ホホバ種子油とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分 抗炎症成分
ホホバ種子油
[化粧品成分表示名称]
・ホホバ種子油

[医薬部外品表示名称]
・ホホバ油

[慣用名]
・ホホバオイル、ホホバワックス

ホホバ科植物ホホバ(学名:Simmondsia chinensis 英名:Jojoba)の種子から圧搾・精製によって得られる植物性液体ロウです。

常温で液体であるため、ホホバ油と呼ばれ、植物油脂に誤解されることが多いですが、植物油脂が高級脂肪酸とグリセリンのエステルであるのに対して、ホホバ種子油の主成分は高級脂肪酸と不飽和アルコールとのエステルであり、化学構造上は明らかにロウです(文献1:2008;文献2:1990)

ホホバは、北米大陸を原産としてアメリカ南部からメキシコ北部の乾燥地帯に自生しており、学名にchinensisとありますが、中国とは関係なく、またかつてはツゲ科に分類されていましたが、1990年代にホホバだけが属するホホバ科がつくられました。

過酷な気温条件や乾燥した土地にも育つ生命力の強い植物であり、ホホバの種子から得られた液状ワックス(ロウ)は、ホホバオイルと呼ばれ、アメリカ先住民によって古くから食用油、火傷や傷、湿疹の治療、スキンケアやヘアケアに利用されてきました(文献4:2011)

ホホバ種子油の脂肪酸およびアルコール組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

炭素数:二重結合数 種類 脂肪酸比率 アルコール比率
16:0 飽和 1.5 0.2
16:1 不飽和 0.4
17:0 飽和 0.1
17:1 不飽和 0.1
18:0 飽和 0.1 0.2
18:1 不飽和 13.9 0.9
18:2 不飽和 0.3
18:3 不飽和 0.2
20:0 飽和 0.1 0.3
20:1 不飽和 70.8 51.9
22:0 飽和 0.2 1.0
22:1 不飽和 11.2 38.1
24:0 飽和 0.1 0.2
24:1 不飽和 0.9 6.1

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

大部分を高級不飽和脂肪酸と高級不飽和アルコールが占めていますが、そのほとんどが直鎖長鎖エステルで一般的な植物油と異なり、安定性および酸化への耐性が高く、総合的に酸化安定性は高い(酸化しにくい)と考えられます。

またホホバ種子油において粗製、漂白および精製したものの酸化時間を比較したところ、粗製、漂白および精製の酸化時間はそれぞれ50,10-12および2時間であり、これらの違いは粗製ホホバ種子中に天然の酸化防止成分が存在にあると報告されています(文献5:1986)

ヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
82 不乾性油 6.8-7.0

一例としてこのように記載されており(文献3:1978)、100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は6.8-7.0℃であり、冬など6.8℃以下では固体化しますが、それ以外では常温で液体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品、洗浄製品、ネイル製品などに使用されています(文献1:2008)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、油っぽさがなく、皮膚になじみやすく、酸化安定性および耐温度性に優れているため、クリーム、乳液などのスキンケア化粧品、ボディケア製品、口紅をはじめとするメイクアップ化粧品などに幅広く使用されています。

また角層からの水分蒸散を防止し、肌を柔軟にする作用を有しており、1983年にコーセーによって報告された油脂の抱水力比較検証によると、

抱水力をもたないスクワランを比較対照として、アボカド油オリーブ果実油ブドウ種子油サフラワー油コムギ胚芽油モモ核油、ホホバ種子油の抱水力を比較検討したところ、以下の表のように、

油性成分 抱水力(%)
アボカド油 5
オリーブ果実油 8
ブドウ種子油 14
サフラワー油 3
コムギ胚芽油 40
モモ核油 10
ホホバ種子油 5
スクワラン 0

ホホバ種子油は、いくらかの抱水力をもっており、湿潤性を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1983)、ホホバ種子油に皮膚柔軟によるエモリエント作用が認められています。

プロスタグランジンE₂、TNA-αおよび好中球浸潤抑制による抗炎症作用

プロスタグランジンE₂、TNA-αおよび好中球浸潤抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として皮膚の炎症の仕組みを解説しておきます。

以下の肌図をみてもらえるとわかりやすいと思うのですが、

炎症の仕組み

簡易的な解説になりますが、炎症のプロセスは、まず活性酸素の活性化によって様々な遺伝子の発現を誘導するタンパク質(転写因子)であるNF-κB(エヌエフカッパビー)が活性化します。

