モモ核油とは…成分効果と毒性を解説



・モモ核油
[慣用名]
・ピーチカーネルオイル
バラ科植物モモ(学名:Prunus Persica 英名:Peach)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。
モモは中国北西部を原産とし、モモの種子は桃仁(とうにん)と呼ばれ、日本には古くから伝えられており、弥生時代の遺跡からもモモの種子が発見されています(文献5:2011)。
モモ核油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
---|---|---|---|
オレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:1 | 74.8 |
リノール酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:2 | 15.6 |
パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 7.2 |
ステアリン酸 | 飽和脂肪酸 | C18:0 | 2.3 |
このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)。
オレイン酸が約75%、リノール酸が約15%を占めており、二重結合が2つ以上の不飽和脂肪酸であるリノール酸の含有量がやや高いため、酸化安定性はやや低いと考えられます。
ヨウ素価は、
ヨウ素価 | ヨウ素価による分類 |
---|---|
100-110 | 半乾性油 |
一例としてこのように記載されており(文献3:1997)、100を越えることがある半乾性油のため、いくらかの乾燥性は有しますが、乾油性よりは劣ります。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップ製品、ヘアケア製品、洗顔料&洗顔石鹸などに幅広く使用されます(文献3:1997;文献4:2016)。
皮膚柔軟によるエモリエント作用
皮膚柔軟によるエモリエント作用に関しては、オレイン酸が約75%、リノール酸が約15%を含有し、アンズ核油と酷似した脂肪酸組成で、肌なじみおよび伸びが良く、軽い使用感を付与するエモリエント剤として幅広く使用されています(文献3:1997;文献4:2016)。
1983年にコーセーによって報告された油脂の抱水力比較によると、
油性成分 | 抱水力(%) |
---|---|
アボカド油 | 5 |
オリーブ果実油 | 8 |
ブドウ種子油 | 14 |
サフラワー油 | 3 |
コムギ胚芽油 | 40 |
モモ核油 | 10 |
ホホバ種子油 | 5 |
スクワラン | 0 |
モモ核油は、いくらかの抱水力をもっており、湿潤性を有していることが示された。
このような検証結果が明らかにされており(文献6:1983)、モモ核油に皮膚柔軟によるエモリエント作用が認められています。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
モモ核油の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 222人の被検者に24%モモ核油を含むリップバーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、2人の被検者において誘導期間中に一時的な±反応が観察されたが、ほかのいずれの被検者も皮膚反応は観察されず、モモ核油は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論づけられた(Harrison Research Laboratories,2007)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
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モモ核油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
- 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
- 広田 博(1997)「不乾性油」化粧品用油脂の科学,18-26.
- 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,5.
- 鈴木 洋(2011)「桃仁(とうにん)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,342.
- 足立 佳津良(1983)「エモリエント剤―最近10年の進歩と発展」Fragrance Journal(62)(5),46-49.
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