ミツロウとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 感触改良
ミツロウ
[化粧品成分表示名称]
・ミツロウ

[医薬部外品表示名称]
・ミツロウ、サラシミツロウ

[慣用名]
・ビーズワックス

ミツバチ科動物ミツバチ(学名:Apis mellifera 英名:Honey bee)の巣から得られる動物性固体ロウです。

ミツロウが得られるミツバチには多くの種類が世界各地に分布しており、大別するとヨーロッパ系と東洋系に分類され、とくに媒体に記載がない限り、一般的にはヨーロッパ系のApis melliferaが用いられています。

採取されたミツロウは、ハチミツの芳香を有する黄褐色-褐色の粘着性のロウ様固体ですが、精製・漂白することによりほとんど無臭に近い淡黄色-白色のロウとなります。

精製・漂白前のミツロウを黄ロウ、精製・漂白したミツロウを白ロウまたはサラシミツロウと呼びますが、化粧品に使用されるミツロウとしてはほとんど精製・漂白されたサラシミツロウが使用されています(文献4:1997)

ただし、オーガニック系やミツロウそのものの機能を活かすようなコンセプトの場合は未精製または粗製の黄ロウが使用されることもあります。

化粧品成分表示名としてはサラシミツロウであってもすべて「ミツロウ」と記載されます。

ミツロウの脂肪酸およびアルコール組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

炭素数:二重結合数 種類 ヨーロッパ系 東洋系
脂肪酸比率 アルコール比率 脂肪酸比率 アルコール比率
16:0 飽和 94 82.7
17:0 飽和 4 10
18:0 飽和 2 2
24:0 飽和 17
26:0 飽和 12
28:0 飽和 17 16
30:0 飽和 33 69.6
32:0 飽和 17 4
33:0 飽和 2
34:0 飽和 1

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

エステルを構成する脂肪酸は、パルミチン酸(C₁₆)が大部分を占め、アルコールはともにC₂₄-C₃₂(偶数)が主な成分となっており、安定性および酸化への耐性が非常に高く、総合的に酸化安定性は極めて高い(酸化しにくい)と考えられます。

またヨーロッパ系ミツロウにおいては、C₂₄を主成分とした遊離脂肪酸が13-16%、C₃₀を主成分とした遊離アルコールが1-2%、C₂₁-C₃₅の炭化水素が10-14%含有されていることが報告されています(文献3:1983)

ヨウ素価、融点(∗1)および酸価(∗2)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。
∗2 酸価とは遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(アルカリ)のmg数です。

ヨウ素価 融点 酸価
ヨーロッパ系 東洋系 ヨーロッパ系 東洋系 ヨーロッパ系 東洋系
6.8-16.4 5.3-11.4 62-65 60-68 16.8-35.8 4.4-10.2

一例としてこのように記載されており(文献3:1983)、融点はどちらもあまり違いはないですが、酸価はヨーロッパ系が高酸価であり、東洋系が低酸価です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スティック状メイクアップ化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品などに使用されています(文献1:2008;文献4:1997)

粘稠性、可撓性および可塑性による感触改良

粘稠性(ねんちょうせい)、可撓性(かとうせい)および可塑性(かそせい)による感触改良に関しては、まず粘稠性、可撓性および可塑性について解説します。

粘稠性とは、粘り気があることです。

可撓性とは、言い換えるなら弾性であり、外力が加わることでしなやかにたわむ性質のことです。

可塑性とは、固体に力を加えて弾性限界を越える変形を与えたとき、力を取り去っても歪みがそのまま残る性質のことです。

ミツロウはロウ類の中でもとくに粘稠性があり、さらに可撓性および可塑性を付与する目的で、主に他の油性成分と組み合わせて口紅、アイシャドー、アイペンシルなどスティック状メイクアップ化粧品に汎用されています(文献4:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ミツロウの配合製品数と配合量の調査結果(1984年および2002-2003年)

