ラノリンとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分
ラノリン
[化粧品成分表示名称]
・ラノリン

[医薬部外品表示名称]
・ラノリン、吸着精製ラノリン

羊毛に付着している羊脂を精製して得られる白色(∗1)~黄褐色の粘性があるクリーム状の原料です。

∗1 精製度が高くなるほど白くなります。

主成分は高級アルコールと高級脂肪酸のエステルで、分類上はロウ(ワックス)に属します。

人間の皮脂に近い組成をもつと言われており、水には溶けませんが、約2倍量の水を吸収し、乳化性に優れているので、各種化粧品に用いられてきましたが、精製ラノリンでも臭気やアレルギー性などの欠点があったため、現在ではラノリンの特性を残して欠点を除去したラノリン誘導体やラノリンの特性を強調した物質が使用されています。

中でも日本薬局方の精製ラノリンをさらに精製した吸着精製ラノリンは、アレルギーの原因となるラノリンアルコールやラノリンステロールが除去されており、アレルギー性の試験結果(以下の安全性を参照)をみても、アレルギーの起こる可能性はかなり低いと考えられます。

そういった背景から現在は吸着精製ラノリンが主流となっていますが、化粧品の成分表示一覧には吸着精製ラノリンであっても(なくても)「ラノリン」と表示されるので、吸着精製ラノリンを使用しているかどうかを明確にしたい場合はメーカーに確認する必要があります。

医薬部外品の場合は、吸着精製ラノリンであれば吸着精製ラノリンと表示され、一般的なラノリンであればラノリンと表示されます。

化粧品に配合される場合は、口紅、マスカラ、アイペンシルなどのメイクアップ化粧品や皮膚への親和性の高さと水分蒸発を防ぐエモリエント効果からクリーム、乳液などによく配合されます。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ラノリンの配合製品数と配合量の比較調査結果

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ラノリンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ラノリンの現時点での安全性は、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性は非刺激またはわずかな眼刺激性を起こす可能性があるものの、皮膚感作性(アレルギー性)もほとんどないため、安全性の高い成分であると考えられます。

精製度が高くなるほどアレルギーが起こる可能性が低くなり、最も精製度が高いのが吸着精製ラノリンであり、現在は吸着精製ラノリンの使用が増えていますが、化粧品の成分表示は吸着精製ラノリンであってもなくても「ラノリン」としか記載されないため、吸着精製ラノリンを使用しているかどうかは各メーカーに確認してください。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」(文献1:1980)によると、

  • [ヒト試験] 200人の被検者に100%ラノリンを誘導期間において週3回合計10回適用した後にチャレンジパッチを適用し、Draize法に従って評価したところ、皮膚感作性の兆候は示さなかった(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に100%ラノリンを誘導期間において1日おきに10回反復パッチ適用し、10~14日の休息期間を設けた後にチャレンジパッチを適用し、反応を評価したところ、一次刺激、疲労感、感作性の兆候はみられなかった(CTFA,1978)

日本皮膚科学会の「ラノリンによる接触アレルギー」(文献2:1984)によると、

  • [ヒト試験] 1982年から1991年までの10年間に皮膚科を受診した患者のうち香粧品または外用薬による接触皮膚炎を疑った4,839例を対象にICDRGの基準で30%ラノリンアルコール、ラノリン(局方精製ラノリン)、水素添加ラノリン(還元ラノリン)の3種類の成分のパッチテストを行ったところ、平均陽性率はラノリンアルコールが97人(2.0%)、ラノリンが29人(0.6%)、還元ラノリンが82人(1.7%)であった。ラノリンアルコールと還元ラノリンで陽性反応が認められたうちの過半数がそれぞれ単独で陽性反応であった。ラノリン陽性者のうち80.5%が多感作例で、そのうち41.6%が香料アレルゲンに陽性であった

日本皮膚科学会の「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」(文献3:1985)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎、女子顔面黒皮症、その他湿疹、皮膚炎患者430例にラノリンおよびその誘導体をパッチテストしたところ、接触アレルギー反応率はラノリンアルコール(30%)が最も高く、(+)以上6.8%、(++)以上2.3%であった。吸着精製ラノリン(100%および30%)の場合72時間後で(++)以上の明らかなアレルギー反応は430例中皆無で、精製ラノリンより安全であることを確認した

と記載されています。

試験結果は共通して皮膚刺激および皮膚感作を示さないと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ラノリンは羊毛から得られるのでウールアレルギーをはじめ、皮膚炎や湿疹など皮膚バリアが壊れている場合は接触アレルギーが起こりやすいと想像されますが、アレルギーが起こりやすいのはラノリンアルコールであり、精製度の低いラノリンはラノリンアルコールを含みますが、現在は精製度の高い吸着精製ラノリンが採用されているため、アレルギーの起こる可能性は低いと考えられます。

現在はほとんどの場合、精製度の高い吸着精製ラノリンが採用されていますが、上で伝えたように化粧品の場合は成分一覧に「ラノリン」としか記載されていないため、湿疹や皮膚炎の場合やウールにアレルギーの場合はメーカーに事前に吸着精製ラノリンかどうか確認しておくことを推奨します。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」(文献1:1980)によると、

  • 局所的に塗布されたラノリン含有製剤が角膜に取り込まれるかを調べたところ、一連の動物試験の結果、ラノリン含有軟膏は角膜の表面が直接的に繰り返しこすられたり壊されたりしない限り、角膜に閉じ込められなかったと結論づけた(Fraunfelder et al.,1973)
  • [動物試験] 実験動物の眼においてラノリン成分は非刺激性またはわずかな刺激性であった

と記載されています。

試験結果では非刺激性またはわずかな眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は非刺激性またはわずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ラノリン 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ラノリンは毒性なし(∗3)となっていおり、安全性に問題ないと考えられます。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ラノリンはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1980)「Final Report of the Safety Assessment for Acetylated Lanolin Alcohol and Related Compounds」, <https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/pr250.pdf> 2018年1月19日アクセス.
  2. 日本皮膚科学会(1984)「ラノリンによる接触アレルギー」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch1959/36/2/36_2_115/_article/-char/ja/> 2018年1月19日アクセス.
  3. 日本皮膚科学会(1985)「パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/47/5/47_5_864/_article/-char/ja/> 2018年1月19日アクセス.

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