ラノリンアルコールとは…成分効果と毒性を解説

ベース 感触改良 安定化成分 エモリエント成分
ラノリンアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ラノリンアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ラノリンアルコール

ラノリンをけん化分解(加水分解)して得られる高級アルコールと脂肪族アルコールから成るロウ状混合物です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、洗顔料、洗浄製品、メイクアップ化粧品、ネイル製品などに使用されています(文献1:1980)

感触改良

感触改良に関しては、コレステロール含有率が約30%であることから他の高級アルコールと比較して保水性および乳化性が高く、またラノリンと比較して粘着性が少ないことから、O/W型(水中油型)エマルションに用いると稠度およびキメの良好なクリームが得られます(文献6:1997)

乳化補助

乳化補助に関しては、コレステロールを多く含み、保水性および乳化性を有していることから、乳化助剤としても用いられ、乳液のような流動性を必要とするエマルションに用いると流動性の良好なエマルションが形成されます(文献6:1997;文献7:2012)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、コレステロールを多く含み、保水性を有していることから、ヘアコンディショニング剤・エモリエント剤としてヘアケア製品に使用されます(文献6:1997)

∗1 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1980年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラノリンアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1980年および2002-2003年)

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ラノリンアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ラノリンアルコールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし-まれに感作する可能性あり
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-感作する可能性あり
  • 日本接触皮膚炎学会が決定するジャパニーズスタンダードアレルゲン規格2008に収載

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、ジャパニーズスタンダードアレルゲンの一種であり、とくに皮膚炎を有する場合は皮膚感作(アレルギー)を誘発する可能性があるため、パッチテストで感作しないことを確認してからの使用を推奨します(陰性であれば問題のない成分です)。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に未希釈のラノリンアルコールを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、一次皮膚刺激、疲労感、または皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1980)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に未希釈のラノリンアルコールを点眼し、眼刺激性を評価したところ、わずかな刺激性に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に未希釈のラノリンアルコールを点眼し、眼刺激性を評価したところ、非刺激性に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に50%ラノリンアルコールを含むミネラルオイルを点眼し、眼刺激性を評価したところ、一過性の軽度の眼刺激が示された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に未希釈のラノリンアルコールを点眼し、眼刺激性を評価したところ、刺激性は示されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-軽度の刺激性が報告されているため、眼刺激性は非刺激-一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に未希釈のラノリンアルコールを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、一次皮膚刺激、疲労感、または皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

日本皮膚科学会の臨床データ(文献3:1994)によると、

  • [ヒト試験] 1982年から1991年までの10年間に皮膚科を受診した患者のうち香粧品または外用薬による接触皮膚炎を疑った4,839例を対象に30%ラノリンアルコール、ラノリン(局方精製ラノリン)、水素添加ラノリン(還元ラノリン)のパッチテストをICDRG(国際接触皮膚炎研究グループ)に基づいて実施したところ、平均陽性率はラノリンアルコールが97人(2.0%)、ラノリンが29人(0.6%)、還元ラノリンが82人(1.7%)であった。ラノリンアルコールと還元ラノリンで陽性反応が認められたうちの過半数がそれぞれ単独で陽性反応であった。また陽性反応が認められた156例の中で調べた149例のうちの40例(26.8%)はアトピー性皮膚炎であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、4,839例のうち97人(2%)に陽性反応が報告されているため、まれに皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

ラノリンパッチテスト研究班の臨床データ(文献2:1985)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎、女子顔面黒皮症、その他湿疹、皮膚炎患者430例の背中にラノリンアルコールを含むラノリン誘導体を24種類FinnChamberまたはパッチテスト様絆創膏で48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後および1週間後に皮膚反応を判定したところ、接触アレルギー反応率はラノリンアルコール(30%)が最も高く、(+)以上6.8%、(++)以上2.3%であった。なお1週間後も陽性反応が続いた例が6例あり、そのうち3例がラノリンアルコールで最も多かった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ラノリンアルコールで430例のうち約130例(30%)に陽性反応が報告されているため、皮膚炎を有する場合、皮膚感作性を誘発する可能性があると考えられます。

ラノリンアルコールは、日本接触皮膚炎学会が決定する25種類のジャパニーズスタンダードアレルゲンのひとつに指定されており(文献4:2009)、以下の日本皮膚科学会の表でもわかるように、

2011年度ジャパニーズスタンダードアレルゲン陽性率

2011年では、ラノリンアルコールの陽性率は2.8%で13位と報告されています(文献5:2013)

陽性率はそこまで高くはありませんが、他の試験データと合わせて考えると皮膚炎を有している場合は陽性率が高くなると推測されるため、皮膚炎を有している場合はとくに注意が必要な成分だと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に0.75%ラノリン酸、3%ラノリンアルコール、0.5%ヒドロキシラノリンを含む製剤を対象に光毒性試験を実施したところ、この製剤に光毒性は認められなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.75%ラノリン酸、3%ラノリンアルコール、0.5%ヒドロキシラノリンを含む製剤を対象に光感作性試験を実施したところ、この製剤に光感作性は認められなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ラノリンアルコールはベース成分、エモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1980)「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」Journal of environmental pathology and toxicology(4)(4),63-92.
  2. ラノリンパッチテスト研究班(1985)「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」西日本皮膚科(47)(5),864-873.
  3. 加藤 順子, 他(1994)「ラノリンによる接触アレルギー」皮膚(36)(2),115-124.
  4. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン委員会(2009)「接触皮膚炎診療ガイドライン」日本皮膚科学会誌(119)(9),1757-1793.
  5. 日本皮膚科学会(2013)「アレルギー性接触皮膚炎の原因製品とジャパニーズスタンダードアレルゲン陽性率」, 2018年1月20日アクセス.
  6. 広田 博(1997)「環状アルコール」化粧品用油脂の科学,82-87.
  7. 鈴木 一成(2012)「ラノリンアルコール」化粧品成分用語事典2012,72-73.

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