ポリメチルシルセスキオキサンとは…成分効果と毒性を解説

感触改良 ソフトフォーカス
ポリメチルシルセスキオキサン
[化粧品成分表示名称]
・ポリメチルシルセスキオキサン

[医薬部外品表示名称]
・メチルシロキサン網状重合体

化学構造的にメチルトリメトキシシラン(∗1)が三次元網目状に架橋した重合体(∗2)であり、シリコーンレジン(∗3)の真球状微粒子(粉体)です。

∗1 シラン(Silane)とは、ケイ素(Si)の水素化物であり、単量体(モノマー:monomer)です。

∗2 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、ポリメチルシルセスキオキサンは網状重合体です。

∗3 レジン(resin)は樹脂のことであり、シリコーンレジンはシリコーン樹脂のことです。またシリコーン油やシリコーンゴムはシロキサン結合が線上に結合した重合体(ポリマー)であるのに対して、シリコーンレジンは分岐度の高い三次元網目構造で構成された重合体(ポリマー)です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、日焼け止め製品などに汎用されています。

感触改良

感触改良に関しては、ポリメチルシルセスキオキサンはシリコーンと同じシロキサン構造であることから化学的、生理的に安定であり、皮膚への刺激がなく、非常に優れた展延性(∗4)、分散性および撥水性(∗5)を有していることから(文献2:1993)、感触改良目的でアイシャドー、マスカラ、リキッドファンデーション、口紅、コンシーラー、化粧下地などに汎用されています(文献6:-)

∗4 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

∗5 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、撥水性を有していることから、日焼け止め製品にも使用されています。

光散乱によるソフトフォーカス効果

光散乱によるソフトフォーカス効果に関しては、まず前提知識として毛穴や小じわと光の関係およびソフトフォーカス効果について解説します。

肌の表面は皮表と呼ばれ、以下の図のように、

皮表の構造

凸部の皮丘と凹部の皮溝で構成された肌理(キメ)構造によって形成されています。

皮丘には多くの光が当たることで明るく、皮溝、小ジワ、毛穴などくぼんだ部分には光が当たりにくく影になり、その明度差がくぼみ部分を目立たせる結果となります(文献3:2005)

このような背景からくぼみ部分を目立ちにくくさせるには、

  1. 皮膚表面の凹凸間の輪郭をぼかすこと
  2. 皮膚表面の凹凸間の明度差を減少させること

この2点が重要であるというソフトフォーカス理論が報告されています(文献4:1987)

次に、ソフトフォーカス効果とは、ソフトフォーカス理論に基づき、以下の図のように、

ソフトフォーカス効果の仕組み

粉体からの反射光を多方向へ散乱させることで、その粉体の下にあるものを見えにくくする効果のことであり、デフォーカス効果とも呼ばれます。

光を散乱する代表的な粉体としては、紫外線散乱剤として汎用されている酸化チタン酸化亜鉛などが挙げられますが、ソフトフォーカス効果はこれらのような隠蔽力の強い正反射粉体では得られず、拡散反射型粉体を用いることによって得られる機能・効果であることが知られています(文献5:2003)

ポリメチルシルセスキオキサンは、肌表面のキメや毛穴などの凹凸をぼかすソフトフォーカス効果を有していることから(文献7:-)、顔面の毛穴を隠蔽してなめらかで均質な肌感を演出する目的でコンシーラー、ファンデーションなどに汎用されています。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリメチルシルセスキオキサンの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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ポリメチルシルセスキオキサンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリメチルシルセスキオキサンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に100%ポリメチルシルセスキオキサン0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験を通じてこの試験物質はいずれの被検者においても有害な皮膚反応を示さなかった(Anonymous,2017)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に50%ポリメチルシルセスキオキサンを含むメイクアップ製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間の間にいずれの被検者にも紅斑または他の皮膚刺激の兆候はなく、また皮膚感作の兆候もなかった。この製品は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(EVIC Romania,2013)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に22%ポリメチルシルセスキオキサンを含むメイクアップ製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において2人の被検者でほとんど知覚できない紅斑が観察されたが、他に紅斑または他の皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなく、この製品は非感作剤であると結論付けられた(Clinical Research Laboratories Inc,2012)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に100%ポリメチルシルセスキオキサンを処理し、皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は陰性比較として用いた滅菌脱イオン水と同様の結果を示し、皮膚刺激性は予測されなかった(Active Concepts,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面にポリメチルシルセスキオキサンを処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、この試験物質は陰性比較として用いた滅菌脱イオン水と同様の結果を示し、眼刺激性は予測されなかった(Active Concepts,2014)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者の両腕内側に5%ポリメチルシルセスキオキサンを含むファンデーション0.2gを適用した後にUVAライト(4.4J/c㎡)を10cmの距離で右腕に照射し、その後さらに試験物質を閉塞パッチ適用した。パッチ除去24および48時間後および1週間後に皮膚反応を評価したところ、この試験物質はいずれの観察時においても皮膚に有害な反応を示さなかった(Anonymous,2017)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリメチルシルセスキオキサンはベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Polysilsesquioxanes as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 佐藤 吉幸, 他(1993)「ポリメチルシルセスキオキサン球状粉末の化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌(27)(3),488-493.
  3. 栗林 さつき(2005)「毛穴対策用メイクアップ化粧料」Fragrance Journal(33)(9),33-38.
  4. 中村 直生, 他(1987)「粉体の光学的研究とシワ隠し効果」日本化粧品技術者会誌(21)(2),119-126.
  5. 毛利 邦彦(2003)「ファンデーションの有用性と製品化技術」日本化粧品技術者会誌(37)(3),171-178.
  6. 信越化学工業株式会社(-)「KMP-590」技術資料.
  7. 日興リカ株式会社(-)「MSP-N050」技術資料.

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