ピスタシオ種子油とは…成分効果と毒性を解説



・ピスタシオ種子油
[慣用名]
・ピスタチオオイル
ウルシ科植物ピスタチオ(学名:Pistacia vera 英名:Pistachio)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。
ピスタチオはトルコやペルシャなどの地中海沿岸を原産とし、今日ではイランが最大生産量をほこり、ほかにアメリカ、トルコ、シリア、中国では新疆ウイグル自治区で生産され、その種子および種子油は主に食用として利用されています。
ピスタシオ種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
---|---|---|---|
パルミトレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C16:1 | 0.7 |
オレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:1 | 58.2 |
エイコセン酸 | 不飽和脂肪酸 | C20:1 | 0.6 |
エルカ酸 | 不飽和脂肪酸 | C22:1 | 0.6 |
リノール酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:2 | 30.3 |
リノレン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:3 | 0.4 |
ミリスチン酸 | 飽和脂肪酸 | C14:0 | 0.09 |
パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 7.4 |
ステアリン酸 | 飽和脂肪酸 | C18:0 | 0.9 |
アラキジン酸 | 飽和脂肪酸 | C20:0 | 0.6 |
ベヘン酸 | 飽和脂肪酸 | C22:0 | 0.3 |
このような種類と比率で構成されています(文献2:2016)。
オレイン酸約60%、リノール酸約30%が主成分であり、二重結合が2つの不飽和脂肪酸であるリノール酸の割合が高いため、酸化安定性は低い(酸化しやすい)と考えられます。
不鹸化物(∗1)としては、フィトステロールおよびトコフェロールなどが含まれています(文献3:-)。
∗1 不鹸化物(不ケン化物)とは、脂質のうちアルカリで鹸化されない物質の総称です。水に不溶、エーテルに可溶な成分である炭化水素、高級アルコール、ステロール、色素、ビタミン、樹脂質などが主な不鹸化物であり、油脂においてはその含有量が特徴のひとつとなります。
またヨウ素価は、
ヨウ素価 | ヨウ素価による分類 |
---|---|
100-110 | 半乾性油 |
一例としてこのように記載されており(文献2:2016)、100を越えることがある半乾性油のため、いくらかの乾燥性は有しますが、乾油性よりは劣ります。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、ボディケア製品などに使用されています(文献2:2016;文献3:-)。
エモリエント作用
エモリエント作用に関しては、オレイン酸約60%、リノール酸約30%を含有しているため、肌なじみおよび皮膚浸透性に優れ、サッパリとした軽い質感のエモリエント剤であり、幅広い化粧品に汎用されています(文献2:2016)。
アーモンド油やアンズ核油と類似しており、これらも軽い質感を有していますが、これらと比較するとピスタシオ種子油のほうがわずかに軽い質感を有しています(文献3:-)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ピスタシオ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが(文献1:2017)、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
∗∗∗
ピスタシオ種子油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
∗∗∗
文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
- 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,15-16.
- Gustav Heess(-)「Pistachio Oil」技術資料.
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