ポリエチレンとは…成分効果と毒性を解説

感触改良
ポリエチレン
[化粧品成分表示名称]
・ポリエチレン

[医薬部外品表示名称]
・ポリエチレンワックス、ポリエチレン末、高融点ポリエチレン末

炭化水素(∗1)の一種である炭素数2のエチレン(∗2)を重合して得られる重合体(∗3)であり、平均分子量400-50,000の脂肪族炭化水素(体質顔料・合成ワックス)です(文献6:2016)

∗1 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物であり、化学的に極めて不活性な物質です。

∗2 エチレン(ethylene 化学式:C₂H₄)とは、いわゆる気体のエチレンガスであり、二重結合で結ばれた炭素2個を持つ不飽和炭化水素(炭化水素ガス)です。

∗3 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が分子結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、ポリエチレンの場合は低分子量の炭化水素ガスであるエチレンガスを何万分子も結合(重合)して固体のプラスチックであるポリエチレンを合成します(文献8:2018)。

1950年以前は石油をはじめとする鉱物および動植物による天然ワックスしか存在せず、より硬く、より耐熱性のある高分子量のワックスが求められる中で、天然ワックスでは1,000以上の分子量のものは得られませんでしたが、1950年代にエチレン重合技術が汎用化したことから、高分子合成ワックスが様々な産業分野に普及しました(文献7:1983)

それ以降、ポリエチレンはプラスチックの代表として、日用品分野ではポリ袋、ラップフィルム、ポリバケツ、食品包装用の袋やフィルム(かつお節の袋、ハムやうどんなどのラミネート包装の内面)などに汎用されています(文献8:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品などに汎用されています(∗4)

∗4 2015年以前はスクラブ剤として洗顔料、ボディソープ製品などに汎用されていましたが、ポリエチレンは生分解性がなく、スクラブ剤に使用される球状プラスチックビーズは5mm以下の小さなものであることから回収が困難であり、生物被害および環境汚染の観点から現在はスクラブ剤としてはほとんど使用されていません(詳しくは「効果・作用についての補足」の項を参照してください)。

感触改良

感触改良に関しては、酸化安定性が高く、乳化しやすい特性をもち、基剤の硬さ調整および良好な展延性(∗5)を付与する目的で、アイライナー、アイシャドー、アイペンシル、マスカラ、チーク、コンシーラー、口紅などに使用されています(文献7:1983;文献9:1990;文献10:2017)

∗5 展延性とは、柔軟に広がり、均等に伸びる性質のことで、薄く広がり伸びが良いことを指します。

また感触にコクを付与する目的で、スキンケアクリーム、ヘアワックスなどに配合されます(文献11:2015)

効果・作用についての補足

洗顔料やボディソープ製品にスクラブ剤として配合されるポリエチレンに代表されるマイクロビーズ(プラスチックビーズ)は、生分解性がない(∗6)ことから、2010年代より直径5mm以下のマイクロビーズによる生物被害および環境汚染が問題提起されている現状があります。

∗6 生分解性とは、環境中の微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことです。プラスチックは紫外線照射によって経時的に劣化・変性し、細かく壊れていき微粒子状まで小さくなりますが、このプラスチックの細片化は化学的に分解したのではなく、形が崩壊して細かくなっただけで完全に分解したわけではなく、マイクロビーズは環境中(海洋)において化学的に分解されません(文献2:2016)。

そういった現状の中で、環境保護の観点からEU加盟国であるオランダ、オーストラリア、ベルギーおよびスウェーデンの4ヶ国は、2014年に化粧品へのマイクロビーズの使用を禁止する共同声明を発表し、それを皮切りに2017年にはアメリカおよび韓国がマイクロビーズを含む化粧品の製造禁止を発表、2018年にはフランス、イギリス、台湾、ニュージーランドおよびカナダがマイクロビーズを含む化粧品の製造禁止を発表しています(文献3:2015;文献4:2018)

日本においては2019年までに国による方針発表はないものの、2016年に日本化粧品工業連合会により化粧品販売企業に向けて、洗い流しのスクラブ製品におけるマイクロビーズの自主規制を促す文書発信があり、2017年の三菱化学テクノリサーチによる調査結果では、市販150種類の洗顔料およびボディソープ(各75個)のうちポリエチレンの成分表示があったものは洗顔料に2種類のみであることから(文献5:2017)、現在はスクラブ剤としてのポリエチレンの使用はほとんどないと推測されます。

メイクアップ化粧品やスキンケア化粧品には2020年現在でもポリエチレンが使用されているものがありますが、これらは洗浄系製品ではなく自主規制の対象ではないため、業界内での議論はなされているものの現時点では使用可能です(文献5:2017)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2004年および2013-2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ポリエチレンの配合状況の調査結果(2002-2004年および2013-2015年)

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ポリエチレンの安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリエチレンの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 201人の被検者に13%ポリエチレンを含む洗浄製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、チャレンジパッチにおいて1人の被検者に+1のスコアを有する感作反応が生じたが、臨床的に重要であるとは判断されず、この製品は皮膚刺激性および皮膚感作性を誘発する可能性が低いと結論づけた(CFTA,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの右眼の結膜嚢にポリエチレン(平均分子量450)66mgの個体物質を適用してまぶたを1秒間閉じ、適用1,24,48および72時間後および7日後に眼刺激性を評価したところ、処置後1時間ではすべての処置された眼で中等の結膜刺激が認められた。24時間で、処置された1つおよび2つの眼に中等の結膜刺激がみられた。処置24および48時間後の観察で1つの眼で角膜混濁が観察され、また別の眼で虹彩の炎症が観察された。処置したすべての眼は48時間後および7日目で正常だった。ポリエチレンは軽度の刺激剤として分類された(Safepharm Laboratories Ltd,1997)
  • [動物試験] ウサギの片眼に13%ポリエチレンを含む製品0.1mLを対象にOECD405テストガイドラインに基づいて眼刺激性試験を実施したところ、1時間後に最大眼球刺激スコア(0-110)は8であり、48時間後には眼刺激は消失した。角膜の損傷は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、最小限-軽度の眼刺激が報告されているため、眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

ポリエチレンはベース成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2007)「Final Report on the Safety Assessment of Polyethylene」International Journal of Toxicology(26)(1_suppl),115-127.
  2. 兼廣 春之(2016)「洗顔料や歯磨きに含まれるマイクロプラスチック問題」海ごみシンポジウム.
  3. The United Nations Environment Programme(2015)「Plastics in Cosmetics: Are we polluting the environment through our personal care (Factsheet)」, <http://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/21754> 2020年2月4日アクセス.
  4. 環境省(2018)「プラスチックを取り巻く国内外の状況」, <http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2r3.pdf> 2020年2月4日アクセス.
  5. 株式会社三菱ケミカルリサーチ(2017)平成28年度国内外におけるマイクロビーズの流通実態等に係る調査業務報告書.
  6. 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブックⅠ,27.
  7. 府瀬川 健蔵(1983)「ポリエチレンワックス」ワックスの性質と応用,122-133.
  8. 伊東 章(2018)「ポリエチレン」化学と教育(66)(5),252-253.
  9. 柴谷 順一, 他(1990)「最近の化粧品用樹脂の動向」色材協会誌(63)(4),217-225.
  10. 柴田 雅史(2017)「ワックスゲルの物性制御と化粧品への応用」オレオサイエンス(17)(12),633-642.
  11. 宇山 光男, 他(2015)「ポリエチレン」化粧品成分ガイド 第6版,180.

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