1999;文献5:2009)

ヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
66 不乾性油

一例としてこのように記載されており(文献1:2017)、100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどありません。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、リップ製品、洗浄製品などに幅広く使用されます(文献6:2014)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、オレイン酸70-78%を含有していることからヒト皮膚との親和性が高く、またベヘン酸の存在はベタつきのないサッパリした感触にもかかわらずリッチなエモリエント感を付与するため、スキンケアおよびヘアケア用のクリーム、乳液やマッサージオイルなどの基剤として使用されています(文献6:2014)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ワサビノキ種子油の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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ワサビノキ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ワサビノキ種子油の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 214人の被検者に0.01%ワサビノキ種子油を含むクレンジングオイルの10%水溶液0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において3人の被検者に疑わしい皮膚反応、1人の被検者に明瞭な紅斑が7回目のパッチテストで観察されたが、未処置部位で再試験したところ、皮膚反応は観察されなかった。これらの結果からワサビノキ種子油は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論づけられた(TKL Research,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ワサビノキ種子油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 尾山 廣(2016)「ワサビノキ(モリンガ)の種子・葉に含まれる有用成分とその多目的利用」熱帯農業研究(9)(2),41-51.
  3. National Research Council(2006)「MORINGA」Lost Crops of Africa: Volume Ⅱ:Vegetables,247-268.
  4. J Tsaknis, et al(1999)「Characterization of Moringa oleifera variety Mbololo seed oil of Kenya.」Journal of Agricultural and Food Chemistry(47)(11),4495-4499.
  5. R. Banerji, et al(2009)「Oil and Fatty Acid Diversity in Genetically Variable Clones of Moringa oleifera from India」Journal of Oleo Science(58)(1),9-16.
  6. AA Warra(2014)「A Review of Moringa Oleofera Lam Seed Oil Prospects in Personal Care Formulations.」Research & Reviews: Journal of Pharmaceutics and Nanotechnology(2)(3),31-34.

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