ヤシ油とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分
ヤシ油
[化粧品成分表示名称]
・ヤシ油

[医薬部外品表示名称]
・ヤシ油

[慣用名]
・椰子油、ココナッツ油、ココナッツオイル

ココヤシの種子から得られるペースト状の油性成分で、冬は白色~淡黄色の固体となり、夏季は無色~淡黄色の液体となります。

一般的にココナッツオイル(ココナッツ油)と呼ばれることが多いです。

ヤシ油の脂肪酸組成は、

  • ラウリン酸(飽和脂肪酸類):約50%
  • ミリスチン酸(飽和脂肪酸類):15~20%
  • パルミチン酸(飽和脂肪酸類):約10%

となっており、油脂化学便覧によるとヨウ素価12~20となっています。

溶けるのと固まるの境目の温度が室温くらいなので、適度な硬さが調節できる柔らかく感触の良い油として様々な化粧品に使用されています。

ヤシ油とパーム油はどちらもヤシから得られるために混同されやすいのですが、

  • ヤシ油:ココヤシから得られる
  • パーム油:アブラヤシから得られる

と明確な違いがあり、パーム油の脂肪酸組成は、

  • パルミチン酸(飽和脂肪酸類):約50%
  • オレイン酸(不飽和脂肪酸類):約45%
  • リノール酸(不飽和脂肪酸類):約10%
  • ステアリン酸(飽和脂肪酸類):約5%
  • ミリスチン酸(飽和脂肪酸類):約1%

となっており、常温では固体で、組成的にはヤシ油よりも牛脂に近いです。

ヤシ油は、酸化安定性に優れており、伸び・色・においがよく、さっぱりしたベタつきのない使用感を与えるので乳液やクリームによく使用されます。

また、口紅やリップクリームなどのスティック状の製品に配合すると温度耐性のある優れた使用感を得ることができます。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

ヤシ油の配合製品数と配合量の調査(2006-2008年)

ヤシ油の配合製品数と配合量の調査

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ヤシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ヤシ油の現時点での安全性は、皮膚刺激性はほとんどなく、最小限の眼刺激性がありますが、アレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に13%ヤシ油を含む石鹸の1%水溶液をDraize法に基づいて閉塞パッチ下で3週間にわたって適用したところ、最小限の皮膚刺激が記録されたのみで、この製品は通常の使用条件下では刺激性はないと結論付けた
  • [ヒト試験] 72人の被検者に13%ヤシ油を含む石鹸を2週間通常使用してもらったところ、通常使用において気になる皮膚刺激はないと報告された
  • [ヒト試験] 13%ヤシ油を含む石鹸の8%水溶液の皮膚刺激性を評価するために、24時間のパッチ適用1回と6時間のパッチ適用を5日間にわたって4回適用する2つの試験を行った。10人の被検者に行った1つ目の試験では石鹸は適度に刺激性であるが、通常の使用条件下では安全であると結論づけた。2つ目の試験では10人の被検者において最小限の刺激が観察された

と記載されています。

試験結果によると、ほとんどのケースで皮膚刺激生がなく、通常の使用条件下では安全であると結論づけられているため、ごくまれに最小限の皮膚刺激が起こる可能性がありますが、総合的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」(文献1:1986)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの群2グループの結膜嚢に未希釈のヤシ油を注入し、水ですすぐことなく眼刺激スコアを採点したところ、最大110のうち2,1が報告された。これらの結果は眼刺激が最小であることを示した
  • [動物試験] 6匹のウサギの群10グループに未希釈のヤシ油を単回注入し、その後すすぐことなく採点したところ、1つの試験において最大眼刺激スコア110のうち6で軽度の刺激が観察され、4日目までには正常に回復し、別の試験では2/110で最小限の刺激が観察され、3日目までに正常に戻った。8回の試験において無視できる最小の眼刺激と結論づけられた

と記載されています。

試験結果は共通して最小限の眼刺激性が報告されているため、最小限の眼刺激性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に2.5%ヤシ油を含む日焼けバターを誘導期間として24時間パッチを3週間にわたって適用し、6週間目に1回のチャレンジパッチを適用したところ、いずれの被検者も誘導期間およびチャレンジ期間において紅斑反応は観察されなかった

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Cocos nucifera (Coconut) Oil and Related Ingredients」(文献1:2011)によると、

  • [ヒト試験] 12人のコカミドプロピルベタインに対してアレルギー反応のある被検者にいくつかのココナッツ油誘導体を用いてパッチテストを行ない、これらの成分を含む界面活性剤との交差反応性およびアレルギー性によるものかどうかを検査したところ、100%ヤシ油はいずれの被検者においてもアレルゲンではなかった

と記載されています。

試験結果は共通して皮膚感作性が観察されなかったため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、金属アレルギーの方でとくにニッケルアレルギー(∗2)の方は、精製されたヤシ油はだいじょうぶなのですが、未精製および精製度合いが低いヤシ油で皮膚反応が起こる可能性があるので注意が必要です。

∗2 ニッケルというのは金属の種類で、金属アレルギーの多くはニッケル、クロム、コバルトのいずれか、または複数のアレルギーであることが多いです。

なぜかというと、以下の日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン(文献2:2009)をみてもらうとわかるように、

ココナッツのニッケル含有量

Niと書いてあるのがニッケルで、ニッケルというのは金属の一種で画像をみるとニッケルが基準値の60を超えて1,400とダントツに高い数値が表示されています。

精製されたヤシ油の場合は、アレルギーが起こる可能性はほとんどないと思われますが、精製されたものか粗製なのか、または未精製なのか、つまりアレルギーが起こる可能性があるかどうかは、ヤシ油を配合している各メーカーに直接確認してください。

化粧品の説明にアレルギーテスト済みと書かれていても、これは健康な皮膚の方に対してアレルギー反応がでないかどうかを確認するテストなので、アレルギーの方は別途確認する必要があると考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の擦過した背中の皮膚に13%ヤシ油を含む石鹸の3%水溶液0.2mLを6週間にわたって閉塞パッチ適用し、各適用後に試験部位を検査用ランプに45分曝露し、UVAに曝した後空冷Kromayerランプで最小紅斑線量(MED)の2/3を照射したところ、光毒性の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 10人の被検者の擦過した背中の皮膚に誘導期間として13%ヤシ油を含む石鹸の3%水溶液0.2mLを24時間閉塞パッチで週3回3週間にわたって適用し、各適用後に試験部位にウッドランプを40分間、サンランプを15分間
    照射した。2週間の無処置期間を経てチャレンジパッチを同じ部位に適用したところ、10の被検者のいずれも光毒性の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 52人の被検者の腕に13%ヤシ油を含む石鹸の1%および3%水溶液0.4mLを24時間閉塞パッチで週に3回3週間にわたって適用し、適用後24時間で30分間日光に曝した。1週間の無処置期間の後、同じ部位にチャレンジパッチを適用し、24時間後に日光に曝露したところ、光感作性は認められなかった

と記載されています。

試験結果ではいずれも光毒性および光感作は認められていないため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ヤシ油 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ヤシ油は毒性なし(∗3)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ヤシ油はベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818609141927> 2017年11月20日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2011)「Final Report on the Safety Assessment of Cocos nucifera (Coconut) Oil and Related Ingredients」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1091581811400636> 2017年11月20日アクセス.
  3. 日本皮膚科学会(2009)「接触皮膚炎診療ガイドライン」, <http://www.jsdacd.org/html/contact_dermatitis_guideline.pdf> 2017年11月20日アクセス.

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