ミリスチン酸イソプロピルとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分 感触改良 溶剤 光沢
ミリスチン酸イソプロピル
[化粧品成分表示名称]
・ミリスチン酸イソプロピル

[医薬部外品表示名称]
・ミリスチン酸イソプロピル

化学構造的に低級アルコール(一価アルコール)の一種であるイソプロパノールのヒドロキシ基(水酸基)に高級脂肪酸の一種であるミリスチン酸のカルボキシル基を結合した脂肪酸エステルです。

ミリスチン酸イソプロピルの皮膚吸収性は、

様々な厚さのヒト表皮およびヒト真皮を用いてミリスチン酸イソプロピルの皮膚吸収性・皮膚透過性をin vitro試験において検討したところ、ヒト表皮および真皮には検出されず、その大部分は角質層に保持されていた

このような研究結果が報告されており(文献2:2009)、ミリスチン酸イソプロピルは角質層には浸透しますが、角質層より下層の表皮および真皮にはにはほとんど吸収されないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、ヘアケア製品、洗浄製品、練り香水などあらゆる製品に汎用されています(文献1:1982)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、他の油剤との相溶性が良好であり、低粘度で油性感が少なく、さっぱりした軽い感触を付与するため、オイル製品の基剤、リキッド系メイクアップ製品、スキンケア系乳化物などに汎用されています(文献3:2016;文献4:2012)

感触改良

感触改良に関しては、油性感が少なく、粘度の低い軽い質感の油であり、ソフトでさっぱりした感触を付与するため、オイル製品の基剤、リキッド系メイクアップ製品、スキンケア系乳化物などの基剤または基剤の感触改良剤として汎用されています(文献4:2012)

溶剤

溶剤に関しては、溶剤性に優れており、色素や香料の溶解剤として、またロウと非極性油との混和剤として品質を均一にする目的で配合されます(文献3:2016;文献4:2012)

毛髪に対するツヤ感付与

毛髪に対するツヤ感付与に関しては、ヘアクリームやヘアオイルの一部に使用することで、油っぽい感じを与えることなく毛髪表面にエモリエント様のツヤを付与します(文献3:2016;文献4:2012)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ミリスチン酸イソプロピルの配合製品数と配合量の調査(2007-2008年および2012-2013年)

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ミリスチン酸イソプロピルの安全性(刺激性・アレルギー)について

ミリスチン酸イソプロピルの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 15人の被検者に100%ミリスチン酸イソプロピルを対象に24時間閉塞パッチにて皮膚刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激性を示さなかった(Avon,1971)
  • [ヒト試験] 9人の被検者の3ヶ所に52-58%ミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を24時間閉塞パッチ適用したところ、いずれの被検者も皮膚刺激性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の10ヶ所に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を24時間閉塞パッチ適用したところ、いずれの被検者も皮膚刺激性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に100%ミリスチン酸イソプロピルを対象に21日間皮膚累積刺激性試験を実施したところ、最小限の累積刺激性が示され、その刺激性はベビーオイルよりも低かった(Avon,1975;Hill Top Research,1976)
  • [ヒト試験] 9人の被検者に52-58%ミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を対象に21日間皮膚累積刺激性試験を実施したところ、最小限の累積刺激性が示された(Hill Top Research,1978)
  • [ヒト試験] 13人の被検者に15%ミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を対象に21日間皮膚累積刺激性試験を実施したところ、最小限の累積刺激性が示された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚一次刺激性なしと報告されており、また累積刺激性は最小限と報告されていることから、皮膚一次刺激性はほとんどなく、皮膚累積刺激性は最小限の累積刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%をミリスチン酸イソプロピルを点眼し、点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、最小限の眼刺激性であると結論付けられた(Avon,1972;1976;Kolmar Research Center,1967)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に100%をミリスチン酸イソプロピルを3日間毎日点眼し、最初の点眼から24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、眼刺激性は観察されなかった(Avon,1970;1971)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に52-58%をミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を点眼し、3匹の眼は点眼から4秒後にすすぎ、残りの3匹は眼をすすがず、眼刺激性を24,48および72時間後に評価したところ、非洗顔群では24時間で軽度の眼刺激が観察され、洗眼群では24時間で最小限の眼刺激性が観察されたが、48時間では両群で刺激性は消失した(Bio Dynamics,1978)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に42.9%をミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を点眼し、3匹の眼は点眼から4秒後にすすぎ、残りの6匹は眼をすすがず、眼刺激性を評価したところ、両群で最小限の眼刺激性が示された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] ウサギ(数不明)の片眼に15%をミリスチン酸イソプロピルを含む製剤を点眼し、点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激性の兆候は示さなかった(Avon,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-最小限の眼刺激性が報告されていることから、非刺激-最小限の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に20%ミリスチン酸イソプロピルを含む軟膏を対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった(A M Kligman,1974)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含む製品を対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 320人の被検者に52-58%ミリスチン酸イソプロピルを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、一部の被検者において最小限の皮膚刺激が観察されたが、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 99人の被検者に15%ミリスチン酸イソプロピルを含む製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、一部の被検者において最小限の皮膚刺激が観察されたが、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性はなしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1982)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含む製品を対象にUVAに対する光毒性試験を実施したところ、いずれの被検者も光毒性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に42.9%ミリスチン酸イソプロピルを含む製品を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も接触性光感作性を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性はなしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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ミリスチン酸イソプロピルはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1982)「Final Report on the Safety Assessment of Myristyl Myristate and Isopropyl Myristate」International Journal of Toxicology(1)(4),55-80.
  2. P Liu, et al(2009)「Effects of Isopropanol–Isopropyl Myristate Binary Enhancers on In Vitro Transport of Estradiol in Human Epidermis: A Mechanistic Evaluation」Journal of Pharmaceutical Sciences(98)(2),565-572.
  3. 日光ケミカルズ(2016)「エステル」パーソナルケアハンドブック,62-86.
  4. 鈴木 一成(2012)「ミリスチン酸イソプロピル」化粧品成分用語事典2012,72.

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