ヒマワリ種子油とは…成分効果と毒性を解説




・ヒマワリ種子油
[医薬部外品表示名称]
・ヒマワリ油(1)
[慣用名]
・サンフラワー油、サンフラワーオイル
キク科植物ヒマワリ(学名:Helianthus annuus 英名:Sunflower)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。
ヒマワリは北アメリカを原産とし、今日ではヨーロッパ、アメリカ、アルゼンチンが主要産地であり、日本には17世紀に伝来し、現在は北海道で栽培されています。
ヒマワリ種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
脂肪酸名 | 脂肪酸の種類 | 炭素数:二重結合数 | 比率(%) |
---|---|---|---|
オレイン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:1 | 17.9 |
リノール酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:2 | 69.8 |
リノレン酸 | 不飽和脂肪酸 | C18:3 | 0.9 |
パルミチン酸 | 飽和脂肪酸 | C16:0 | 6.7 |
ステアリン酸 | 飽和脂肪酸 | C18:0 | 4.0 |
このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)。
リノール酸が約70%、オレイン酸が約15%を占めており、二重結合が2つ以上の不飽和脂肪酸であるリノール酸の含有量がかなり高いため、酸化安定性はかなり低い(酸化しやすい)と考えられますが、ヒマワリ種子油中の総トコフェロール量がダイズ油やコーン油ほど多くはないものの、精製油の場合で約40mg/100gであり、その90%以上が生理活性の高いα-トコフェロールであるため(文献5:2017)、これらが酸化安定性に貢献していると考えられます。
またヨウ素価は、
ヨウ素価 | ヨウ素価による分類 |
---|---|
113-146 | 乾性油 |
一例としてこのように記載されており(文献3:1990)、130以上の乾性油のため、乾燥性が高いと考えられます。
乾油性とは、皮膜状に空気中に放置すると、固化して弾性のある乾燥皮膜を生じるオイルのことで、たとえば油性塗料に用いることで塗料の乾きが早くなります。
ヒマワリ種子油には、これら通常のヒマワリ種子油のほかに品種改良してオレイン酸含有量を80%以上にし、酸化安定性を高めたハイブリッドヒマワリ油も1990年ごろから実用化されています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、リップ製品、ヘアケア製品、洗浄製品、ネイル製品などに幅広く使用されます(文献4:2016)。
エモリエント作用
エモリエント作用に関しては、リノール酸が約70%、オレイン酸が約15%を含有し、リノール酸の割合がかなり高いため、肌なじみや伸びが良く、ベタつきのない軽い使用感を付与するエモリエント剤として幅広く使用されています(文献4:2016)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
ヒマワリ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、
- [ヒト試験] 108人の被検者に6%ヒマワリ種子油を含むスキンクリームの一次皮膚刺激性試験を実施したところ、一次皮膚刺激性はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 108人の被検者に20%ヒマワリ種子油を含むフェイスセラムの一次皮膚刺激性試験を実施したところ、一次皮膚刺激性はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 57人の被検者に0.264%ヒマワリ種子油を含むクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(EVIC Portgual,2006)
- [ヒト試験] 106人の被検者に6%ヒマワリ種子油を含むスキンクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 108人の被検者に20%ヒマワリ種子油を含むフェイスセラムを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
- [ヒト試験] 42人の被検者に1%ヒマワリ種子油を含む石鹸を対象に28日間連用試験を実施したところ、使用に適していると判断された(EVIC France,2009)
- [ヒト試験] 107人の被検者に39.8%ヒマワリ種子油を含むマッサージオイル0.2mLを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、1人の被検者は7回目の誘導パッチで一時的にわずかな紅斑が観察されたが、その後は観察されなかった。また他の被検者はいずれも皮膚反応は観察されず、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと判断された(Institut D’Expertise Clinique,2008)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
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ヒマワリ種子油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
- 日本油化学協会編集(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,104-110.
- 日本油化学協会編集(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
- 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,6.
- 杉田 浩一, 他(2017)「ひまわり油」新版 日本食品大事典,666-667.
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