モクロウとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分
モクロウ
[化粧品成分表示名称]
・モクロウ

[医薬部外品表示名称]
・モクロウ

[慣用名]
・木蝋、ジャパンワックス

ウルシ科植物ハゼノキ(学名:Rhus Succedanea = Toxicodendron succedaneum 英名:japan wax tree)の果実から得られるロウ様の植物油脂(∗1)です。

∗1 モクロウは化学構造上は明らかに脂肪(植物脂)ですが、融点が高く常温では固体であり、ロウ様の外観から慣用的にロウと呼ばれています。

ハゼノキは、東南アジアから東アジアの温暖な地域に自生しており、日本には果実からモクロウを採取する資源作物として、江戸時代頃に琉球から持ち込まれ、和ロウソクだけでなく、びんつけ、艶(つや)出し剤や化粧品の原料として幅広く使われ、このため商品作物として明治時代まで西日本各地で盛んに栽培されていました。

モクロウの脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%) 備考
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 3.5  
エイコサジエン酸 不飽和脂肪酸 C20:2 7.6 エイコサジエン酸とドコサジエン酸を合わせて日本酸と呼び、これらの合計で7.6%
ドコサジエン酸 不飽和脂肪酸 C22:2 7.6
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 0.2  
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 70.3  
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 13.0  

このような種類と比率で構成されています(文献2:2012)

パルミチン酸約70%、ステアリン酸約10%、日本酸を約5%含有しているのが特徴で、パルミチン酸およびステアリン酸は飽和脂肪酸で二重結合が0であり、これらが80%以上を占めるため、総合的に酸化安定性は高いと考えられます。

また日本酸は含有量は少ないですが、組織が緻密で粘り強い性質を付与しており、日本酸の存在がモクロウの特性に多大な影響を与えていると考えられています(文献5:1983)

ヨウ素価および融点(∗2)は、

∗2 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
3-51 不乾性油 49-56

一例としてこのように記載されていますが(文献3:1990)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は49-56℃と高く、固体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ポマード、スティック状メイクアップ化粧品などに使用されます(文献4:1997;文献5:1983)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、植物脂としては融点が高く、ロウのような性質を示すため、従来は口紅やポマード、スタイリング剤などに用いられていましたが、最近はその粘り強い性質と皮膚になじむ特性からアイブロウやアイライナーに使用されています(文献4:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

モクロウの配合製品数と配合量の比較調査結果(1984年および2002-2003年)

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モクロウの安全性(刺激性・アレルギー)について

モクロウの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 56人の女性被検者の背中に50%モクロウを含むワセリンと36%までのモクロウを含む3つの製品を対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激または感作反応は観察されなかった(University of Carifornia at Los Angels,1979)
  • [ヒト試験] 53人の女性被検者に2.5%モクロウを含む製品を対象に試験したところ、いずれの被検者も刺激またはアレルギー反応を示さなかった(University of Carifornia at Los Angels,1980)
  • [ヒト試験] 50人の女性と3人の男性、そして別の56人女性被検者に36%モクロウを含む2つの製品を試験したところ、どちらの製品でもいずれの被検者も刺激やアレルギー反応は認められなかった(University of Carifornia at Los Angels,1979;1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に35%モクロウを含む製品0.1gを点眼し、3匹のウサギは点眼後に20mLの水ですぐにすすぎ、残りの6匹の眼はすすがず、点眼後24,48および72時間後に評価したところ、1つの製品は眼の洗浄の有無にかかわらず刺激がなく非刺激剤とみなされた。2つ目の製品は洗浄していない眼において刺激スコア0.3の最小限の刺激を生じ、洗浄した眼では刺激は認められなかった。この製品は最初の製品同様に無刺激剤と考えられた(ABSL,1979)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼にモクロウ0.1mLを点眼し、1,2,3,4および7日後に評価したところ、モクロウはいずれのウサギの眼にも刺激を示さなかった(LL,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激なしと報告されているため、眼刺激はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

モクロウはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Candelilla Wax, Carnauba Wax, Japan Wax, and Beeswax」International Journal of Toxicology(3)(3),1-41.
  2. 日本油化学会編集(2012)「主要油脂・脂質の脂肪酸組成-植物」油脂・脂質・界面活性剤データブック,59-62.
  3. 日本油化学協会編集(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
  4. 広田 博(1997)「モクロウ」化粧品用油脂の科学,29.
  5. 府瀬川 健蔵(1983)「木ろう」ワックスの性質と応用,24-29.

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