ステアリルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 乳化 感触改良
ステアリルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ステアリルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ステアリルアルコール

パーム油を還元して得られる炭素数18の一価アルコールである高級アルコール(脂肪族アルコール)です。

一価アルコールとは、化学的に-OH(水酸基:ヒドロキシ基)が一つ結合したアルコールで、2つ以上結合したものは多価アルコールと呼ばれ(n個結合したものはn価アルコールとも呼ばれる)、高い吸湿性と保水性を有しているため化粧品に汎用されている保湿剤です。

化学的に水酸基(ヒドロキシ基:-OH)を1つだけもったアルコール(一価アルコール)の中で、炭素が6個以下のアルコールは低級アルコールに分類され、炭素数が少ないほど親水性が強まり(親油性が弱まり)ます。一方で炭素が8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類され、炭素数が多いほど親油性が強まり(親水性が弱まり)ます。

高級アルコールという分類なので誤解されやすいですが、一般にアルコールと呼ばれる物質は炭素数2の一価アルコールで低級アルコールであるエタノール(エチルアルコール)のみを指し、高級アルコールは物質として別物です。

ステアリルアルコールの物性(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

炭素数 分子量 融点(℃) 比重(20℃) 屈折率(20℃)
18 270.55 58.0 0.8392 1.4529

このように報告されています(文献3:1990)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、洗浄製品、ヘアケア製品、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに幅広く使用されています(文献1:1985;文献2:2016)

乳化補助

乳化補助に関しては、化学構造的にC18(炭素数18)の直鎖構造であり、その末端にある水酸基(OH)が親水活性を与え、油相と水相の界面においてその界面膜を強靭なものとし、乳化安定助剤として働くため、乳化物の乳化を安定化する目的でクリームや乳液に使用されます(文献4:1997)

とくにO/W型エマルションの粘度調整および安定化において重要とされています。

エマルションとは、通常は均一に混ざり合わない2種類の液体を混ぜる130nm~180nmほどの物質のことで、以下の画像のような構造を形成しています。

エマルションの構造

一方が他の液体中に微粒子分散している状態であり、上図は水の中に油が分散した状態のO/W型エマルション(∗2)であり、代表的なO/W型エマルションとしては水中に油滴分散している牛乳があります。

∗2 O/W型とはOil in Water型の略で、水中油型ともいい、水の中に油が分散した(水が多く油が少ない)状態のことです。

化粧品におけるO/W型エマルションとしては、ジェルをはじめジェル寄りのみずみずしい質感の乳液やクリームがあり、これらに多用されています。

感触改良

感触改良に関しては、適度にエモリエント性があり、皮膚に滑らかさと肌ざわりの良い感触を付与するため、古くからクリームや乳液に使用され続けています(文献2:2016)

セタノールと類似していますが、セタノールより乳化物の質感を若干硬めにできる傾向があるため、粘稠度(∗3)を高める目的で用いられます。

∗3 稠度(ちょうど)とは、ペースト状物質の硬さ・軟らかさ・流動性などを意味します。

またクリームリンス中に活性成分としてステアリル基を有する四級アンモニウム塩とステアリルアルコールを併用することで毛髪への吸着がよくなり、適度な光沢と滑らかさを付与します(文献4:1997)

ほかにも稠度、油ぎった感触の抑制およびロウの粘着性の調整剤として口紅に使用されます(文献2:2016;文献4:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1985年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ステアリルアルコールの配合製品数と配合量の調査結果(1985年および2002-2003年)

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ステアリルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ステアリルアルコールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎または皮膚乾燥などの症状を有している場合は、ごくまれにアレルギー型接触皮膚炎が報告されているため、注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に100%ステアリルアルコールを対象に24時間単回パッチ試験を実施したところ、1人の被検者に軽度の皮膚刺激が示されたが、他の被検者に皮膚刺激はなかった(CTFA,1973)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に24%ステアリルアルコールを含むデオドラント製剤を対象に21日間連用累積皮膚刺激性試験を閉塞パッチ下で実施し、累積皮膚刺激スコア(0-630)で評価したところ、総合スコアは128であり、わずかな刺激性と判断された(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 27人の被検者に17%ステアリルアルコールを含む制汗剤を対象に21日間連用累積皮膚刺激性試験を閉塞パッチ下で実施したところ、実質的に非刺激性であった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 9人の被検者に8%ステアリルアルコールを含むクリームを対象に21日間連用累積皮膚刺激性試験を閉塞パッチ下で実施し、累積皮膚刺激スコア(0-630)で評価したところ、総合スコアは36であり、実質的に非刺激性であった(Hill Top Research, 1979)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性-軽度の刺激性が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激またはまれに最小限-軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に各原料会社から提供された4つの100%ステアリルアルコールのサンプルを適用し、眼刺激性を評価したところ、1日目に3つのサンプルで最小限の眼刺激性がみられたが、残りのひとつは非刺激であった。すべての眼刺激は4日目までに消失した(CTFA,1973)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性-最小限の眼刺激性と報告されているため、眼刺激性は非刺激-最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー)について

