マイクロクリスタリンワックスとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 感触改良
マイクロクリスタリンワックス
[化粧品成分表示名称]
・マイクロクリスタリンワックス

[医薬部外品表示名称]
・マイクロクリスタリンワックス

石油から得られるワセリンから固形炭化水素(イソパラフィン:固体ロウ)部分を分離して得られる石油系炭化水素(∗1)の混合物です。

∗1 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物で、化学的に極めて不活性な物質です。

ワセリンの性状は、固形炭化水素の中に液状炭化水素が存在するコロイド状態(∗2)ですが(文献3:1997)、マイクロクリスタリンワックスは、ワセリンの固形炭化水素部分のみを分離した炭化水素のため、半固形のワセリンと異なり、完全に固形です。

∗2 コロイド状態とは、一方が微小な液滴あるいは微粒子を形成し、他方に分散した2組の相から構成された乳化とも呼ぶ物質状態のことです。たとえば牛乳は水溶液の中に脂肪が分散したコロイド状態です。

主成分は、分子量が450-1,000と比較的大きなC₃₁-C₇₀のイソパラフィンであり、ほかには少量のパラフィンとナフテン系炭化水素が含まれています(文献3:1997)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品などに使用されています(文献2:2016;文献3:1997)

感触改良

感触改良に関しては、粘性があり、展延性(∗3)を有し、低温でも脆弱にならないという特徴があるため、乳化製品の粘性調整などの目的で固形成分としてメイクアップ化粧品などに使用されます(文献2:2016;文献3:1997)

∗3 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

また液状油の含みがよく、液体油と併用すると発汗を抑制したり、ほかのロウ類と併用することで結晶の成長を抑制する特性もあります(文献3:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1984年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

マイクロクリスタリンワックスの配合製品数と配合量の調査結果(1984年および2002-2003年)

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マイクロクリスタリンワックスの安全性(刺激性・アレルギー)について

マイクロクリスタリンワックスの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 205人の被検者に4.35%マイクロクリスタリンワックスを含むチーク製剤を閉塞パッチ適用したところ、3人の被検者に軽度の紅斑が生じたが、この刺激反応はごくわずかであると結論づけた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 8人の被検者にマイクロクリスタリンワックスを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、皮膚刺激は示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に15%マイクロクリスタリンワックスを含むスティック製剤0.3mLを対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチ下で実施したところ、21日間の試験後の累積刺激スコア(0-630)は130であり、この累積刺激スコアは軽度の累積刺激のわずかな可能性を示唆していた(Hill Top Research Lab,1979)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に15%マイクロクリスタリンワックスを含むスティック製剤0.3gを対象にMaximization皮膚感作性試験を閉塞パッチ下で実施したところ、この試験物質はパッチ除去後および24時間後で接触性皮膚感作を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 26人の被検者に4.35%マイクロクリスタリンワックスを含むチーク製剤を自宅使用(期間不明)してもらったところ、皮膚反応を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギのそれぞれの左眼に100%マイクロクリスタリンワックス0.1gを適用し、24,48および72時間後に検査したところ、6匹のうち5匹は眼刺激性はなく、残りの1匹については24時間後にわずかな結膜紅斑および浮腫を示した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1969)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に4.35%マイクロクリスタリンワックスを含むチーク製剤0.1gを適用し、72時間後に眼刺激性を評価したところ、72時間後までにすべてのウサギの眼刺激は消失した(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に15%マイクロクリスタリンワックスを含むスティック製剤0.1mLを注入し、9匹のうち3匹は注入30秒後に20mLの水で眼をすすぎ、24,48,72および4日後および7日後に眼刺激性を評価したところ、眼の洗浄の有無にかかわらず、眼刺激性スコア(0-110)は3.3であり、非刺激性であった(Stillmeadow,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1984)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に15%マイクロクリスタリンワックスを含むスティック製剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にキセノンアークソーラーシミュレーター(320~400nm)で12分間照射した。24および48時間後試験部位および対照部位の両方で最小限の皮膚反応が示されたため、この製品は光毒性を誘発しなかった(Test Kit Laboratories,1980)
  • [ヒト試験] 26人の被検者に4.35%マイクロクリスタリンワックスを含むチーク製剤を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にキセノンアークソーラーシミュレーター(320~400nm)で12分間照射したところ、この製剤は皮膚反応を誘発しなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性を誘発しないと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

マイクロクリスタリンワックスはベース成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1984)「Final Report on the Safety Assessment of Fossil and Synthetic Waxes」International Journal of Toxicology(3)(3),43-99.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブック,28.
  3. 広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.

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