ラウリン酸とは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡
ラウリン酸
[化粧品成分表示名称]
・ラウリン酸

[医薬部外品表示名称]
・ラウリン酸

主にヤシ油またはパーム核油から得られる、化学構造的に炭素数:二重結合数がC12:0で構成された分子量200.32の高級脂肪酸(飽和脂肪酸)です(文献7:2019)

高級脂肪酸とは、化学構造的に炭素数12以上の脂肪酸のことをいい、炭素数が多いとそれだけ炭素鎖が長くなるため、長鎖脂肪酸とも呼ばれます。

また炭素鎖が長いほど(炭素数が大きいほど)融点(∗1)が高くなり、ラウリン酸の融点は44.2℃です(文献3:2016)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

高級脂肪酸は、以下の表のように大きく2種類に分類され、

  飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
化学結合 すべて単結合(飽和結合) 二重結合や三重結合を含む(不飽和結合)
含有油脂 動物性油脂に多い 植物性油脂に多い
常温での状態 固体(脂) 液体(油)
融点 高い 低い
酸化安定性 高い 比較的低い

化学構造的に二重結合(不飽和結合)の数が多いほど酸化安定性が低くなりますが、ラウリン酸は化学構造的にすべて単結合(飽和結合)で構成された飽和脂肪酸であり、酸化安定性の高い脂肪酸です(文献4:1997)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗顔料&洗顔石鹸、ボディ&ハンドソープ製品、クレンジング製品などに使用されます(文献3:2016)

ナトリウムセッケン合成による洗浄・起泡

ナトリウムセッケン合成による洗浄・起泡に関しては、まず前提知識としてナトリウムセッケン合成およびナトリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケン(∗2)は、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

∗2 セッケンには、「セッケン」「石けん」「せっけん」「石鹸」など4種の表記法があり、これらの用語には界面活性剤を意味する場合と界面活性剤を主剤とした製品を意味する場合がありますが、化学分野では界面活性剤を「セッケン」、製品を「せっけん」と表現する決まりになっています。それらを考慮し、ここでは界面活性剤を「セッケン」、セッケンを主剤とした製品を「石鹸」と記載しています。

  • ケン化法:油脂 + 水酸化Na → 油脂脂肪酸Na + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化Na → 高級脂肪酸Na + 水

この2種類があります。

ラウリン酸は高級脂肪酸であることから中和法が用いられ、また中和に用いるアルカリを水酸化Naにすることでナトリウムセッケン(固形石鹸)が得られます(文献5:1979)

上記では、中和法によって合成されるセッケンを「高級脂肪酸Na」と表記しましたが、中和法で得られるラウリン酸のナトリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na ラウリン酸、水酸化Na
ラウリン酸Na
石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため(∗3)、セッケン(洗浄基剤)目的で「ラウリン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naが一緒に記載されます。

∗3 ここではわかりやすくラウリン酸単体で記載していますが、セッケンは複数の高級脂肪酸の混合系であるため、複数の高級脂肪酸または高級脂肪酸Naが記載されます。ただし、石ケン素地が記載される場合は、複数の高級脂肪酸をまとめて石ケン素地とだけ記載されます。

次にラウリン酸を使用したナトリウムセッケンの洗浄力および起泡力については、以下の表のように、

脂肪酸名 洗浄力
(温水)
洗浄力
(冷水)
起泡性 泡持続性
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献6:1990)、ラウリン酸は冷水および温水の両方で安定した洗浄力を有するとともに優れた起泡力が知られています。

また、1955年に日本油脂によって報告された飽和脂肪酸のナトリウムセッケンの起泡力検証によると、

各飽和脂肪酸のナトリウムセッケンを水道水溶液(温度35℃)で0.25%濃度に希釈し、それぞれの起泡力をRoss&Miles法に基づいて測定したところ、以下の表のように、

