ヒマシ油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分 可塑 分散
ヒマシ油
[化粧品成分表示名称]
・ヒマシ油

[医薬部外品表示名称]
・ヒマシ油

トウダイグサ科植物トウゴマ(学名:Ricinus communis 英名:Castor bean)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。

唐胡麻(トウゴマ)は、蓖麻(ヒマ)とも呼ばれ、北部アフリカを原産とし、紀元前1550年頃に書かれた古代エジプト最古の医学書「エーベルス・パピルス」にも薬物として収載されており、日本には9世紀ころに中国から渡来したため、唐胡麻という名があります(文献6:2011)

現在ではブラジルやインドを中心に世界各地で栽培されており、日本では冬に枯れるため1年草とされますが、熱帯では多年にわたり成長を続けます。

ヒマシ油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 7.0
リシノール酸 不飽和脂肪酸 C18:1 87.2-89.6
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 3.6
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 2.0
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 1.0

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

二重結合が1つの不飽和脂肪酸であるリシノール酸87.2-89.6%、オレイン酸が7.0%で合わせて90%以上を占めており、さらに二重結合が2つの不飽和脂肪酸であるリノール酸も少量ながら含まれるため、酸化安定性は低い(酸化しやすい)と考えられます。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
81-91 不乾性油 -10 – -13

一例としてこのように記載されており(文献3:1990)、100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は-10℃なので常温で液体です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、リップケア製品、メイクアップ化粧品、ヘアケア製品、洗浄製品などに広く使用されます(文献5:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、粘度が非常に高く、また吸湿性にも優れており、エタノールに溶解する性質を有しているため、アルコール性ヘアローションやヘアトニックなどに油性を添加する目的で配合されます(文献4:1997)

古くからポマードの基剤として用いられてきましたが、臭気と使用感から最近は使用されない傾向にあります。

可塑・分散

可塑(かそ)とは、柔らかく形を変えやすいという意味であり、可塑剤とは柔軟性や耐候性を改良するために添加される物質のことです。

ヒマシ油は、粘度がとても高いですが、顔料(着色成分)を練り込みやすく分散性にも優れているため、口紅やリップクリームの基剤をはじめとしてメイクアップ化粧品に広く使用されています(文献5:2016)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2004年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ヒマシ油の配合製品数と配合量の調査(2002-2004年)

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ヒマシ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ヒマシ油の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 50人の健常な被検者の背中に未希釈のヒマシ油0.05gを48時間パッチ適用し、パッチ除去30分後に皮膚刺激性をスコアリングしたところ、ヒマシ油はヒト皮膚に軽度の皮膚刺激を与えていた(Motoyoshi et al,1979)
  • [ヒト試験] 3人の男性被検者(22-31歳)の大腿部に未希釈のヒマシ油を10日蓮用し、反対側を対照とした。いずれの被検者においても皮膚刺激は観察されなかった(Meyer et al,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般的に非刺激-軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 結膜炎をともなう9人の患者の片眼に2%シクロスピポリンを含むヒマシ油を1日4回15日間連続で処置し、他方の眼は同じ手順でヒマシ油溶液のみで処理したところ、一過性で軽度の不快感および上皮変化が両眼で観察された(Secchi et al,1990)
  • [動物試験] ウサギの眼に未希釈のヒマシ油0.5mLを点眼し、18~24時間後に眼刺激をスコアリングしたところ、最大刺激スコア20のうち1が報告された(Carpenter and Smyth,1946)
  • [動物試験] ウサギの眼に未希釈のヒマシ油を点眼し、洗浄することなく、眼刺激性を評価したところ、角膜刺激は認められなかったが、虹彩と結膜のわずかなうっ血が観察された(In a study by Guillot et al,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なし-軽度の眼刺激性ありと報告されているため、一般的に非刺激-軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 接触皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品による接触皮膚炎を有していると思われる49人の被検者の背部にヒマシ油を含む化粧品を48時間Finn Chamber適用し、パッチ除去30分後および1,4および5日後に検査したところ、いずれの被検者もヒマシ油に陽性反応を示さなかった(Fujimoto et al,1997)
  • [ヒト試験] 化粧品による皮膚炎を有していると思われる76人の被検者の背部にヒマシ油を含む化粧品を48時間Finn Chamber適用し、パッチ除去30分後および1,4および5日後に検査したところ、76人中1人の被検者が陽性反応を示した。この反応は1日目(つまり30分後の次の検査)のみ観察された(Hino et al,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、接触皮膚炎を有する場合において、共通してほとんど感作性なしと報告されているため、接触皮膚炎を有する場合において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

– 接触皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品による接触皮膚炎を有していると思われる103人の被検者に未希釈のヒマシ油を対象にICDRG 基準に基づいて光感作試験を実施したところ、1人の被検者は通常の感作試験過程においてヒマシ油に陽性反応を示したが、光感作試験においてはいずれの被検者も光感作反応はみられなかった(Hashimoto et al,1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、接触皮膚炎を有する場合において、共通して光感作性なしと報告されているため、接触皮膚炎を有する場合において光感作性はほとんどないと考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの右耳の内側にヒマシ油を月~金の5日間2週間にわたって塗布し、0(目に見える角質症の増加なし)~5(コールタールの適用後にみられるような重度の病変)のスケールで評価したところ、異なるウサギの反復試験がしばしば同一の効果を生じなかったためにヒマシ油について1(コメドの可能性まで見据えられた目に見える角質の増加)が報告されたが、有意ではないと考えられた(Fulton et al,1976)
  • [動物試験] 3匹のウサギの外耳にヒマシ油を週5回合計14回適用し、0(陰性)~5(重症)のスケールで評価したところ、ヒマシ油のコメドジェニシティスコアは0~1であり、濾胞内のケラチン含量のわずかな増加に相当したが、濾胞上皮に実質的な変化はなかった(Morris and Kwan,1983)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片耳の内側全体に10%ヒマシ油を含むPG1mLを週5日2週間にわたって適用し、0~1(濾胞性角化症の有意な増加なし)から4~5(濾胞性角化症の広範な増加)のスケールで評価したところ、コメドジェニシティスコアは1が報告された(Fulton,1989)

と記載されています。

試験結果をみるかぎり、アクネ菌増殖性なしと報告されているため、アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ヒマシ油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2007)「Final Report on the Safety Assessment of Ricinus Communis (Castor) Seed Oil, Hydrogenated Castor Oil, Glyceryl Ricinoleate, Glyceryl Ricinoleate SE, Ricinoleic Acid, Potassium Ricinoleate, Sodium Ricinoleate, Zinc Ricinoleate, Cetyl Ricinoleate, Ethyl Ricinoleate, Glycol Ricinoleate, Isopropyl Ricinoleate, Methyl Ricinoleate, and Octyldodecyl Ricinoleate」International Journal of Toxicology(26)(3),31-77.
  2. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油脂化学便覧 改訂3版,99-101.
  4. 広田 博(1997)「不乾性油」化粧品用油脂の科学,18-26.
  5. 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,6.
  6. 鈴木 洋(2011)「蓖麻子(ひまし)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,396-397.

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