ソルビトールとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 ベース成分 透明化
ソルビトール
[化粧品成分表示名称]
・ソルビトール

[医薬部外品表示名称]
・ソルビット液

グルコース(ブドウ糖)を還元して得られる糖アルコール(糖類)であり、糖アルコール類が多価アルコール(∗1)に属していることから多価アルコール(六価アルコール)でもあります。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

ソルビトールは、ヒトの小腸では分解・吸収されない糖アルコールであり、また以下の表をみてもらうとわかるように、

糖アルコール 砂糖を100としたときの甘味度 エネルギー換算係数(kal/g)
エリスリトール 80 0
キシリトール 100 3
ソルビトール 60 3
マンニトール 40 2
マルチトール 75 2
ラクチトール 30 2
パラチニット 50 2

低カロリーの甘味料であり(文献5:1998)、さらには糖アルコールの中でも吸湿性・保水性に優れていることから、食品添加物として食品の保湿性向上、品質改良の目的で汎用されています(文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献6:1993;文献7:1985)

皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用

皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用に関しては、1993年に資生堂によって報告された保湿剤のまとめによると、

ソルビトールをはじめとする代表的保湿剤の吸湿性を比較検討したところ、以下のグラフのように、

保湿剤の各相対湿度における吸湿性への影響

50%相対湿度21-27℃における多価アルコールの吸湿性

ソルビトールは、各相対湿度においてもグリセリンほどではないが、吸湿性が示された。

また水分保持性を相対湿度50%、25℃の環境下で他の保湿剤類と比較したところ、以下のグラフのように、

各保湿剤の水分保持性(相対湿度50%,25℃)

グリセリンほどではないが、ソルビトールに水分保持性が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1993)、ソルビトールに穏和な皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用が認められています。

また1985年にポーラ化成工業によって報告された各保湿剤の保湿性比較検証によると、

各保湿剤の吸湿性および保水性を検討した。

吸湿性は、相対湿度80%(20℃)に調整したデシケーター中に乾燥した各試料(ヒアルロン酸Na,ポリペプチド,グリセリン,PEG4000,PCA-Naおよびソルビトール)1gを放置し、10分単位で60分までの短時間と1日単位で5日までの長時間の吸湿量を測定したところ、以下のグラフのように、

ソルビトールの短時間における吸湿性

ソルビトールの長時間における吸湿性

ソルビトールは、他の優れた保湿剤ほどの吸湿性・保水性は有していないが、穏和ながら吸湿持続性を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1985)、ソルビトールに穏和な皮表の柔軟化および水分量増加による保湿作用が認められています。

石鹸の透明化

石鹸の透明化に関しては、従来より枠練石鹸生地に、糖類であるショ糖(スクロース)やソルビトール、多価アルコールであるグリセリンPGまたはこれらの混合物を配合することによって石鹸が透明になることが明らかにされています(文献11:1975)

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ソルビトールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ソルビトールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:やや増殖しやすい

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、他の保湿剤に比べてアクネ菌がやや増殖しやすいため、脂性肌やニキビができやすい場合は注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

FDAの連邦規定(文献2:2017)によると、

  • ソルビトールは、食品添加物として制限を設けられておらず、一般的に安全性が認められている

と記載されています。

試験データはみあたりませんが、糖類であり、また保湿剤としての10年以上の使用実績があり、さらに食品、医薬品などにも使用される中で、皮膚刺激および皮膚感作の報告がないため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたりませんが、糖類であり化学構造的に刺激性がないと考えられ、また点眼薬にも使用されていることから、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BGグリセリンDPGジグリセリントレハロースグルコース、ソルビトール、プロパンジオールキシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられるが、ソルビトールは、通常の約2倍のアクネ菌増加率を示した。

このような検証結果が報告されており(文献3:2009)アクネ菌がやや増殖しやすいと考えられます。

安全性についての補足

2012年3月24日にジュネーブ時事で、

 イタリアで米インターネット競売大手イーベイを通じ入手された低カロリー甘味料「ソルビトール」を摂取した女性(28)が死亡する問題が起き、同社は26日、サイト上でソルビトールの販売を停止したと発表した。死因は不明だが、同社は「問題が明らかになるまで販売を見合わせる」としている。

報道によると、女性は食品アレルギー検査を受けたクリニックでソルビトールを摂取後、24日に死亡。別の女性2人も体調不良を訴えた。処方した医師はイーベイを通じて入手したと話しているという。

保健省も消費者に摂取しないよう警告した。 

このような報道がありましたが(文献8:2012)、2012年3月30日に食品安全委員会は、

 犠牲者が消費した「食用」とされた製品を分析したところ、ソルビトールではなく、食品添加物の亜硝酸ナトリウムであった。亜硝酸ナトリウムは、衛生当局の推奨する一日摂取許容量(ADI)の0.06mg/kg体重/日(亜硝酸イオン表示)を超えて摂取すると心血管疾病を引き起こす可能性があるとされている。この内容物が入れ替わった原因と欧州域内の流通経路について、英国とイタリアで捜査が行われている。 

このように発表しており(文献9:2012)、またこれらの報道をうけて2012年4月3日にソルビトールを国内で製造・販売しているウエノフードテクノが公開したソルビトールの安全性に関する文書によると、

 ソルビトールは梨、りんご等の果実における主要な甘味成分です。ドライプルーンでは全体
重量の約 2 割を占めることが知られています。海藻類にも含まれるなど、自然界に広く存在する物質です。

食品添加物としての利用も数十年(天然物抽出では1930年頃から)に及びます。食品添加物の安全性を評価する国際機関で、ソルビトールの1日摂取許容量を「特定しない」と評価しています。1日摂取許容量を特定しないとは、極めて毒性が低く毎日摂取しても健康に危害をもたらさないので、設定する必要がないことを意味しています。 

このように(文献10:2012-2016)、改めてソルビトールの安全性を強調しており、このような背景からソルビトールの安全性に問題がないことが再確認されています。

∗∗∗

ソルビトールは保湿成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 ベース成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2016)「糖類」パーソナルケアハンドブック,104.
  2. “FDA:Food and Drug Administration”(2017)「Code of Federal Regulations Title 21 Sec. 184.1835 Sorbitol」, <https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?fr=184.1835> 2018年6月8日アクセス.
  3. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2018年12月30日アクセス.
  4. 鈴木 洋(2011)「糖質の栄養学」カラー版健康食品・サプリメントの事典,214-225.
  5. 田中 潔, 他(1998)「糖アルコールの機能と応用」Fragrance Journal(26)(7),33-38.
  6. 西山 聖二, 他(1993)「保湿剤」色材協会誌(66)(6),371-379.
  7. 外岡 憲明(1985)「ヒアルロン酸ナトリウムの保湿性」皮膚(27)(2),296-302.
  8. “YAHOOニュース”(2012)「伊で甘味料摂取の女性死亡=米イーベイが販売停止」, <https://web.archive.org/web/20120330043118/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120327-00000023-jij-int> 2018年6月8日アクセス.
  9. “食品安全委員会”(2012)「フランス厚生・連帯省、「Sorbitol Food Grade(食用ソルビトール)」製品の消費に関するリスクを注意喚起」, <http://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu03560150340> 2018年6月8日アクセス.
  10. “株式会社ウエノフードテクノ”(2012-2016)「イタリアにおけるソルビトール関連報道について」, <https://www.ueno-food.co.jp/information/docs/120403sorbitol.pdf> 2018年6月8日アクセス.
  11. 花王株式会社(1975)「透明石鹸の製造法」特開昭50-135104.

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