ミリスチルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 乳化 泡立ち改良 感触改良
ミリスチルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ミリスチルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ミリスチルアルコール

ヤシ油またはパーム核油を還元して得られる炭素数14の一価アルコールである高級アルコール(脂肪族アルコール)です。

一価アルコールとは、化学的に-OH(水酸基:ヒドロキシ基)が一つ結合したアルコールで、2つ以上結合したものは多価アルコールと呼ばれ(n個結合したものはn価アルコールとも呼ばれる)、高い吸湿性と保水性を有しているため化粧品に汎用されている保湿剤です。

化学的に水酸基(ヒドロキシ基:-OH)を1つだけもったアルコール(一価アルコール)の中で、炭素が6個以下のアルコールは低級アルコールに分類され、炭素数が少ないほど親水性が強まり(親油性が弱まり)ます。一方で炭素が8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類され、炭素数が多いほど親油性が強まり(親水性が弱まり)ます。

高級アルコールという分類なので誤解されやすいですが、一般にアルコールと呼ばれる物質は炭素数2の一価アルコールで低級アルコールであるエタノール(エチルアルコール)のみを指し、高級アルコールは物質として別物です。

ミリスチルアルコールの物性(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

炭素数 分子量 融点(℃) 比重(20℃) 屈折率(20℃)
14 214.43 37.9 0.8355 1.4470

このように報告されています(文献3:1990)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、洗顔料&洗眼石鹸、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、ヘアケア製品などに幅広く使用されています(文献1:1988;文献2:2016)

乳化補助

乳化補助に関しては、化学構造的にC14(炭素数14)の直鎖構造であり、その末端にある水酸基(OH)が親水活性を与え、油相と水相の界面においてその界面膜を安定化させる乳化安定助剤として働くため、乳化物の乳化を安定化する目的でクリームや乳液に使用されます(文献4:1997)

泡立ち改良

泡立ち改良に関しては、他の高級アルコールに比べてソフトな感触の細かい泡がつくれるので、シャンプー、ボディソープ、洗顔料などに使用されます。

感触改良

感触改良に関しては、適度なエモリエント性と乳化補助による粘稠度(∗2)の調整効果があり、クリームに使用されています(文献1:1988)

∗2 稠度(ちょうど)とは、ペースト状物質の硬さ・軟らかさ・流動性などを意味します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1982年および2005-2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ミリスチルアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1982年および2005-2006年)

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ミリスチルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ミリスチルアルコールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを4週間にわたって適用したところ、皮膚刺激の兆候はみられなかった(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 51人の被検者に0.25%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを1ヶ月間毎日自宅使用してもらったところ、1人の被検者は最初の使用1日後にヒリヒリ感を報告したが、ほかの被検者はいずれも皮膚刺激性はなかった(CTFA,1983)
  • [ヒト試験] 229人の被検者に0.25%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応は観察されず、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(CTFA,1983)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に0.1%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、刺激性または感作性はなかった(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に0.1%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、刺激性または感作性はなかった(CTFA,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に3%ミリスチルアルコールを含む制汗剤0.1mLを点眼し、3匹は点眼2秒後に眼をすすぎ、次の3匹は点眼4秒後に眼をすすぎ、残りの3匹は眼をすすがず、Draize法に基づいて1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激スコア(0-110)を評価したところ、および2秒後に眼をすすいだ3匹は点眼1時間後の平均眼刺激スコアが19.7であったが、4日目までにすべて消失した。4秒後に眼をすすいだ3匹は点眼1時間後の平均眼刺激スコアが21.3であったが、4日目までにすべて消失した。眼をすすがなかった3匹は点眼1時間後の平均眼刺激スコアが42.3であったが、7日目までにすべて消失した。この結果から3%ミリスチルアルコールを含む制汗剤は洗眼した場合は軽度の眼刺激剤であり、非洗眼の場合は中程度の眼刺激剤であると結論づけられた(CTFA,1963)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿ローション0.1mLを点眼し、眼刺激反応を1,2および3日後に評価したところ、眼刺激反応は観察されず、非刺激剤であると結論付けられた(CTFA,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-中程度の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は非刺激-中程度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者に0.8%ミリスチルアルコールを含む保湿ローションを対象にした光感作性試験を実施したところ、光感作剤ではなかった(CTFA,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ミリスチルアルコールはベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1988)「Final Report on the Safety Assessment of Cetearyl Alcohol, Cetyl Alcohol, lsostearyl Alcohol, Myristyl Alcohol, and Behenyl Alcohol」International Journal of Toxicology(7)(3),359-413.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブック,47.
  3. 日本油化学協会編集(1990)「アルコール,グリコール,エーテル」油化学便覧 改訂3版,176-184.
  4. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.

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