スポンサーリンク

ミツロウの安全性(刺激性・アレルギー)について

ミツロウの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(過敏な皮膚を有する場合):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に100%ミツロウ0.5gを対象に24時間単回閉塞パッチ試験を実施し、PII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、1人の被検者のPIIは最大4.0のうち0.03であり、ほかの19人で皮膚刺激は示されなかった(CTFA,1976)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に6.4%ミツロウを含むリップスティック製剤をパッチテストしたところ、いずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 20人の被検者に3種類の13%ミツロウを含むクレンジングクリームを適用してもらい、それぞれのPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)を評価したところ、3種類の製剤のPIIはそれぞれ0.03,0.05,0.06であり、実質的に非刺激性であった(CTFA,1975;CTFA,1977;CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 7人の被検者に13%ミツロウを含むコールドクリームを対象に21日間累積皮膚刺激性試験(3週間にわたって週3回48時間閉塞パッチ適用)を実施したところ、非刺激性であった(CTFA,1975)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に3%ミツロウを含むマスカラを対象に4週間自宅使用してもらったところ、非刺激性であった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 200人の被検者に6.4%ミツロウを含むリップスティック製剤を対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚反応を誘発しなかった(Research Testing Lab,1976)
  • [ヒト試験] 1,595人の被検者に10%ミツロウを含むリップスティック製剤を対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も陰性であった(CTFA,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 過敏な皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者(50人は化粧品に過敏に反応する皮膚を有する被検者)に13%ミツロウを含むコールドクリームをパッチテストしたところ、いずれの被検者も陰性であった(Research Testing Lab,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、化粧品に過敏な皮膚を有する場合においても皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に50%ミツロウを含むミネラルオイル0.1mLを点眼し、7日間にわたって眼刺激性スコア(0-110)を評価したところ、眼刺激性スコアは最大で2.0であり、非刺激性であった(CTFA,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に50%ミツロウを含むミネラルオイル0.1mLを点眼し、7日間にわたって眼刺激性スコア(0-110)を評価したところ、眼刺激性スコアは最大で0.0であり、非刺激性であった(CTFA,1972)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に13%ミツロウを含むクレンジング製剤0.1mLを点眼し、7日間にわたって眼刺激性スコア(0-110)を評価したところ、眼刺激性スコアは最大で3.0であり、最小限の眼刺激性であった(CTFA,1975;CTFA,1977;CTFA,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に6.4%ミツロウを含むリップスティック製剤0.1mLを注入し、7日間にわたって眼刺激性スコア(0-110)を評価したところ、眼刺激性スコアは最大で0.0であり、非刺激性であった(CTFA,1979;CTFA,1981)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に0.3%ミツロウを含むコールドクリーム0.1mLを注入し、7日間にわたって眼刺激性スコア(0-110)を評価したところ、眼刺激性スコアは最大で1.0であり、非刺激性であった(CTFA,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性-最小限の眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は非刺激性-最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 386人の被検者に3%ミツロウを含むマスカラを48時間閉塞および開放パッチ適用し、2週間の休息期間を設けた後に改めて48時間閉塞および開放パッチを適用した後にUVライト(360nm)照射し、皮膚反応を評価したところ、皮膚反応は示さなかった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 68人の被検者に10%ミツロウを含むマスカラ製剤を対象に光感作試験を含むHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても光感作性を誘発しなかった(CTFA,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ミツロウはベース成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Candelilla Wax, Carnauba Wax, Japan Wax, and Beeswax」International Journal of Toxicology(3)(3),1-41.
  2. 日本油化学協会編集(1990)「ろうのエステル組成」油化学便覧 改訂3版,133-137.
  3. 府瀬川 健蔵(1983)「みつろう」ワックスの性質と応用,32-39.
  4. 広田 博(1997)「動物性固体ロウ」化粧品用油脂の科学,39-50.

スポンサーリンク

TOPへ