次にNF-κBが活性化すると、炎症性サイトカインの産生が誘導され、また活性化した炎症性サイトカインは炎症性物質をつくるホスホリパーゼA2という酵素を活性化し、活性化したホスホリパーゼA2は炎症性物質の産生を促進させて炎症を発生させるというメカニズムになります。

炎症性サイトカインや炎症性物質には様々なものがありますが、TNA-αは炎症性サイトカインの一種であり、プロスタグランジンE₂は炎症性物質の一種です。

また白血球の一種である好中球は、通常は細菌または真菌などの侵入によって皮膚に炎症が起こると、細菌や真菌を抑制する活性酸素を放出しながら遊走する一方で、ニキビの原因菌であるアクネ菌(Propionibacterium acnes)が炎症性誘発物質である好中球走化性因子を産生し、毛胞に集積した好中球が活性酸素を放出することで 炎症を引き起こすことが報告されていま(文献8:2008)

このような背景からプロスタグランジンE₂、TNA-αおよび好中球浸潤を抑制することが皮膚炎症の抑制および改善に重要であると考えられます。

2005年にエジプトのアインシャムス大学薬理学科および毒性学科によって報告されたホホバ油の炎症作用検証によると、

ラットを用いてカラゲニンを皮内注射し浮腫を誘発した後でさらにホホバ油を皮内注射し、その影響を検討したところ、以下のグラフのように、

ホホバ油のプロスタグランジンE₂への影響

カラゲニンのみを皮内注射した場合、プロスタグランジンE₂は5倍以上に増加したが、カラゲニンの皮内注射後にホホバ油を塗布した場合は、プロスタグランジンE₂の濃度依存的に有意な減少を示した。

次にラット皮膚をクロトン油で処理した場合のホホバ油塗布による影響を検討した。

ラット皮膚をクロトン油で処理すると、真皮層において浮腫と同様に大量の好中球浸潤を示したが、一方でクロトン油処理後に30%ホホバ油で処理したところ、好中球浸潤が少なく、充血の減少を示した。

最後にホホバ油のTNF-αへの影響を検討した。

ラットを用いてリポ多糖を皮内注射したところ、約8倍のTNF-αの増加を引き起こしたが、一方でリポ多糖の皮内注射後にホホバ油で処理したところ、以下のグラフのように、

ホホバ油のTNF-αへの影響

ホホバ油で処理した場合は、濃度依存的にTNF-αの有意な減少を示した。

これらの結果は、明らかにホホバ油に抗炎症作用があることを強く示唆しています。

またこれらの抗炎症作用は、ホホバ油において約70%を占めるエイコセン酸(cis-11-eicosenoic acid)の作用であると考えられます。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2005)、ホホバ種子油にプロスタグランジンE₂、TNA-αおよび好中球浸潤抑制による抗炎症作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2007年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ホホバ種子油の配合製品数と配合量の調査結果(2007年)

