パーム核油とは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡 感触改良
パーム核油
[化粧品成分表示名称]
・パーム核油

[医薬部外品表示名称]
・パーム核油

ヤシ科植物ギニアアブラヤシ(学名:Elaeis guineensis 英名:palm)の種子(パーム核)から得られる植物油脂です。

ギニアアブラヤシは、アンゴラやガンビア周辺の西アフリカを原産とし、古くから中部アフリカの熱帯雨林地帯でその果実から得られる油脂を目的に広く栽培されています。

単位面積当たりから得られる油脂の量は植物中屈指であり、今日ではマレーシア、ナイジェリアおよびインドネシアなどで大規模栽培されており、収穫された果実は、石鹸や食用植物油の生産に使われています。

パーム核油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 16.8
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 0.3
カプロン酸 飽和脂肪酸 C6:0 0.1
カプリル酸 飽和脂肪酸 C8:0 3.6
カプリン酸 飽和脂肪酸 C10:0 3.5
ラウリン酸 飽和脂肪酸 C12:0 47.3
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 16.4
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 9.1
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 2.3

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

脂肪酸組成はヤシ油と類似していますが、ラウリン酸についでオレイン酸含有量が多いのがパーム核油の特徴で、ラウリン酸およびミリスチン酸は飽和脂肪酸で二重結合が0であり、オレイン酸は二重結合が1つの不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性はかなり高いと考えられます。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
12-20 不乾性油 25-30

一例としてこのように記載されていますが(文献3:1990)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、融点は20-28℃であるため、日本おいては、冬など25℃以下の気温では固体ですが、夏など25℃を超えてくると液体化し始めます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、固形石鹸、洗顔石鹸&洗顔料、洗浄製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されます。

ナトリウムセッケン合成による起泡・洗浄

ナトリウムセッケン合成による起泡・洗浄に関しては、まず前提知識としてナトリウムセッケン合成およびナトリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケン(∗2)は、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

∗2 セッケンには、「セッケン」「石けん」「せっけん」「石鹸」など4種の表記法があり、これらの用語には界面活性剤を意味する場合と界面活性剤を主剤とした製品を意味する場合がありますが、化学分野では界面活性剤を「セッケン」、製品を「せっけん」と表現する決まりになっています。それらを考慮し、ここでは界面活性剤を「セッケン」、セッケンを主剤とした製品を「石鹸」と記載しています。

  • ケン化法:油脂 + 水酸化Na → 油脂脂肪酸Na + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化Na → 高級脂肪酸Na + 水

この2種類があります。

パーム核油は植物油脂であることからケン化法が用いられ、またケン化に用いるアルカリを水酸化Naにすることでナトリウムセッケン(固形石鹸)が得られます(文献4:1979)

上記では、ケン化法によって合成されるセッケンを「油脂脂肪酸Na」と表記しましたが、ケン化法で得られるパーム核油のナトリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na パーム核油、水酸化Na
パーム核脂肪酸Na
石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「パーム核油」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naが一緒に記載されます。

次にパーム核油を使用したナトリウムセッケンの洗浄力および起泡力についてですが、パーム核油の脂肪酸組成の比率は、一例としてラウリン酸47%、オレイン酸17%およびミリスチン酸16%を主体とした構成となっており、以下の各高級脂肪酸の洗浄力および起泡力の比較表をみるとわかるように、

脂肪酸名 洗浄力
(温水)
洗浄力
(冷水)
起泡性 泡持続性
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

パーム核油の脂肪酸組成は、冷水および温水の両方で比較的安定した洗浄力および起泡力を有していることが知られています(文献5:1990)

ただし、市販の洗浄製品は複数の植物油脂を混合したナトリウムセッケンが使用されていることから、配合されているナトリウムセッケンの総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(文献6:1993)

カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄

カリウムセッケン合成による洗浄・起泡に関しては、まず前提知識としてカリウムセッケン合成およびカリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケンは、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

  • ケン化法:油脂 + 水酸化K → 油脂脂肪酸K + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化K → 高級脂肪酸K + 水

この2種類があります。

パーム核油は植物油脂であることからケン化法が用いられ、またケン化に用いるアルカリを水酸化Kにすることでカリウムセッケン(液体石鹸)が得られます(文献4:1979)

上記では、ケン化法によって合成されるセッケンを「油脂脂肪酸K」と表記しましたが、ケン化法で得られるパーム核油のカリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化K パーム核油、水酸化K
パーム核脂肪酸K
カリ石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「パーム核油」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Kが一緒に記載されます。

また、ナトリウムセッケンやカリウムセッケンのほかに、ナトリウムセッケン(固形セッケン)にカリウムセッケン(液体セッケン)を添加することで、水に対する溶けやすさや泡立ちを改良したカリ含有ナトリウムセッケンがあり、パーム核油を含むカリ含有セッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na + 水酸化K パーム核油、水酸化Na、水酸化K
パーム核脂肪酸Na、パーム核脂肪酸K
カリ含有石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「パーム核油」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naおよび水酸化Kが一緒に記載されます。

次に、カリウムセッケンによる起泡・選択洗浄に関しては、カリウムセッケンはナトリウムセッケンより溶解性が高く、起泡性に優れていることが知られています(文献7:1958)

