マンゴー種子油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分 界面活性 消臭
マンゴー種子油
[化粧品成分表示名称]
・マンゴー種子油

[慣用名]
・マンゴーバター

ウルシ科植物マンゴー(学名:Mangifera indica 英名:Mango)の種子から得られる植物油脂です。

マンゴーはインドを原産とし、熱帯・亜熱帯では最も多い果実であり、今日ではインド、メキシコ、フィリピン、タイ、オーストラリア、台湾が主な生産国です。

日本には明治初期に渡来し、今日では約80%が沖縄県で栽培され、そのほか宮崎県、鹿児島県、和歌山県、熊本県で栽培されています。

主に食用・飲料として利用されており、特定の産地や地域の好みに合わせて品種改良されたマンゴーは500種類以上あり、日本でも人気があります。

また以前は飲料として工業的にマンゴージュースなどを抽出後にマンゴー種子は廃棄物として廃棄されていましたが、昨今ではマンゴー種子から抽出された油脂が評価されるとともに生産国ではローションや石鹸などに使用され、高く評価されています。

マンゴー種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 35-50
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 4-8
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 1-1.5
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 5-8
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 33-48
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 1-7

このような種類と比率で構成されています(文献1:2017)

オレイン酸35-50%、ステアリン酸33-48%を占めており、二重結合2つ以上のリノール酸およびリノレン酸の含有量が少ないため、比較的酸化安定性は高い(酸化しにくい)と考えられます。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
32-93 不乾性油 34-43

一例としてこのように記載されており(文献1:2017)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点が34-43℃と体温より若干低いため、常温では半固体ですが体温で溶解する特性を有しています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、リップ製品、洗浄製品、洗顔料&洗顔石鹸、デオドラント製品、消臭製品などに幅広く使用されます(文献3:2015)

皮膚柔軟性によるエモリエント作用エモリエント作用

皮膚柔軟性によるエモリエント作用エモリエント作用に関しては、オレイン酸35-50%、ステアリン酸33-48%を含有していることからヒト皮膚との親和性が高く、粘性のあるしっとりした感触を付与するエモリエント剤として使用されています(文献3:2015)

また連用によって優れた皮膚柔軟性を有することが報告されています(文献3:2015)

鹸化による界面活性作用

鹸化による界面活性作用に関しては、まず化粧品における鹸化(けんか)および鹸化による界面活性作用について解説します。

化粧品における鹸化とは、植物油脂にアルカリ(水酸化Naまたは水酸化K)を加えて石ケンとグリセリンに加水分解する化学反応のことを指します。

一例として、パーム油パーム核油ヤシ油、マンゴー種子油を使用して各アルカリと反応させた場合、

パーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴー種子油 + 水酸化Na → 石ケン素地 + グリセリン
パーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴー種子油 + 水酸化K → カリ石ケン素地 + グリセリン

という反応になります。

成分表示一覧には、

  • パーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴー種子油、水酸化Na
  • パーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴー種子油、水酸化K

このように反応前の成分がすべて記載されることもありますし、また、

  • 石ケン素地、グリセリン
  • カリ石ケン素地、グリセリン

このように反応後の成分がすべてまとめて表示されることもあります。

複数の植物油脂を水酸化Naで反応させた場合は石ケン素地、複数の植物油脂を水酸化Kで反応させた場合はカリ石ケン素地と記載され、グリセリンは反応の副産物ですが、除去されなければ一緒に記載されます。

一般に水酸化Naで鹸化させた場合(石ケン素地の場合)は、硬くて光沢のない乳化物となり、水酸化Kで鹸化させた場合(カリ石ケン素地の場合)は、硬さが良好で光沢のある乳化物となります。

石ケン素地およびカリ石ケン素地は、界面活性作用を有しますが、界面活性剤は以下のように分類されており、

界面活性剤の分類

石ケン素地およびカリ石ケン素地は、親水基にマイナスイオンを有したアニオン界面活性作用であり、アルキル基の短い(炭素数12-16)脂肪酸で構成されている植物油脂ほど、水によく溶ける親水性で泡立ちやすいことが特徴であり、主に固形石鹸、洗顔料、シャンプー、シェービングクリームなどの洗浄剤として使用されます(文献2:1990)

2015年に近畿大学システム工学研究科およびバイオテクノロジー化学科によって報告されたマンゴー種子油石鹸における起泡特性検証によると、

マンゴー種子油石鹸の起泡特性をオリーブ果実油および市販石鹸の起泡特性と比較評価したところ、

マンゴー種子油石鹸の消泡試験

オリーブ油、マンゴー種子油および市販石鹸の泡の高さは、それぞれ6.5cm、5.2cmおよび4.4cmであり、マンゴー種子油石鹸は良好な泡を生成した。

また泡の高さを経時的に比較すると、市販石鹸の消泡性はわずかであったのに比べ、マンゴー種子油は2時間後に大きく泡の高さが低下し、7時間後には完全な消泡を示した。

一方でオリーブ油石鹸は3時間後に大きく泡の高さが低下し、5時間後には完全な消泡を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2015)、マンゴー種子油石鹸に起泡性および泡持続性が認められています。

ノネナールおよびイソ吉草酸の消臭作用

ノネナールおよびイソ吉草酸の消臭作用に関しては、2015年に近畿大学システム工学研究科およびバイオテクノロジー化学科によって報告されたマンゴー種子油の消臭効果検証によると、

宮崎産マンゴー種子油における臭気物質の消臭効果を測定したところ、

化学物質名 臭いの種類 消臭率(%)
2-ノネナール 加齢臭 71.6
イソ吉草酸 足の臭いの原因 70.0
ホルムアルデヒド シックハウス症候群の原因 20.0
アセトアルデヒド シックハウス症候群の原因 20.0
アンモニア 食品由来 33.0
メチルメルカプタン 食品由来 25.0

加齢臭の原因となる2-ノネナールおよび足の臭いの原因となるイソ吉草酸に対して70%以上の良好な消臭効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2015)、マンゴー種子油にノネナールおよびイソ吉草酸の消臭作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

マンゴー種子油の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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マンゴー種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について

マンゴー種子油の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者に2%マンゴー種子油を含むリップスティック150μLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Product Investigations Inc,2003)
  • [ヒト試験] 102人の被検者に3.87%マンゴー種子油を含むアイライナー0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Consumer Product Testing Co,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

マンゴー種子油はエモリエント成分、ベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分 界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 田村 健夫, 他(1990)「アニオン界面活性剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,133-136.
  3. S. Wu, et al(2015)「Evaluation of the fatty acid composition of the seeds of Mangifera indica L. and their application.」Journal of Oleo Science(64)(5),479-484.

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