ミリスチン酸イソプロピルとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分
ミリスチン酸イソプロピル
[化粧品成分表示名称]
・ミリスチン酸イソプロピル

[医薬部外品表示名称]
・ミリスチン酸イソプロピル

[慣用名]
・IPM

ヤシ油やパーム油から得られる高級脂肪酸であるミリスチン酸と石油から得られる低級アルコールであるイソプロパノールを合成した無色透明で粘度の低い液体です。

IPMの名称でよく知られており、化粧品として使用される代表的な高級脂肪酸アルコールエステルです。

イソプロピルミリスタートと呼ばれることもあります。

化粧品への配合の目的は、皮膚に対して浸透性がよくソフトでサラッとした感触を与えるので、化粧水やクリームなどに油性成分のひとつとして使用することで脂っぽい感じを与えることなく、肌や毛髪にエモリエントな感じを与えるので使用感の向上になります。

また、エタノールに比較的よく溶けるので、ヘアトニックやシェービングローションなどのアルコール性ローションに配合すると、適当な油性が皮膚や頭髪に柔軟な感触を与えます。

口紅やファンデーションなどメイクアップ化粧品に配合する場合は、溶解剤として品質を均一にする目的が多いです。

実際にどのような種類にどれくらい配合されているのかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

ミリスチン酸イソプロピルの配合状況の調査

2007年と比べて2013年は製品数は微増となっており、主な配合はスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品が多そうですが、ヘアケアのリンスオフ製品も微増となっており、幅広い製品に配合されているのがわかります。

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ミリスチン酸イソプロピルの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ミリスチン酸イソプロピルの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、重大なアレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 多数の被検者に20%ミリスチン酸イソプロピルを含むワセリンを484時間閉塞パッチ下で適用したところ、刺激は観察されなかった
  • [ヒト試験] 9人の被検者に52~58%ミリスチン酸イソプロピルを含むエアゾール制汗剤を24時間閉塞パッチ下で1日おきに3回適用したところ、刺激は観察されなかった
  • [ヒト試験] 10人の男女に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含むバスオイル0.3mLを閉塞下で10日間毎日繰り返し塗布したところ、皮膚刺激はなかった
  • [ヒト試験] 50人の被検者に43~47%ミリスチン酸イソプロピルを含むエアロゾル制汗剤を用いて2つの試験を実施した。ひとつは単一の24時間パッチテストで、テストを実施したところ、6つの疑わしい紅斑が観察された。もうひとつは、38人の被検者に対して15%ミリスチン酸イソプロピルを含むフェイシャルマスクを24時間テストしたところ、軽度の刺激が1例と疑わしい紅斑が2例を生じた
  • [ヒト試験] 25人の被検者に希釈されていないミリスチン酸イソプロピルを21日間毎日塗布したところ、非常にわずかな刺激しか生じず、その刺激スコアはベビーオイルよりも少なかった
  • [ヒト試験] 9人の被検者(男性4人、女性5人)の背中に52~58%ミリスチン酸イソプロピルを含むエアロゾル制汗剤0.3mLを21日間毎日適用したところ、色素沈着の変化のエビデンスはなく、わずかな刺激しか生じなかった
  • [ヒト試験] 13名の被検者に15%ミリスチン酸イソプロピルを含むフェイシャルマスク製剤を21日間毎日適用したところ、累積刺激スコア(最大520)は50で、最小の刺激を示した

と記載されています。

試験は濃度にかかわらず、最小限の皮膚刺激ありまたは皮膚刺激なしという結果で共通しており、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」(文献1:1982)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに100%ミリスチン酸イソプロピルを点眼したところ、眼刺激スコアは24,48および72時間後で0.0~1.0で、最小限の刺激だった
  • [動物試験] 3匹のウサギに100%ミリスチン酸イソプロピルを3日間毎日点眼したところ、眼刺激性は示さなかった
  • [動物試験] 3匹のウサギに52~58%ミリスチン酸イソプロピルを点眼してすすがないままにしたところ、24時間で眼刺激スコア11で、軽度の眼刺激性を示した。また同様の試験で点眼の4秒後に水で眼をすすいだところ、眼刺激スコア9で、最小の刺激性を示した
  • [動物試験] 6匹のウサギに42.9%ミリスチン酸イソプロピルを点眼してすすがないままにしたところ、最小限の眼刺激性を示した
  • [動物試験] ウサギに15%ミリスチン酸イソプロピルを点眼したところ、刺激の兆候を示さなかった

と記載されています。

試験では濃度にかかわらず、最小限の眼刺激性または眼刺激性なしという結果で共通しているため、最小限の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 25名のボランティアの前腕の手のひら側の皮膚に誘導期間として20%ミリスチン酸イソプロピルを48時間パッチを5回繰り返し適用し、10日間の無処置期間を経てチャレンジパッチを適用したところ、感作反応はなかった
  • [ヒト試験] 25人の被検者(男性8人、女性17人)に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含むバスオイル製剤を適用したところ、誘導パッチおよびチャレンジパッチのいずれも反応は観察されなかった
  • [ヒト試験] 320人の被検者に52~58%ミリスチン酸イソプロピルを含むエアロゾル制汗剤を適用したところ、感作を示す反応は生じなかった
  • [ヒト試験] 99人の被検者に15%ミリスチン酸イソプロピルを含むフェイシャルマスク反復パッチ適用したところ、わずかな炎症を引き起こしたが、感作性の反応はなかった
  • [ヒト試験] 30人の女性に12個の異なる女性用スプレーの成分を個々にパッチ試験したところ、1人の女性がミリスチン酸イソプロピルに強い陽性反応を示した

と記載されています。

試験結果では1例のみ強い陽性反応が示されていますが、それ以外では感作反応がなく、国内でも重大なアレルギーの報告はないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者(男性1人、女性9人)に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含むバスオイルを閉塞パッチ下で5μl/c㎡で適用し、UVB放射を除去してUVAの放射照度を25~30mW/c㎡に設定したキセノンソーラーシミュレーターで6および24時間後に処置部位を照射したところ、光毒性の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 25人の被検者(男性7人、女性18人)に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含むバスオイルを閉塞パッチ下で5μl/c㎡を24時間適用し、続いてキセノンソーラーシミュレーターで最小紅斑線量の照射を週に2回3週間にわたって繰り返した。最後の照射から10日後にUVB放射を除去してUVAの放射照度を25~30mW/c㎡に設定したキセノンソーラーシミュレーターで5分間照射したところ、光感作性の兆候は観察されなかった

と記載されています。

試験結果では試験部位の照射に対して光毒性および光感作性の兆候はないため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ミリスチン酸イソプロピル 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ミリスチン酸イソプロピルは毒性なし(∗2)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ミリスチン酸イソプロピルはベース成分とエモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818209021261> 2017年10月21日アクセス.

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