飽和脂肪酸 炭素数 起泡力:泡の高さ(mm)
直後 5分後
ラウリン酸 C₁₂ 217 208
ミリスチン酸 C₁₄ 350 350
パルミチン酸 C₁₆ 37 32
ステアリン酸 C₁₈ 25 21

起泡力に最適な脂肪酸はC₁₂-C₁₄に存在し、他の炭素数ではかなり起泡力が低下していることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1955)、ラウリン酸のナトリウムセッケンに起泡力が認められています。

ただし、市販の洗浄製品には複数のナトリウムセッケンが使用されていることから、配合されているナトリウムセッケンの総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(文献9:1993)

カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄

カリウムセッケン合成による洗浄・起泡に関しては、まず前提知識としてカリウムセッケン合成およびカリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケンは、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

  • ケン化法:油脂 + 水酸化K → 油脂脂肪酸K + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化K → 高級脂肪酸K + 水

この2種類があります。

ラウリン酸は高級脂肪酸であることから中和法が用いられ、また中和に用いるアルカリを水酸化Kにすることでカリウムセッケン(液体石鹸)が得られます(文献5:1979)

上記では、中和法によって合成されるセッケンを「高級脂肪酸K」と表記しましたが、中和法で得られるラウリン酸のカリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化K ラウリン酸、水酸化K
ラウリン酸K
カリ石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「ラウリン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Kが一緒に記載されます。

また、ナトリウムセッケンやカリウムセッケンのほかに、ナトリウムセッケン(固形セッケン)にカリウムセッケン(液体セッケン)を添加することで、水に対する溶けやすさや泡立ちを改良したカリ含有ナトリウムセッケンがあり、ラウリン酸を含むカリ含有セッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na + 水酸化K ラウリン酸、水酸化Na、水酸化K
ラウリン酸Na、ラウリン酸K
カリ含有石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「ラウリン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naおよび水酸化Kが一緒に記載されます。

次に、カリウムセッケンによる起泡・選択洗浄に関しては、カリウムセッケンはナトリウムセッケンより溶解性が高く、起泡性に優れていることが知られています(文献10:1958)

また、30℃および40℃での各脂肪酸における0.5%濃度の脂肪酸カリウム塩(カリウムセッケン)の起泡力および泡持続性は、

  脂肪酸名 起泡性 泡持続性
30℃ 40℃ 30℃ 40℃
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献11:1989)、ラウリン酸は30℃および40℃の両方で安定した起泡力および泡持続性が知られています。

カリウムセッケンは主に洗顔料に使用されますが、洗顔の場合、過剰な皮脂や汚れを洗浄することが必要である一方で、皮膚の恒常性を保持するための角質細胞間脂質などまで洗い流してしまうことは望ましいことではありません。

このような背景から、洗顔において皮膚のつっぱり感や肌荒れを回避するために、皮膚の恒常性に必要な物質を極力洗い流さない選択洗浄性(∗4)が重要であり、顔におけるカリウムセッケンの選択洗浄性とは、皮膚の向上性を保つために重要な因子である角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルを残存させ(∗5)、皮脂由来脂質であるスクワレンを汚れとともに洗浄することを意味します。

∗4 選択洗浄性とは、ある物質はよく洗い流すが、ある物質は洗い流さず残すという洗浄剤の性質のことです。

∗5 角質細胞間脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルの残存は皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐための重要な因子であると考えられています。

1989年にポーラ化成工業によって報告された各カリウムセッケンの選択洗浄性検証によると、

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールエステルおよびコレステロールの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を0.5%濃度の各カリウムセッケン洗浄液300mLで30分間洗浄し、水洗いを比較として、30分後の豚皮に残存した皮脂組成を検討したところ、以下のグラフのように、

30分洗浄後のブタ皮の皮膚組成比率の変化

水洗いでは、親水性の高いコレステロールが除去され、コレステロール比率の減少を示した。

また、ラウリン酸カリウムセッケンはスクワレンを十分に洗浄し、コレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性を示した。