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ホホバ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ホホバ種子油の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(湿疹または接触皮膚炎を有している場合):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 200人の女性被検者の唇に20%ホホバ種子油を含むリップクリーム製品を4日間毎日適用し、2週間および4週間で主観的および客観的な刺激兆候について評価したところ、刺激反応は認められなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 208人の成人女性被検者に20%ホホバ種子油を含むリップクリーム0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者に非特異的な軽度の一過性の刺激が観察されたが、臨床的に関連がないと判断され、試験物質は非刺激剤および被感作剤として分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 152人の被検者(男性38人、女性114人、18-65歳)に0.5%ホホバ種子油を含むオイル製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さなかったため、この製品は刺激剤でも増感剤でもなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1988)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に2種類(黄色のオイルおよび透明のオイル)の100%ホホバ種子油を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、ホホバ種子油は接触性皮膚感作の兆候は認められないと結論づけられた(Hill Top Research Inc,1998)
  • [ヒト試験] 102人のボランティアに100%ホホバ種子油0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、すべての被検者において陰性だったため、ホホバ種子油は皮膚刺激および皮膚感作の可能性がないと結論付けられた(Consumer Product Testing Co,2003)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼の結膜嚢に精製ホホバ種子油0.1mLを点眼したところ、直後にわずかな下眼瞼芽腫が観察され、滴下1時間後に軽度の結膜充血が観察された。眼刺激がひどくなることはなく、注入後24時間までにすべての反応が消失した(Taguchi and Kunimoto,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に20%ホホバ種子油を含むリップクリーム0.1mLを点眼し、Draize法に基づいて注入24,48および72時間後で反応を採点したところ、点眼24時間後の平均眼刺激スコアは0.3±0.8であり、48および72時間で反応は観察されなかった。ホホバ種子油は無刺激剤として分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性-軽度の眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は非刺激性-軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹や皮膚炎の26人の患者(18-59歳)を対象に精製されたホホバ種子油の皮膚刺激性を、オリーブ油、白色ワセリンを対照として評価した。接着絆創膏を介して試験物質を患者の背部に48時間適用し、パッチ除去30分および24時間後に反応を評価したところ、1人の患者に軽度の湿疹が生じたが、この反応は24時間後には観察されなかった。また別の20人の湿疹または皮膚炎の患者(19-42歳)に同じ手順で試験物質を適用したところ、1人の患者はパッチ除去30分後にホホバ種子およびオリーブ油に対する陽性反応が観察され、別の1人の患者はパッチ除去30分および24時間後にホホバ種子油および白色ワセリンに対する陽性反応が観察された。両方の患者は本質的に高アレルギー性であると考えられた(Taguchi and Kunimoto,1977)
  • [ヒト試験] ホホバ種子油に過敏であると予測される6人の患者に(1)20%ホホバ種子油&80%オリーブ油、(2)20%ホホバ種子油&80%ワセリン、(3)ピュアオリーブ油、(4)ピュアミネラルオイルをそれぞれ適用したところ、5人の患者の前腕にホホバ種子油を含む混合物両方で陽性反応(紅斑または紅斑および小胞)が観察された。オリーブオイルおよびミネラルオイルに対する反応はなかった。ホホバ種子油の混合物に反応しなかった患者の中には100%ホホバ種子油を整髪料として使用したときに頭皮に接触性皮膚炎の症状が生じたが、100%ホホバ種子油でパッチ試験した28人の被検者では反応は観察されなかった。これらの患者は感作性を有していなかった(Scott and Scott,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、元々ホホバ種子油に過敏である場合を除き、湿疹や皮膚炎をを有している場合においてほとんど皮膚感作なしと報告されているため、湿疹や接触皮膚炎を有している場合、接触皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 10名の被検者を対象に20%ホホバ種子油を含むリップクリームの光毒性を評価した。被検者の半数において試験物質0.2gを右前腕の内側に24時間適用し、残りの半分においては左前腕の内側に適用した。次いで試験部位に約10cmの距離でUVAライト(線量=4,400μW/c㎡)を約15分間照射し、照射されていない対象部位は試験部位の照射中にアルミホイルで遮蔽された。照射終了24および48時間後に反応を評価したところ、いずれの被検者も反応を示さず、ホホバ種子油は非光毒性として分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 102人の女性被検者(18-49歳)に0.5%ホホバ種子油を含む日焼け止めオイルを2日間連続で2時間使用し、使用24および48時間後に評価したところ、3人の被検者は臨床的に重要ではないわずかな一過性の不快感を経験したが、光感作性は認められなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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ホホバ種子油はベース成分、エモリエント成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分 抗炎症成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2008)「Safety Assessment of Simmondsia Chinensis (Jojoba) Seed Oil, Simmondsia Chinensis (Jojoba) Seed Wax,Hydrogenated Jojoba Oil, Hydrolyzed Jojoba Esters,Isomerized Jojoba Oil, Jojoba Esters, Simmondsia Chinensis (Jojoba) Butter, Jojoba Alcohol, and Synthetic Jojoba Oil」Final Report.
  2. 日本油化学協会(1990)「ろうのエステル組成」油脂化学便覧 改訂3版,133-137.
  3. 三輪 トーマス完二(1978)「ホホバ油の最近の化学研究と利用」油化学(27)(10),650-657.
  4. 鈴木 洋(2011)「ホホバ」カラー版健康食品・サプリメントの事典,172.
  5. A Kampf, et al(1986)「Oxidative stability of jojoba wax」Journal of the American Oil Chemists’ Society(63)(2),246–248.
  6. 足立 佳津良(1983)「エモリエント剤―最近10年の進歩と発展」Fragrance Journal(62)(5),46-49.
  7. A Kampf, et al(2005)「Anti-inflammatory effects of jojoba liquid wax in experimental models.」Pharmacological Research(51)(2),95-105.
  8. 高橋 元彦, 他(2008)「ニキビ患者および健常人における白血球分画, 酸化指標, ストレス度に関する研究」日本化粧品技術者会誌(42)(1),22-29.

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