– 健常皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者に17%ステアリルアルコールを含む制汗剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり皮膚感作性はなかった(Hill Top Research,1979)
  • [ヒト試験] 45人の被検者に17%ステアリルアルコールを含む制汗剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限-軽度の皮膚刺激性があり皮膚感作性はなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に14%ステアリルアルコールを含む制汗剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激性または皮膚感作性はなかった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 176人の被検者に24%ステアリルアルコールを含むデオドラント製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 150人の被検者に24%ステアリルアルコールを含むデオドラント製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 100人の被検者に14%ステアリルアルコールを含む制汗剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激性または皮膚感作性はなかった(CTFA,1980)
  • [ヒト試験] 205人の被検者に12%ステアリルアルコールを含むハンドクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 48人の被検者に12%ステアリルアルコールを含むデオドラント製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、軽度の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 154人の被検者に12%ステアリルアルコールを含むデオドラント製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1981)
  • [ヒト試験] 213人の被検者に8%ステアリルアルコールを含むクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、最小限の皮膚刺激性があり、皮膚感作性はなかった(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] NACDG(North America Contact Dermatitis Group)の報告では、30%ステアリルアルコールを含むワセリンを1年にわたって48-96時間スクリーニングパッチ試験を実施してきた結果として、1976年6月までの1年間では172人のうち2人にアレルギー反応が認められ、1977年6月までの1年間では446人のうち1人に、1979年6月までの1年間では824人のうち6人に、1980年6月までの1年間では634人のうち6人にアレルギー反応が認められた(NACDG,1977;NACDG,1979;NACDG,1980)
  • [ヒト試験] 1664人の被検者に30%ステアリルアルコールを含むパラフィンまたはオレイルアルコールを含むワセリンを対象に皮膚感作性試験を実施したところ、30%ステアリルアルコールを含むパラフィンでは4人の被検者に陽性反応が示され、オレイルアルコールを含むワセリンでは10人の被検者に陽性反応が示された。オレイルアルコールに過敏な10人の被検者のうち3人はステアリルアルコールにも過敏であり、交差反応が起こった可能性があることを報告した(Hjorth nad Trolle-Lassen,1963)
  • [ヒト試験] 21人の被検者に20%セタノールとステアリルアルコール混合物を含むワセリンをパッチテストしたところ、7人の被検者が過敏反応を示した。次に過敏反応を示した7人の被検者に50%ステアリルアルコールを含むワセリンでパッチテストしたところ、4人はステアリルアルコールに過敏反応を示した(Bandmann HJ and Keilig W,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ほとんど共通皮膚感作なしと報告されているため、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんど起こらないと考えられます。

ただし、ごくまれにアレルギー反応または過敏反応などが報告されており、またステアリルアルコールとオレイルアルコールには交差反応が起こる可能性が示唆されています。

– 皮膚炎を有する場合 –

– 個別事例 –

国立習志野病院皮膚科の診断データ(文献5:1983)によると、

  • [個別事例] 1982年7月に女性主婦(33歳)が右下腿伸側に紅色丘疹が散在的に出現したため受診し、急性湿疹の疑いからトプシムクリームを單純塗布してもらったところ、塗布部に一致して皮疹の憎悪がみられたため、トプシムクリームおよびトプシム軟膏のパッチテストを実施した結果、トプシムクリームに対して陽性を示した。そこでトプシムクリームの成分をパッチテストしたところ、96時間後にステアリルアルコールに陽性を示し、他の成分には陰性であった。次にステアリルアルコールの倍数希釈試験として30%,15%,6%および3%ステアリルアルコールを含む軟膏のパッチテストをしたところ、皮膚反応はそれぞれ++,+,+および±であった。ステアリルアルコールで陽性であり、実際のクリームの濃度(3%)でも陽性であったことからアレルギー型接触皮膚炎と考えられた。ただし過去にはトプシムクリーム中のスたエリルアルコールには陽性を示したものの、純正ステアリルアルコールには陰性を示したため、夾雑物が原因とされた事例(Shore,1974)もあり、夾雑物の関与も否定しきれなかった

第一クリニック皮膚科・アレルギー科の診断データ(文献6:2006)によると、

  • [個別事例] 2005年4月に女性会社員(29歳)の両手に乾燥症状があり、A社10%尿素クリームを毎日外用したが、徐々に瘙痒をともなう紅斑、亀裂がひろがったため、6月に近医皮膚科を受診し、パスタロン10ローションの処方を受け、毎日3-4回外用したが改善しないため精査治療目的のために48時間閉塞パッチを実施した。結果はICDRG基準でA社尿素クリームが48時間および72時間後で+および++であり、パスタロン10ローションは48時間および72時間後で+および+であった。そのため成分提供を受け成分パッチテストを実施したところ、30%セタノールは48時間および72時間後で+および++であり、30%ステアリルアルコールは48時間および72時間後で+および+であり、30%セバシン酸ジエチルは48時間および72時間後で+および++であった。これらの成分を健常者4人にパッチテストしたところ、陰性であった。これらの試験からセタノール、ステアリルアルコールおよびセバシン酸ジエチルによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した

と記載されています。

試験データは個別事例のみですが、皮膚炎または皮膚乾燥を有する場合、ごくまれに陽性反応が報告されているため、皮膚炎または皮膚乾燥を有する場合はごくまれにアレルギー型接触皮膚炎を引き起こす可能性があると考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1985)によると、

  • [動物試験] 2匹のウサギの耳の外耳道にステアリルアルコール(濃度不明)を週5回2週間にわたって適用したところ、アクネ菌増殖性を示さなかった(Klingman AM and Mills OH JR,1972)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、アクネ菌増殖性なしと報告されているため、アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ステアリルアルコールはベース成分、界面活性剤にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Stearyl Alcohol,Oleyl Alcohol,and Octyl Dodecanol」International Journal of Toxicology(4)(5),1-29.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブック,48.
  3. 日本油化学協会(1990)「アルコール,グリコール,エーテル」油化学便覧 改訂3版,176-184.
  4. 広田 博(1997)「一価アルコール」化粧品用油脂の科学,75-79.
  5. 児島 孝行(1983)「フルオシノニドクリーム中のステアリルアルコールによる接触皮膚炎の1例」皮膚(25)(6),967-970.
  6. 杉浦 真理子, 他(2006)「セタノール,ステアリルアルコール,セバシン酸ジエチルによるアレルギー性接触皮膚炎」アレルギー(55)(3-4),455.

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