さらに、複数のカリウムセッケンを組み合わせた処方系においても同様の選択洗浄性がみられ、とくにパルミチン酸カリウムセッケンおよびステアリン酸カリウムセッケンを組み合わせたものがスクワレン除去率が高く、

  • ラウリン酸K、ミリスチン酸K
  • ミリスチン酸K、パルミチン酸K、ステアリン酸K
  • パルミチン酸K、ステアリン酸K

これらのいずれの組み合わせにおいてもコレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献12:1989)、ラウリン酸Kは十分なスクワレン洗浄力とコレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性が認められています。

非極性油のスクワレンは、親油基が大きい(炭素鎖が長い)界面活性剤のほうが親和力が高いため、親油基が大きい(炭素鎖が長い)パルミチン酸およびステアリン酸に十分な洗浄性が示されたと考えられますが、ラウリン酸の場合は親油基が最も小さい(炭素鎖が短い)ものの、水への溶解性が比較的高く、また油剤への洗浄性も比較的高いことから、スクワレンに対する十分な洗浄性を示したと考えられます(文献12:1989)

ナトリウムセッケンの泡質改善作用

ナトリウムセッケンの泡質改善作用に関しては、ナトリウムセッケンにラウリン酸を配合することで泡のソフト感が増し(泡粒径が小さくなる)、かつ泡弾性が向上することが知られており(文献9:1993)、このように高級脂肪酸を配合したセッケンを過脂肪セッケンといいます。

過脂肪セッケンの場合は、一例として、化粧品成分表示一覧にラウリン酸Naとは別にラウリン酸も記載されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2006年および2016-2019年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ラウリン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2006年および2016-2019年)

スポンサーリンク

ラウリン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

ラウリン酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 100年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:50%濃度以上で皮膚刺激性あり
  • 眼刺激性(すすぎなし):軽度-中程度
  • 眼刺激性(すすぎあり):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、すすぎの水にカルシウムイオンが含まれている場合は、濃度依存的にラウリン酸カルシウム塩が皮膚に吸着残留し、皮膚刺激や肌荒れの原因になる可能性が示唆されているため、注意が必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:2019)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者の背中に50%ラウリン酸を含む製剤10μLを24時間閉塞Finn Chamber適用したところ、試験物質は紅斑および浮腫を誘発した(European Chemicals Agency,2018)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の前腕に80%ラウリン酸を含む製剤を30分間にわたって30秒ごとに開放パッチ適用し、またその間洗浄しなかったところ、30分の塗布終了後に3人の被検者は軽度の紅斑を生じたが、それらは30分後には消失した。他の被検者に皮膚反応は観察されなかった(European Chemicals Agency,2018)
  • [in vitro試験] ラットの背部および腹側部の全層を用いて99%ラウリン酸のin vitro腐食性試験を実施したところ、腐食性なしと予測された(Whittle E,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、50%濃度以上で皮膚刺激が報告されているため、50%濃度以上で皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

セッケンの皮膚刺激性に関しては、

ラウリン酸(C₁₂) ← ミリスチン酸(C₁₄) ← パルミチン酸(C₁₆) ← ステアリン酸(C₁₈)

この順に皮膚刺激が強いことが知られており、またナトリウムセッケンよりカリウムセッケンのほうが刺激性が強く(文献18:1939)、セッケンの中ではラウリン酸カリウムセッケンが最もスティンギング(∗6)が強いと報告されています(文献19:1998)

∗6 スティンギングとは、チクチクと刺すような主観的な刺激感のことです。

ただし、一般に洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、セッケンが皮膚に与える影響は極めて少ないことが明らかにされています(文献20:1972)

