ステアリン酸とは…成分効果を解説

ベース成分 界面活性 感触改良 表面処理
ステアリン酸
[化粧品成分表示名称]
・ステアリン酸

[医薬部外品表示名称]
・ステアリン酸

植物油脂を鹸化など加水分解して得られた混合脂肪酸を冷圧または高圧・分留して得られる、化学構造的に炭素数:二重結合数がC18:0で構成された高級脂肪酸(飽和脂肪酸)です。

高級脂肪酸とは、化学構造的に炭素数12以上の脂肪酸のことをいい、炭素数が多いとそれだけ炭素鎖が長くなるため、長鎖脂肪酸とも呼ばれます。

また炭素鎖が長いほど(炭素数が大きいほど)融点(∗1)が高くなり、ステアリン酸の融点は69.6℃です(文献2:2016)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

高級脂肪酸は、以下の表のように大きく2種類に分類され、

  飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
化学結合 すべて単結合(飽和結合) 二重結合や三重結合を含む(不飽和結合)
含有油脂 動物性油脂に多い 植物性油脂に多い
常温での状態 固体(脂) 液体(油)
融点 高い 低い
酸化安定性 高い 比較的低い

化学構造的に二重結合(不飽和結合)の数が多いほど酸化安定性が低くなりますが、ステアリン酸は化学構造的にすべて単結合(飽和結合)で構成された飽和脂肪酸であり、酸化安定性の高い脂肪酸です(文献3:1997)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品など様々な製品に使用されます(文献2:2016)

化粧品に配合されるステアリン酸は、原料となる植物油脂や製造方法によってパルミチン酸との混合物も多いため、パルミチン酸も一緒に記載されることがあります。

セッケンによる界面活性作用

セッケンによる界面活性作用に関しては、高級脂肪酸とアルカリを反応させることで界面活性作用・洗浄作用を有する石ケンが得られるため、石ケンを得るために他の高級脂肪酸と一緒に配合されます。

高級脂肪酸を使用した石ケンの作り方は中和法と呼ばれるもので、一般的には高級脂肪酸のうち3種類ほどが使用され、これにアルカリ剤である水酸化Naまたは水酸化Kを反応させて得られます。

一例としてステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸を使用して各アルカリと反応させた場合、

ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸 + 水酸化Na → 石ケン素地 + 水
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸 + 水酸化K → カリ石ケン素地 + 水

という反応になります。

成分表示一覧には、

  • ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、水酸化Na
  • ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、水酸化K

このように反応前の成分がすべて記載されることもありますし、また、

  • ミリスチン酸Na、パルミチン酸Na、ステアリン酸Na
  • ミリスチン酸K、パルミチン酸K、ステアリン酸K

このように反応後の成分がすべて記載されることもあります。

さらにすべてまとめて表示されることもあり、まとめて表示される場合、

  • 石ケン素地
  • カリ石ケン素地

複数の高級脂肪酸を水酸化Naで反応させた場合は石ケン素地、複数の高級脂肪酸を水酸化Kで反応させた場合はカリ石ケン素地と記載されます。

こういった背景から、高級脂肪酸が3種類ほど記載され、かつ水酸化Naまたは水酸化Kが記載されていたら石ケンとして配合されていると考えられます。

次に各高級脂肪酸の石ケンにおける性質は、

脂肪酸名 洗浄力
(温水)
洗浄力
(冷水)
起泡性 泡持続性 泡質 皮膚適正
飽和脂肪酸 ラウリン酸 粗い
ミリスチン酸 繊細
パルミチン酸 微細
ステアリン酸 微細
不飽和脂肪酸 オレイン酸 微細
リノール酸

このような傾向が明らかにされており(文献5:1990)、種類や割合を変えることで洗浄力、気泡力、泡質、泡持続性などが変わります。

ただし、とくに洗顔の場合は、高い洗浄力でなんでも洗い流せばいいというものではなく、過剰な皮脂や汚れは洗浄することが望ましいですが、一方で皮膚の恒常性を保つための角質細胞間脂質などまで洗い流してしまうことは望ましいことではありません。

そのため、皮膚のつっぱり感や肌荒れを回避するために皮膚に必要な物質は極力洗い流さない選択洗浄性(∗1)が重要であり、脂肪酸石ケンの選択洗浄性は、1989年にポーラ化成工業によって報告された脂肪酸石ケンの選択洗浄性試験によると、

