プロパンジオールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿 防腐
プロパンジオール
[化粧品成分表示名称]
・プロパンジオール

[慣用名]
・1,3-プロパンジオール

糖を発酵させて得られるさっぱりした感触と抗菌性を有する多価アルコール(二価アルコール:グリコール)(∗1)で、抗菌性を有する多価アルコールの一種であるアルカンジオールでもあります。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

PG(プロピレングリコール)もプロパンジオールの異性体(∗2)であり、1,2-プロパンジオールと呼ばれますが、化粧品成分としてプロパンジオールと記載される場合は1,3-プロパンジオールであり、PGではありません。

∗2 異性体とは、同じ数、同じ種類の原子を持っていても構造が異なる物質のことで、構造が異なれば性質も変わります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、洗浄製品、頭皮&ヘアケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献3:2009;文献4:2012)

角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、2009年に岩瀬コスファによって報告されたプロパンジオールの角層水分量におよぼす影響検証によると、

10%プロパンジオールの角層水分量を検討するために、比較として精製水、10%グリセリン、10%BG、10%PG、5%プロパンジオール+5%グリセリンを用いた。

ヒト前腕内側部に各試料5μL/c㎡塗布し、塗布前および塗布後5,15,30および60分後の角層コンダクタンスを測定し、塗布前のコンダクタンスを1とし、塗布後経時的に得られたコンダクタンス変化割合を求めたところ、以下のグラフのように、

プロパンジオールの角層水分量への影響

プロパンジオールは、グリセリン、BGおよびPGよりも塗布直後の角層水分量を向上させ、その後BGやPGと同様に緩やかに低くなる傾向を示した。

さらにプロパンジオールとグリセリンを併用すると、塗布60分後もグリセリン10%を上回る角層水分量を示し、持続効果を発揮することがわかった。

BGやPGもグリセリンと併用することで、単独時より角層水分量の向上および持続傾向は認められたが、得られた保湿効果は10%グリセリンよりも下回っていた。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:2009)、プロパンジオールに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

またプロパンジオールとグリセリンを併用することでグリセリン以上の保湿持続性も認められています(文献3:2009)

抗菌・防腐による製品安定化剤

抗菌・防腐による製品安定化剤に関しては、2012年に御木本製薬によって公開された抗菌性物質の最小発育阻止濃度の検証によると、

抗菌性原料の強さを表す最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を基準として、プロパンジオール、ペンチレングリコールBGの抗菌性を、日本薬局方保存効力試験で推奨された下記5菌種を使用して検討した。

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:Sa)
  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:Pa)
  • 大腸菌(Escherichia coli:Ec)
  • カンジダ(candida albicans:Ca)
  • コウジカビ(aspergillus brasiliensis:Ab)

細菌および真菌を培養した培地18mLに各10%濃度水溶液2mLを添加し、10⁸個/mL程度に調整した菌液10μLを接種した。

これを培養し、コロニー形成が見られない最低濃度を最小発育阻止濃度(MIC)として測定したところ、以下の表(∗3)のように、

∗3 表のSa,Pa,Ec,CaおよびAbは菌の英語表記の略語です。またMICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さいほど抗菌力が高いことを意味します。

抗菌剤 MIC:最小発育阻止濃度(%)
Sa Pa Ec Ca Ab
ペンチレングリコール 4 2 2 3 3
BG 16 8 10 14 18
プロパンジオール 20 10 10 15 20

プロパンジオールは、抗菌力の高いペンチレングリコールはもとより、BGよりも抗菌力が弱いことが示された。

ただし、プロパンジオールと、ペンチレングリコールまたは/およびBGを組み合わせた抗菌力試験によると、ペンチレングリコールとプロパンジオールの組み合わせにおいて、BGよりプロパンジオールのほうが抗菌力が高くなることがわかった。

この結果は、ペンチレングリコールとプロパンジオールを組み合わせることで、より少量で必要な抗菌力を得ることができ、パラベン類を配合しなくても(あるいはごく微量でも)抗菌性が保たれると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2012)、プロパンジオール単独は抗菌性が低いことが認められていますが、ペンチレングリコールと併用することにより相乗効果が得られるため、これらを併用して抗菌性のある基剤として製品安定化を兼ねて配合されます。

またアミノ酸であるヒドロキシプロリンは抗菌作用がありませんが、ヒドロキシプロリン(0.01%-2%範囲内)とプロパンジオールを組み合わせることで、相乗的に抗菌作用を発することが報告されています(文献5:2018)

さらに、ヒドロキシプロリンほど高い抗菌性の相乗効果はありませんが、同じくアミノ酸であるプロリンセリンアラニンまたは多糖類であるアルギン酸Naも、単体では抗菌作用がないもののプロパンジオールと組み合わせることで、相乗的に抗菌作用を発することが報告されています(文献5:2018)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

プロパンジオールの配合製品数と配合量の調査結果(2016年)

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プロパンジオールの安全性(刺激性・アレルギー)について

プロパンジオールの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2018)によると、

  • [ヒト試験] 40人の被検者に100%プロパンジオールを単一パッチ処理したところ、実質的に皮膚刺激は認められなかった(Belcher LA,2010)
  • [ヒト試験] 100人の被検者を対象に5%,25%および50%プロパンジオール水溶液のRIPT(累積刺激および皮膚感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においてもすべての濃度に対して皮膚刺激および皮膚感作反応は認められなかった(Belcher LA,2010)
  • [ヒト試験] 207人の被検者を対象に25%(pH7)、50%(pH7)および75%(pH4,7,9)プロパンジオール水溶液のRIPT(累積刺激および皮膚感作試験)を実施したところ、75%濃度において4人の被検者に9回中1回目の適用でごくわずかな紅斑が認められたが、これらの知見は臨床的に重要ではないと考えられた。またいずれの被検者も皮膚感作反応は認められなかった(Belcher LA,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚一次刺激性、累積刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2018)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に100%プロパンジオール0.1mLを点眼し、眼はすすがず、点眼24,48および72時間後および7日後に眼刺激性を評価したところ、6匹中4匹にわずかな結膜発赤が観察されたが点眼48時間までに消失し、結果として眼刺激性ではないと判断された(European Chemical Agency,2015)
  • [動物試験] 4匹のウサギの片眼の粘膜に100%プロパンジオール0.2mLを点眼し、2匹の眼はすすぎ、残りの2匹の眼はすすがず、点眼30分後および1,2,3および7日後に眼刺激性を評価したところ、4匹中3匹(眼をすすいだ2匹と眼をすすがなかった1匹)に一過性の軽度の結膜発赤が観察されたが点眼48時間までにすべて消失し、結果として眼刺激性ではないと判断された(European Chemical Agency,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BGグリセリンDPGジグリセリントレハロースグルコースソルビトール、プロパンジオール、キシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられ、プロパンジオールは無添加と同等の増加率であるため、アクネ菌の増殖性は認められなかった。

このような検証結果が報告されており(文献2:2009)アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

プロパンジオールはベース成分、保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2018)「Safety Assessment of Alkane Diols as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2019年1月4日アクセス.
  3. 馬奈木 裕美, 他(2009)「植物由来プロパンジオールの特性と化粧品への応用」Fragrance Journal(37)(5),61-64.
  4. 御木本製薬株式会社(2012)「皮膚外用剤」特開2012-036121.
  5. 御木本製薬株式会社(2018)「抗菌性組成物並びに該抗菌性組成物を配合した皮膚外用剤」特開2018-115147.

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