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギを用いてラウリン酸(濃度不明)を対象にした眼刺激性試験をOECDテストガイドライン405に基づいて実施したところ、すべてのウサギに流涙および角膜上皮損傷が観察された(European Chemicals Agency,2018)
  • [動物試験] 3匹のウサギを用いてラウリン酸(濃度不明)を対象にした眼刺激性試験をOECDテストガイドライン405に基づき実施した。被験物質0.1gを点眼し、点眼後に生理食塩水で眼をすすぎ、眼刺激性を評価したところ、眼刺激性は観察されなかった(European Chemicals Agency,2018)
  • [動物試験] 1匹のウサギを用いてラウリン酸(濃度不明)を対象にした眼刺激性試験をOECDテストガイドライン405に基づき実施した。被験物質を点眼し、点眼後眼はすすがず、眼刺激性を評価したところ、角膜でわずか-中程度の眼刺激反応が観察されたが、21日以内に消失した(European Chemicals Agency,2018)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼をすすがない場合に眼刺激性が報告されているため、眼をすすがない場合に眼刺激性を誘発する可能性があると考えられます。

ただし、ラウリン酸は主に洗浄製品に使用されるため、リンスオフ製品に配合される場合は安全性に問題がないとも考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987;文献2:2019)によると、

  • [ヒト試験] 46~48人の被検者の無傷および擦過した皮膚に1%ラウリン酸を含む液体石鹸製剤を繰り返し適用(HRIPT)したところ、皮膚刺激および皮膚感作は観察されなかった(Product Investigators,1980)
  • [動物試験] 20匹のモルモットを用いて2.5%ラウリン酸を含むエタノール溶液のMaximization Test(閉塞皮膚感作試験)を実施したところ、皮膚感作性を示さなかった(European Chemicals Agency,2018)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚吸着性について

皮膚吸着性に関しては、まず前提知識としてナトリウムセッケンおよびカリウムセッケンの皮膚吸着に対する影響について解説します。

ラウリン酸ナトリウムセッケンは、洗浄に用いる水にカルシウムイオンが存在する場合(∗7)、セッケンをすすぐ際に皮膚に吸着した脂肪酸酸イオンがカルシウムイオンと不溶性の塩を形成し、これが皮膚に吸着滞在することで皮膚に吸着残留することが明らかにされており(文献13:1992)、この吸着残留と皮膚刺激や肌荒れに深い関連があることが示唆されています(文献14:1986;文献15:1979)

∗7 水の中に溶けているカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの量が少ない(0-100mg/L未満)場合は一般的に軟水とされ、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの量が多いと中硬水(100-300mg/L)、または硬水(300mg/L以上)とされており、日本の水道水は軟水であることから、一般的にカルシウムイオンの量は少ないと考えられます。

この吸着残留量は、すすぎに用いる水のカルシウムイオン濃度に依存して増減することが確認されており、カルシウムイオンをほとんど含まない場合は、吸着残留もほとんどありません(文献13:1992)

次に、アルカリセッケンを含む洗顔料を使用した洗顔においては、カリウムセッケンが皮膚に吸着残留する量が増えるほど洗顔後につっぱり感やかさつき感を感じる傾向にあり、洗顔後のつっぱり感やかさつき感を防ぐためには、皮膚吸着の少ないカリウムセッケンの使用が重要であると考えられます。

1989年にポーラ化成工業によって報告された各カリウムセッケンの選択洗浄性検証によると、

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールエステルおよびコレステロールの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を0.5%濃度の各カリウムセッケン洗浄液300mLで5分,15分および30分間洗浄し、30分後の豚皮に残存した脂肪酸(洗浄に使用したものと同じ脂肪酸)の量を測定したところ、以下のグラフのように、

脂肪酸セッケンによる皮膚洗浄後に残存吸着した脂肪酸量の比較

ラウリン酸およびミリスチン酸で洗浄した場合は、使用した脂肪酸と同じ脂肪酸量が洗浄時間とともに増加したことから、明らかに皮膚吸着を示していると考えられた。

一方で、パルミチン酸およびステアリン酸は残存量が非常に少なく、洗浄時間とともに減少しており、皮膚吸着していないものと考えられた。

また、オレイン酸の場合は、残存量は比較的多いものの洗浄時間とともに減少していることから、皮膚吸着の可能性は低いと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献16:1999)、ラウリン酸のカリウムセッケンは皮膚吸着性が認められています。