また、30℃および40℃での各脂肪酸における0.5%濃度の脂肪酸カリウムセッケンの起泡力および泡持続性は、

  脂肪酸名 起泡性 泡持続性
30℃ 40℃ 30℃ 40℃
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献8:1989)、パーム核油の脂肪酸組成の比率は、一例としてラウリン酸47%、オレイン酸17%およびミリスチン酸16%を主体とした構成となっていることから、30℃および40℃の両方で安定した起泡力および泡持続性が知られています。

カリウムセッケンは主に洗顔料に使用されますが、洗顔の場合、過剰な皮脂や汚れを洗浄することが必要である一方で、皮膚の恒常性を保持するための角質細胞間脂質などまで洗い流してしまうことは望ましいことではありません。

このような背景から、洗顔において皮膚のつっぱり感や肌荒れを回避するために、皮膚の恒常性に必要な物質を極力洗い流さない選択洗浄性(∗3)が重要であり、顔におけるカリウムセッケンの選択洗浄性とは、皮膚の向上性を保つために重要な因子である角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルを残存させ(∗4)、皮脂由来脂質であるスクワレンを汚れとともに洗浄することを意味します。

∗3 選択洗浄性とは、ある物質はよく洗い流すが、ある物質は洗い流さず残すという洗浄剤の性質のことです。

∗4 角質細胞間脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルの残存は皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐための重要な因子であると考えられています。

1989年にポーラ化成工業によって報告された各カリウムセッケンの選択洗浄性検証によると、

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールエステルおよびコレステロールの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を0.5%濃度の各カリウムセッケン洗浄液300mLで30分間洗浄し、水洗いを比較として、30分後の豚皮に残存した皮脂組成を検討したところ、以下のグラフのように、

30分洗浄後のブタ皮の皮膚組成比率の変化

水洗いでは、親水性の高いコレステロールが除去され、コレステロール比率の減少を示した。

また、ミリスチン酸カリウムセッケンは他のカリウムセッケンほどではないが、スクワレンを洗浄し、コレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性を示した。

さらに、複数のカリウムセッケンを組み合わせた処方系においても同様の選択洗浄性がみられ、とくにパルミチン酸カリウムセッケンおよびステアリン酸カリウムセッケンを組み合わせたものがスクワレン除去率が高く、

  • ラウリン酸K、ミリスチン酸K
  • ミリスチン酸K、パルミチン酸K、ステアリン酸K
  • パルミチン酸K、ステアリン酸K

これらのいずれの組み合わせにおいてもコレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1989)、パーム核油の脂肪酸組成の比率は、一例としてラウリン酸47%、オレイン酸17%およびミリスチン酸16%を主体とした構成となっていることから、コレステロールエステルおよびコレステロールは残しており、選択洗浄性を有していると考えられます。

感触改良

感触改良に関しては、油性基剤の硬さと粘性を調節する目的でスキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されています。

感触改良剤としてパーム油および水添パーム油と併用して用いられることがあり、これらが記載されている場合は感触改良目的である可能性が考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1997年および2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

パーム核油の配合製品数と配合量の調査(1997年および2010年)

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パーム核油の安全性(刺激性・アレルギー)について

パーム核油の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2000)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に21.35%パーム核油を含む固形石鹸フレークの0.1%,0.5%,1.0%,2.5%および5.0%水溶液0.3mLをそれぞれ24時間半閉塞パッチ適用し、パッチ除去24または48時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者にも皮膚反応はみられなかった(Hill Top Research Inc,1995)
  • [ヒト試験] 119人の被検者に21.25%パーム核油を含む固形石鹸フレークおよび21.25%パーム核油を含む固形石鹸フレークの0.1%,0.5%,1.0%,2.5%および5.0%水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者に軽度の紅斑が観察され、そのうち1人の被検者はチャレンジ期間においても軽度の紅斑が観察されたが、いずれの濃度においても21.25%パーム核油を含む固形石鹸フレークが接触感作剤であるという証拠は得られなかった(Hill Top Research Inc,1995)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に洗浄製品使用時において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

パーム油はベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2000)「Final Report on the Safety Assessmentof Elaeis Guineensis (Palm) Oil, Elaeis Guineensis (Palm) Kernel Oil, Hydrogenated Palm Oil and Hydrogenated Palm Kernel Oil」International Journal of Toxicology(19)(2),7–28.
  2. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油脂化学便覧 改訂3版,99-101.
  4. 小野 正宏(1979)「身のまわりの化学”セッケンおよびシャンプー”」化学教育(27)(5),297-301.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「石けん」香粧品科学 理論と実際 第4版,336-348.
  6. 宮澤 清(1993)「化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感」油化学(42)(10),768-774.
  7. Luis Mauri, 他(1958)「起ホウ力の評価」油化学(27)(5),104-106.
  8. 大矢 勝, 他(1989)「衣類の泡沫洗浄に関する研究」繊維製品消費科学(30)(2),87-93.
  9. 橋本 文章, 他(1989)「界面活性剤の皮膚への吸着性と洗顔料による選択洗浄性」日本化粧品技術者会誌(23)(2),126-133.

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