∗1 選択洗浄性とは、ある物質はよく洗い流すが、ある物質は洗い流さず残すという洗浄剤の性質のことで、ここに示す選択洗浄性とは、皮膚の向上性を保つために重要な因子である角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルを残存させ、皮脂由来脂質であるスクワレンを汚れとともに洗浄することを意味します。

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を用いて各脂肪酸石ケンで洗浄し、また比較として水洗いを取り入れ、洗浄により残存した豚皮の皮脂組成を検討したところ、以下のグラフのように、

洗浄30分後のモデル皮脂組成比率の変化

水のみの洗浄では、親水性の高いコレステロールが除去され、コレステロール比率が減少し、各脂肪酸石ケンに関しては、スクワレンを除去し角層細胞由来脂質を比較的多く残す選択洗浄性を示したものは、ラウリン酸K、パルミチン酸K、ステアリン酸Kであった。

パルミチン酸およびステアリン酸は、親油基が大きく、油や非極性溶媒に溶けやすいため、非極性油のスクワランに対して選択洗浄性を示したと考えられる。

またラウリン酸は水への溶解性の高さが影響したと思われる。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1989)、ステアリン酸は皮脂は洗浄しますが、角層細胞の脂質は比較的洗浄しない選択洗浄性が認められています。

また、1989年にポーラ化成工業によって報告された洗浄により残存吸着した脂肪酸量の検証によると、

5分、15分または30分の洗浄による各脂肪酸吸着量の変化を検討したところ、以下のグラフのように、

脂肪酸石ケンによる洗顔後に残存吸着した脂肪酸量

ラウリン酸およびミリスチン酸は皮膚吸着量が多く、また洗浄時間とともに増加がみられた。

いっぽうパルミチン酸およびステアリン酸は皮膚吸着量が少なく、かつ洗浄時間が増加しても吸着量に変化がみられなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:1989)、ステアリン酸は優れた皮膚吸着抑制が認められています。

これら選択洗浄性と皮膚吸着性からステアリン酸は皮膚の恒常性をほとんど損なわず、安全性に優れた洗浄基材であると考えられます。

乳化物の感触改良

乳化物の感触改良に関しては、クリームの伸びや硬さなど質感を調整するベース成分として非常に重要な成分であり、クリーム、乳液、ファンデーションなど乳化物に広く使用されています。

また高純度のステアリン酸に1%-5%オレイン酸を加えると稠度(∗2)が増加することが明らかになっています(文献4:1997)

∗2 稠度(ちょうど)とは、ペースト状物質の硬さ・軟らかさ・流動性などを意味します。

表面処理

表面処理に関しては、代表的な紫外線散乱剤である酸化チタン酸化亜鉛が直接皮膚に接触しないようにこれらをコーティングし、またステアリン酸で表面を覆うことで分散性が向上します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2006および2018年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ステアリン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2006および2018年)

