ラノリンアルコールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分 安定化成分
ラノリンアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ラノリンアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ラノリンアルコール

ラノリンをケン化分解(石けんを除去して精製)して得られる高級アルコールとコレステロールなどの脂肪族アルコールの混合物から成るオイルです。

ラノリンと比較してコレステロールを多く含むことから保水性や強い保護作用を有しており、乾燥に負けない肌へ整えるエモリエント剤として化粧品に使用されます。

また、乳化安定化のはたらきもあるため、乳化補助剤としても用いられます。

ラノリンアルコールは酸化しやすいので酸化防止剤と併用されることが多いです。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラノリンアルコールの配合製品数と配合量の比較調査結果

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ラノリンアルコールの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ラノリンアルコールの現時点での安全性は、皮膚刺激性、光毒性および光感作性はほとんどないものの、眼刺激性は非刺激またはわずかな眼刺激性を起こす可能性があり、とくに皮膚炎や湿疹の場合にアレルギー性接触皮膚炎を起こす可能性が低くないため、安全性に問題のある成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に未希釈のラノリンアルコールを誘導期間において1日おきに合計10回反復適用し、10~14日の無処置期間を設けた後にチャレンジパッチを適用し、反応を評価したところ、一次皮膚刺激、疲労感、または皮膚感作は示されなかった(CTFA,1978)

日本皮膚科学会の「ラノリンによる接触アレルギー」(文献2:1984)によると、

  • [ヒト試験] 1982年から1991年までの10年間に皮膚科を受診した患者のうち香粧品または外用薬による接触皮膚炎を疑った4,839例を対象にICDRGの基準で30%ラノリンアルコール、ラノリン(局方精製ラノリン)、水素添加ラノリン(還元ラノリン)の3種類の成分のパッチテストを行ったところ、平均陽性率はラノリンアルコールが97人(2.0%)、ラノリンが29人(0.6%)、還元ラノリンが82人(1.7%)であった。ラノリンアルコールと還元ラノリンで陽性反応が認められたうちの過半数がそれぞれ単独で陽性反応であった。また陽性反応が認められた156例中調べた149例のうちの40例(26.8%)がアトピー性皮膚炎であった

日本皮膚科学会の「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」(文献3:1985)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎、女子顔面黒皮症、その他湿疹、皮膚炎患者430例の背中にラノリンアルコールを含むラノリン誘導体を24種類FinnChamberまたはパッチテスト様絆創膏で48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去1および24時間後および1週間後に反応を判定したところ、接触アレルギー反応率はラノリンアルコール(30%)が最も高く、(+)以上6.8%、(++)以上2.3%であった。なお1週間後も陽性反応が続いた例が6例あり、そのうち3例がラノリンアルコールで最も多かった

と記載されています。

試験結果は共通して皮膚刺激はないものの、アレルギー性接触皮膚炎の報告が少なくないため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられますが、皮膚感作性(アレルギー性)が起こる可能性があると考えられます。

ラノリンアルコールは、25種類のジャパニーズスタンダードアレルゲンのひとつに指定されており、以下の日本皮膚科学会の表でもわかるように、

2011年度ジャパニーズスタンダードアレルゲン陽性率

2011年ではラノリンアルコールの陽性率は2.8%で13位となっています(文献4:2013)

数字だけみるとそこまで陽性率が高いとはいえないのですが、これは皮膚疾患者限定ではなく、一般的な皮膚を対象とした陽性率であり、上の試験結果も含めて考慮すると、アレルギー性皮膚炎や湿疹の場合は陽性率がかなり高くなると推測されるので、皮膚炎や湿疹の場合はとくに注意が必要な成分だと考えられます。

ラノリンは、ラノリンアルコールなどの不純物が除去された安全性の高い吸着精製ラノリンが主流になることで、現在でも使用され続けている一方、ラノリンアルコール自体はアレルギーのイメージが定着してきたためか化粧品での使用は減少してきています。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」(文献1:1980)によると、

  • [動物試験] 実験動物の眼においてラノリン成分は非刺激性またはわずかな刺激性であった

と記載されています。

試験結果では非刺激性またはわずかな眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は非刺激性またはわずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 0.75%ラノリン酸、3%ラノリンアルコール、0.5%ヒドロキシラノリンを含む2つの製剤の光毒性を20人の被検者で試験し、光感作性を25人の被検者で試験したところ、光毒性または光感作性のどちらも認められなかった(CTFA,1973)

と記載されています。

試験結果では光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ラノリンアルコール 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ラノリンアルコールは毒性なし(∗2)となっており、毒性はないものの、皮膚炎や湿疹の場合に接触皮膚炎を発症する確率が低くないため、安全性に問題のある成分であると考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ラノリンアルコールはベース成分、エモリエント成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1980)「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」, <https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/pr250.pdf> 2018年1月20日アクセス.
  2. 日本皮膚科学会(1984)「ラノリンによる接触アレルギー」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch1959/36/2/36_2_115/_article/-char/ja/> 2018年1月20日アクセス.
  3. 日本皮膚科学会(1985)「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/47/5/47_5_864/_article/-char/ja/> 2018年1月20日アクセス.
  4. 日本皮膚科学会(2013)「アレルギー性接触皮膚炎の原因製品とジャパニーズスタンダードアレルゲン陽性率」, <http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-131121.pdf> 2018年1月20日アクセス.

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