そのため、ラウリン酸のカリウムセッケンはカリウムセッケンの中では、かさつき感やつっぱり感を感じる可能性があると考えられます。

ただし、優れた起泡性の観点から、コンセプトや処方の上でラウリン酸カリウムセッケンが欠かせない場合もあり、そういった場合ではコレステロールを併用することで、ラウリン酸の皮膚吸着率が約40%減少することが報告されているため(文献16:1999)、ラウリン酸と一緒にコレステロールが併用されている場合は、皮膚吸着がかなり抑制されると考えられます。

また、洗顔時のすすぎ時間や回数が少なければ、皮膚上に残る界面活性剤量は多くなり、皮膚上のpHも一時的に高くなりますが、洗顔前に水で素洗いし、なおかつよく泡立てて使用することで、すすぎ後の皮膚pHは洗顔前の値に戻り、界面活性剤の皮膚吸着が抑制できることが判明しています(文献17:1996)

∗∗∗

ラウリン酸は界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:界面活性剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Oleic Acid, Laurie Acid, Palmitic Acid, Myristic Acid, and Stearic Acid」International Journal of Toxicology(6)(3),321-401.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2019)「Safety Assessment of Fatty Acids & Fatty Acid Salts as Used in Cosmetics」Final Report.
  3. 日光ケミカルズ(2016)「脂肪酸および有機酸」パーソナルケアハンドブック,33.
  4. 広田 博(1997)「脂肪酸の組成と分類」化粧品用油脂の科学,60-64.
  5. 小野 正宏(1979)「身のまわりの化学”セッケンおよびシャンプー”」化学教育(27)(5),297-301.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「石けん」香粧品科学 理論と実際 第4版,336-348.
  7. “Pubchem”(2019)「Lauric acid」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Lauric-acid> 2019年10月6日アクセス.
  8. 難波 義郎, 他(1955)「洗浄力に寄与する要因の研究(第1報)」油脂化学協会誌(4)(5),238-244.
  9. 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
  10. Luis Mauri, 他(1958)「起ホウ力の評価」油化学(27)(5),104-106.
  11. 大矢 勝, 他(1989)「衣類の泡沫洗浄に関する研究」繊維製品消費科学(30)(2),87-93.
  12. 橋本 文章, 他(1989)「界面活性剤の皮膚への吸着性と洗顔料による選択洗浄性」日本化粧品技術者会誌(23)(2),126-133.
  13. 藤原 延規, 他(1992)「脂肪酸石鹸の皮膚吸着残留」日本化粧品技術者会誌(26)(2),107-112.
  14. M. S. Wortzman, et al(1986)「Soap and detergent bar rinsability」Journal of the Society of Cosmetic Chemists(37),89-97.
  15. G. Imokawa, et al(1979)「Cumulative effect of surfactants on cutaneous horny layers: Adsorption onto human keratin layers in vivo」Contact Dermatitis(5)(6),357-366.
  16. 酒井 裕二(1999)「理想的な洗顏料の開発」日本化粧品技術者会誌(33)(2),109-118.
  17. 高橋きよみ, 他(1996)「肌トラブルを未然に防ぐ洗顔法について」第38回SCCJ研究討論会講演要旨集,44-47.
  18. L. D. Edwards(1939)「The pharmacology of SOAPS」Journal of the American Pharmaceutical Association(28)(4),209-215.
  19. 奥村 秀信(1998)「皮膚刺激感(痛み)について」日皮協ジャーナル(39),78-82.
  20. 岩本 行信(1972)「セッケン」油化学(21)(10),699-704.

スポンサーリンク

TOPへ