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ステアリン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアリン酸の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 21人の被検者に40%ステアリン酸を含むミネラルオイルを単一パッチ適用したところ、皮膚刺激はなかった(CTFA,1972)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に13%ステアリン酸を含むフェイスクリームを開放パッチおよび閉塞パッチ下で単一適用したところ、閉塞パッチ下で4人の被検者に軽度の紅斑がみられたが、臨床的に問題はなく刺激剤ではないと結論づけられた(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 105人の被検者に13%ステアリン酸を含むフェイスクリームを4週間連用したところ、刺激剤ではなかった(CTFA,1973)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に8%ステアリン酸を含むシェービングクリームを閉塞パッチ下で48時間単一適用し、そののち家で2~4週間毎日使用してもらったところ、パッチに対して皮膚反応はなかったが、家での使用において2人の被検者から軽度のかゆみの報告があった(Leo Winter Associates,1980)
  • [ヒト試験] 13人の被検者に2.8%ステアリン酸を含むリキッドアイライナーを21日間連続パッチ適用したところ、連続刺激スコアは最大675のうち216で、中等の刺激性が観察された(HTR,1978)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に2.6%ステアリン酸を含む保湿剤を21日間連続パッチ適用したところ、連続刺激スコアは最大675のうち28および56で、基本的に非刺激性と結論付けられた(University of California,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに50%ステアリン酸を含むワセリンをDraize法に基づいて適用したところ、1日後の眼刺激スコアは4で、2日後に結膜刺激は正常にもどった(CTFA,1976)
  • [動物試験] 6匹のウサギに35%ステアリン酸を含むコーン油をDraize法に基づいて適用したところ、眼刺激スコアは1で、2日後には結膜刺激は正常にもどった(CTFA,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギに13%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用したところ、1匹のウサギに虹彩炎が観察された(CTFA,1983)
  • [動物試験] 6匹のウサギに2.8%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用し、3匹のウサギの眼をすすぎ、残りの3匹のウサギの眼をすすがなかったところ、1日後で眼をすすがなかったウサギの眼刺激スコアは0.7で、2日後には結膜紅斑は正常にもどった。眼をすすいだウサギに眼刺激はみられなかった(CPT,1978)
  • [動物試験] 9匹のウサギに2.8%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用し、6匹のウサギの眼はすすがず、3匹のウサギの眼はすすいだところ、眼をすすがなかったウサギの48時間後の眼刺激スコアは0.7で72時間後は0.3であった。眼をすすいだウサギの眼刺激スコアも同様でわずかな結膜紅斑がみられた(Consumer Product Testing Co,1982)
  • [動物試験] 3匹のウサギに2.8%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用したところ、1時間後で最大眼刺激スコア6.0で、結膜刺激は24時間持続した(TML,1983)
  • [動物試験] 3匹のウサギに2.8%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用したところ、1時間後で最大眼刺激スコア4.0で、わずかな結膜紅斑が24時間持続した(TML,1983)
  • [動物試験] 4匹のウサギに1%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用したところ、1時間後で最大眼刺激スコア6.0で、すべてのウサギに結膜刺激および2匹のウサギにわずかな角膜刺激がみられたが、24時間で正常にもどった(CTFA,1977)
  • [動物試験] 6匹のウサギに1%ステアリン酸を含む製剤をDraize法に基づいて適用したところ、1時間後で最大眼刺激スコア2.83で、1~3匹のウサギにわずかな角膜刺激と虹彩炎がみられた(CTFA,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、多くの試験で一過性のわずかな眼刺激性が報告されているため、眼刺激性は一過性のわずかな眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者に13%ステアリン酸を含むフェイスクリームを開放パッチおよび閉塞パッチ下で繰り返し適用(HRIPT)したところ、誘導期間において数人の被検者の閉塞パッチ部位に軽度の反応がみられたが、チャレンジ期間においては反応はなかった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 116人の被検者に10%ステアリン酸を含む製剤を繰り返し適用(HRIPT)したところ、誘導期間において1人の被検者に軽度~中等の紅斑がみられたが、チャレンジ期間では皮膚反応はみられなかった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に7.7%ステアリン酸を含むマスカラを繰り返し適用(HRIPT)したところ、誘導期間の8回目のパッチにおいて1人の被検者に皮膚反応があったが、チャレンジパッチでは反応はなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 205人の被検者に5%ステアリン酸を含むマスカラを半閉塞パッチで繰り返し適用(HRIPT)したところ、皮膚刺激および皮膚感作性はみられなかった(UCLA,1985)
  • [ヒト試験] 51人の被検者に2.8%ステアリン酸を含むハンドローションを繰り返し適用(HRIPT)したところ、2人の被検者が誘導期間においてわずかな反応を示したが、チャレンジ期間では処置部位および未処置部位ともに反応は示さなかった(Food and Drug Research Laboratories,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者に13%ステアリン酸を含むフェイスクリームを24時間開放および閉塞パッチ適用し、パッチ除去48時間後に適用部位に事前に個人設定していた線量でUVAライトを3回照射した。次にチャレンジパッチ除去24時間後にUVAライトを3分照射し、皮膚反応を評価したところ、開放パッチ部位および閉塞パッチ部位でいずれの被検者にも皮膚反応は観察されなかった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に1%ステアリン酸を含む日焼け製剤を光感作試験を実施したところ、皮膚反応はなかった(CTFA,1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアリン酸はベース成分、界面活性剤、表面処理成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤 表面処理剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Oleic Acid, Laurie Acid, Palmitic Acid, Myristic Acid, and Stearic Acid」International Journal of Toxicology(6)(3),321-401.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「脂肪酸および有機酸」パーソナルケアハンドブック,33.
  3. 広田 博(1997)「脂肪酸の組成と分類」化粧品用油脂の科学,60-64.
  4. 広田 博(1997)「オレイン酸」化粧品用油脂の科学,68-69.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「石けん」香粧品科学 理論と実際 第4版,336-348.
  6. 橋本 文章, 他(1989)「界面活性剤の皮膚への吸着性と洗顔料による選択洗浄性」日本化粧品技術者会誌(23)(2),126-133.

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