ツバキ種子油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分 抗菌成分
ツバキ種子油
[化粧品成分表示名称]
・ツバキ種子油

[医薬部外品表示名称]
・ツバキ油

ツバキ科植物ヤブツバキ(学名:Camellia japonica)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。

ツバキは日本、朝鮮半島南部、中国などを原産とし、野生種をもとに日本やヨーロッパで多様な種が作出されています。

古代から霊力の宿る神聖な木とされ、神社やお寺の境内に植えられており、また種子から採れる油は食用から美容まで幅広く使用されています(文献4:2018)

ツバキ種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 85.0
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 4.1
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 0.6
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 8.2
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 2.1

このような種類と比率で構成されています(文献1:1990)

オレイン酸が約85%を占めており、オレイン酸は二重結合が1つのみの不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性はかなり高いと考えられます。

ただし、2004年に資生堂によってオレイン酸やパルミトレイン酸など二重結合が1つの不飽和脂肪酸が恒常的に過剰に存在すると、顔面毛穴周囲の肌状態およびキメの状態が悪化する可能性が高いことが報告されています(文献5:2004)

オレイン酸はヒト皮脂中に存在する代表的な不飽和脂肪酸であり、10代や若い成人をはじめ日常的に皮脂量が多いと感じている場合は、オレイン酸配合製品の使用で毛穴状態やキメの悪化につながる可能性も考えられます。

またヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
78-87 不乾性油

一例としてこのように記載されており(文献2:1990)、100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどありません。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ヘアケア製品、洗浄製品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、リップケア製品、日焼け止め製品、ネイル製品などに広く使用されます(文献3:1997)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、1990年に名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科によって10%ツバキ種子油配合多るローションの4週間連用試験によって乾皮症や皮脂減少性湿疹群と炎症後の皮膚乾燥では有用性14/14(100%)と高い値を示したと報告されており(文献7:1990)、ツバキ種子油は皮脂減少性の乾燥肌などに優れたエモリエント作用が認められています。

またオリーブ果実油と比較して毛髪への吸収性が高く、毛髪に柔軟性および弾力性を付与することもあり、古くから髪油として使用されています(文献3:1997)

黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用

黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、健康な状態においてはそれが病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能しており、皮膚の恒常性を保つ一因となっています。

皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占め、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献9:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

またアトピー性皮膚炎発症の原因のひとつに黄色ブドウ球菌の異常増殖が関係していることが報告されています(文献10:2015)

1996年に昭和薬科大学微生物学研究室 によって報告されたツバキ種子油における黄色ブドウ球菌の増殖抑制検証によると、

アトピー性皮膚炎患部からは高率に黄色ブドウ球菌が分離され、増悪因子であると考えられている。

精製ツバキ油にはアトピー性皮膚炎のスキンケアに用いられた際に有用であった例が報告されているが、その効果も主に乾燥性皮膚を改善するスキンケア効果の間接的なものと思われている。

しかし、精製ツバキ油のアトピー性皮膚炎に対する効果はスキンケア効果だけでなく、トリグリセリドとして含まれるオレイン酸の黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用による可能性もあるのではないかと考え、局方ツバキ油、精製ツバキ油およびオリーブ油などの植物油脂による黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用について検討し、脂肪酸のリノール酸およびオレイン酸、化粧品基剤のスクワランミネラルオイルについて比較した。

各種細菌の発育支持能に優れた培地(BHI)に各試料80μg/mLを添加し、均一に混ぜた後に培養した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus FDA 209 P)を1.0×10⁷CFU/mLになるように接種した。

試料を含まない培地における増殖と比較し、それぞれの試料が増殖に与える最小濃度を求めたところ、以下の表のように(∗1)(∗2)

∗1 NI(Not inhibitory at the concentrations tested)とは、試験した濃度では増殖抑制効果は認められないという意味です。

∗2 ID50(median infective dose:50%感染量)とは、細菌やウイルスなどの定量法の一つで、多数の動物や培養組織に、感染性の微生物を含む検体を接種した場合に、全体の50%に感染させると推定される微生物等の量を表す数値です。

