ヤシ油とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 界面活性
ヤシ油
[化粧品成分表示名称]
・ヤシ油

[医薬部外品表示名称]
・ヤシ油

ヤシ科植物ココヤシ(学名:Cocos nucifera)の果実(ココナッツ)から得られる植物油脂です。

ココヤシは、原産地は不明ですが熱帯アジアとされており、果実はココナッツとして有名で、単にヤシといえばココヤシを指し、世界中の熱帯地域で栽培されています。

ヤシ油は非常に利用価値の高い植物であり、日本では年間約5万トンが消費されており、その約60%が洗剤・石鹸などの工業原料として、約40%が食用として用いられます。

ヤシからつくられる油脂の生産量はアブラヤシ由来のパーム油およびパーム核油のほうが多く、これらをヤシ油と呼ぶこともあるので混同しやすいのですが、化粧品成分においてヤシ油というとココヤシ由来のものになります。

ヤシ油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 6.9
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 0.2
カプロン酸 飽和脂肪酸 C6:0 0.4
カプリル酸 飽和脂肪酸 C8:0 7.7
カプリン酸 飽和脂肪酸 C10:0 6.2
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 47.0
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 18.0
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 9.5
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 2.9

このような種類と比率で構成されています(文献3:1990)

ラウリン酸含有量が多いのが特徴で、ラウリン酸が約47%、ミリスチン酸が約17%を占めており、また炭素数12以下(C12以下)の飽和脂肪酸を含んでいるのも特徴のひとつで、ヤシ油の飽和脂肪酸は90%以上を占め、これらの二重結合は0であり、酸化安定性はかなり高いと考えられます。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
7-16 不乾性油 20-28

一例としてこのように記載されていますが(文献4:1990)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、融点は20-28℃であるため、日本おいては、冬など20℃以下の気温ではラードのような半固体ですが、夏など20℃を超えてくると液体化し始めます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、固形石鹸、洗浄製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに使用されます(文献6:2016)

鹸化による界面活性作用

鹸化による界面活性作用に関しては、まず化粧品における鹸化(けんか)および鹸化による界面活性作用について解説します。

化粧品における鹸化とは、植物油脂にアルカリ(水酸化Naまたは水酸化K)を加えて石ケンとグリセリンに加水分解する化学反応のことを指します。

一例として、パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ果実油を使用して各アルカリと反応させた場合、

パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ果実油 + 水酸化Na → 石ケン素地 + グリセリン
パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ果実油 + 水酸化K → カリ石ケン素地 + グリセリン

という反応になります。

成分表示一覧には、

  • パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ果実油、水酸化Na
  • パーム油、パーム核油、ヤシ油、オリーブ果実油、水酸化K

このように反応前の成分がすべて記載されることもありますし、また、

  • 石ケン素地、グリセリン
  • カリ石ケン素地、グリセリン

このように反応後の成分がすべてまとめて表示されることもあります。

植物油脂を水酸化Naで反応させた場合は石ケン素地、植物油脂を水酸化Kで反応させた場合はカリ石ケン素地と記載され、グリセリンは反応の副産物ですが、除去されなければ一緒に記載されます。

一般に水酸化Naで鹸化させた場合(石ケン素地の場合)は、硬くて光沢のない乳化物となり、水酸化Kで鹸化させた場合(カリ石ケン素地の場合)は、硬さが良好で光沢のある乳化物となります。

石ケン素地およびカリ石ケン素地は、界面活性作用を有しますが、界面活性剤は以下のように分類されており、

界面活性剤の分類

石ケン素地およびカリ石ケン素地は、親水基にマイナスイオンを有したアニオン界面活性作用であり、アルキル基の短い(炭素数12-16)脂肪酸で構成されている植物油脂ほど水によく溶ける親水性で泡立ちやすいことが特徴です(文献5:1990)

その点でヤシ油はラウリン酸約50%、ミリスチン酸約20%を占めており、洗浄性および溶解性は植物油中でかなり高く、主に固形石鹸の原料や洗浄基剤として汎用されています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007-2008年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ヤシ油の配合製品数と配合量の調査(2007-2008年および2010年)

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ヤシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ヤシ油の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:リンスオフ使用時においてほとんどなし
  • 眼刺激性:最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986;文献2:2017)によると、

  • [ヒト試験] 106人の被検者に13%ヤシ油を含む固形石鹸の1%水溶液をDraize法に基づいて3週間にわたって閉塞パッチ適用したところ、最小限の皮膚刺激が記録されたのみで、この製品は通常の使用条件下では皮膚刺激性はないと結論付けた(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 72人の被検者に13%ヤシ油を含む固形石鹸を2週間通常使用してもらったところ、通常使用において気になる皮膚刺激はないと報告された(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 13%ヤシ油を含む石鹸の8%水溶液の皮膚刺激性を評価するために、24時間のパッチ適用1回と6時間のパッチ適用を5日間にわたって4回適用する2つの試験を行った。10人の被検者に行った1つ目の試験では石鹸は適度に刺激性であるが、通常の使用条件下では安全であると結論づけた。2つ目の試験では10人の被検者において最小限の刺激が観察された(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に2.5%ヤシ油を含む日焼けバターを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応は観察されなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.15%ヤシ油を含むスカルプコンディショナーを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Clinical Research Laboratories,2005)
  • [ヒト試験] 222人の被検者に31%ヤシ油を含むリップバーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者に一時的な±の反応が観察されたが、それ以降は皮膚反応はみられず、皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Harrison Research Laboratories,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚に塗布した場合に非刺激-最小限の皮膚刺激が報告されていますが、ヤシ油は主にリンスオフ製品(洗い流し製品)に配合され、リンスオフ使用においては皮膚刺激性なしと報告されており、また皮膚感作性なしと報告されているため、一般的にリンスオフ使用時において皮膚刺激性はほとんどなく、また皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの群2グループの結膜嚢に未希釈のヤシ油を注入し、水ですすがず、眼刺激スコア(0-110)を採点したところ、2および1であり、眼刺激が最小限であった(CTFA,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、最小限の眼刺激性が報告されているため、最小限の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1986)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の擦過した背中の皮膚に13%ヤシ油を含む固形石鹸の3%水溶液0.2mLを6週間にわたって閉塞パッチ適用し、各適用後に試験部位を検査用ランプに45分曝露し、UVAに曝した後空冷Kromayerランプで最小紅斑線量(MED)の2/3を照射したところ、光毒性の兆候は観察されなかった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の擦過した背中の皮膚に13%ヤシ油を含む固形石鹸の3%水溶液0.2mLを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も光毒性の兆候は観察されなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に13%ヤシ油を含む固形石鹸の1%および3%水溶液0.4mLを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、光感作性は認められなかった(CTFA,1976)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

∗∗∗

ヤシ油はベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Coconut Oil, Coconut Acid, Hydrogenated Coconut Acid, and Hydrogenated Coconut Oil」International Journal of Toxicology(5)(3),103-121.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,104-110.
  4. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「アニオン界面活性剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,133-136.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,7.

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