ミネラルオイルとは…成分効果と毒性を解説




・ミネラルオイル
[医薬部外品表示名称]
・流動パラフィン
石油を精製して得られる、炭素数C₁₅-C₃₀の常温で液体の炭化水素の混合物(∗1)です。
∗1 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物であり、化学的に極めて不活性な物質です。
粘度によって軽質流動パラフィンと重質流動パラフィンに大別され、分子量はそれぞれ260-280または475-500の範囲です(文献2:1997)。
常温では非揮発性および非水溶性であり、通常の使用条件では酸化されず、経時変色もない、化学的・生物学的に安定した物質です(文献2:1997)。
一般的にミネラルオイルは工業分野では鉱油と呼ばれますが、工業分野で使用される鉱油はほとんど精製されておらず、一方で化粧品分野や医薬品分野で使用されるミネラルオイルは高純度に精製されており、皮膚に塗布しても問題ない「化粧品グレード」以上のものが使用されます。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:2016;文献2:1997)。
エモリエント作用・油性基剤
エモリエント作用に関しては、不活性であり、耐水性および潤滑性を有し、乳化特性も良好であるため、乳液やクリーム系のスキンケア化粧品、ボディオイル、メイクアップ化粧品などに油性基剤として使用されます(文献2:1997)。
また不活性で皮膚浸透性がほとんどないため、クレンジング剤やアイメイクアップリムーバーなどの基剤としても用いられます(文献2:1997)。
2008年にJohnson & Johnsonがミネラルオイルのエモリエント性(閉塞性)を検証したところ、ホホバ種子油およびアーモンド油などの植物油と同等のエモリエント性であることが明らかにされており(文献3:2008)、また2012年にドイツのシャリテベルリン大学皮膚科で実施された試験でも同様の結果が報告されています(文献4:2012)。
感触改良
感触改良に関しては、潤滑性・展延性(∗2)を有しているため、クリームの油性基剤として使用されます(文献2:1997)。
∗2 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。
ミネラルオイルの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 50年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性:ほとんどなし(データなし)
- 皮膚浸透性:ほとんどなし(角質上層まで)
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
医薬部外品原料規格2006に収載されており、また化学的および生物学的に不活性であり、50年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
1970年代には精製度の低い鉱物油中の不純物が原因で、油やけ(∗3)が起こり、色素沈着などの皮膚トラブルが発生したことがありましたが、現在では精製技術が進み、安全性の高いものが使用されています(文献5:-)。
∗3 油やけとは、鉱物油中の不純物が原因で皮膚に刺激を与えることによる刺激症状のことです。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚浸透性について
- [ヒト試験] 9人の成人ボランティアおよび7人の乳児の前腕にホホバ油、アーモンド油およびミネラルオイルを局所塗布し、塗布30分前、塗布30分後および90分後に皮膚浸透性を評価したところ、塗布30分後において角質層上部にわずかな浸透がすべてのオイルで観測され、オイルによる浸透量の有意差はなく、それらの浸透量は90分後でも同じであった。また成人と乳児による浸透量の差もなかった
ドイツのシャリテベルリン大学皮膚科の試験データ(文献4:2012)によると、
- [ヒト試験] 6人の健常な皮膚を有するボランティアに4つの植物油およびミネラルオイルの皮膚浸透性を評価したところ、ミネラルオイルおよび植物油は角質の上層のみに浸透し、角質より下層へは浸透しなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、ミネラルオイルは他の植物オイルと同様に角質層にとどまっていると報告されているため、角質層以下への浸透はほとんどないと考えられます。
∗∗∗
ミネラルオイルはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。
それぞれの成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブック,28.
- 広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
- Georgios N. Stamatas, et al(2008)「Lipid uptake and skin occlusion following topical application of oils on adult and infant skin」Journal of Dermatological Science(50)(2),135-142.
- A. Patzelt, et al(2012)「Lipid uptake and skin occlusion following topical application of oils on adult and infant skin」Skin Research & Technology(18)(3),364-369.
- 花王株式会社(-)「鉱物油はシミや油やけの原因になるの?」, <https://www.kao.com/jp/qa_cate/lotion_04_02.html> 2019年11月25日アクセス.
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