試料 試料が増殖に与える最小濃度(μg/mL) ID50(μg/mL)
リノール酸 1.25 1.6
オレイン酸 5 6.0
局方ツバキ油 2.5 3.5
精製ツバキ油 10 35
オリーブ油 20 ≧100
スクワラン NI NI
ミネラルオイル NI NI

局方ツバキ油および精製ツバキ油は、黄色ブドウ球菌の増殖抑制効果が示された。

また局方ツバキ油はオレイン酸の½濃度で影響し、植物油脂の中でも最も低濃度で影響した。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1996)、ツバキ種子油に黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用が認められています。

補足ですが、局方ツバキ油とは、医薬品に用いられるグレードのツバキ油であり、黄色ブドウ球菌への抗菌性は高い一方で、アトピー性皮膚炎を有する皮膚へはかなりの刺激性が予想されるため、使用する場合は精製ツバキ油が推奨されています(文献8:1996)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ツバキ種子油の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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ツバキ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ツバキ種子油の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科の安全性評価(文献6:1988;文献7:1990)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚疾患患者22人(接触皮膚炎10人、酒さ様皮膚炎3人、アトピー性皮膚炎3人、色素沈着型接触皮膚炎5人、肝斑6人など)に5%ツバキ種子油配合石けんを48時間閉塞パッチ適用したところ、皮膚刺激スコアは11.6であり、安全性に優れた製品であると判定された(1988)
  • [ヒト試験] 皮膚疾患患者33人(接触皮膚炎22人、アトピー性皮膚炎2人、湿疹4人、酒さ様皮膚炎2人など)に10%ツバキ種子油配合乳液、水溶性コラーゲン配合乳液(市販製品)、ビタミンA,D,E配合乳液(市販製品)、また陰性対照として白色ワセリンを48時間閉塞パッチ適用したところ、皮膚刺激スコアはそれぞれ13.6、15.1、12.1、1.5であり、安全性に優れた製品であると判定された(1990)
  • [ヒト試験] 皮膚疾患患者20人(乾皮症11人、皮脂減少性湿疹1人、アトピー性皮膚炎3人、酒さ様皮膚炎3人など)に10%ツバキ種子油配合オイルローションを4週間にわたって朝晩1日2回連用してもらい、試験開始前、2週間後および4週間後に皮膚反応を観察したところ、酒さ様皮膚炎を有する2人の患者にそれぞれ瘙痒感の増強とヒリヒリ感の訴えがあり、この2人は使用中止により速やかに症状は改善された。ほかのいずれの患者も皮膚反応はみられなかった(1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2人の副作用を除いて共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

酒さ様皮膚炎を有する場合は、瘙痒感の増強またはヒリヒリ感が起こる可能性が考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ツバキ種子油はエモリエント成分、ベース成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分 抗菌成分

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文献一覧:

  1. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
  2. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油脂化学便覧 改訂3版,99-101.
  3. 広田 博(1997)「不乾性油」化粧品用油脂の科学,18-26.
  4. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ツバキ」ハーブのすべてがわかる事典,137.
  5. “株式会社資生堂”(2004)「ヒト頬部毛穴の目立ちと肌状態」, <https://www.shiseidogroup.jp/rd/doctor/informationletter/backnumber/pdf/2004_001_02.pdf> 2019年1月31日アクセス.
  6. 早川 律子, 他(1988)「ツバキ油配合透明石ケンの皮膚安全性評価と臨床試験結果」皮膚(30)(3),413-418.
  7. 早川 律子, 他(1990)「乾燥皮膚に対するツバキ油配合オイルローション (A-10) の有用性の検討」皮膚(32)(6),833-840.
  8. 新井 武利, 他(1996)「脂肪酸, 精製ツバキ油およびオリーブ油の黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制作用について」日本化学療法学会雑誌(44)(10),786-791.
  9. 石坂 要, 他(2001)「健常人より分離した皮膚常在菌について」日本化粧品技術者会誌(35)(1),34-41.
  10. Kobayashi T, et al(2015)「Dysbiosis and Staphylococcus aureus Colonization Drives Inflammation in Atopic Dermatitis.」Immunity(42)(4),756-766.

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