スクワランとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分 感触改良
スクワラン
[化粧品成分表示名称]
・スクワラン

[医薬部外品表示名称]
・スクワラン、植物性スクワラン、シュガースクワラン、合成スクワラン

[慣用名]
・スクワランオイル

①深海ザメから得たスクアレン(squalene)(∗1)を水素添加、②オリーブ果実またはコメヌカ油などから得たスクアレンを水素添加、③サトウキビ糖液の発酵液から得たファルネセンをニ量化した後に水素添加、④イソプレンを重合して得られる分枝状の飽和炭化水素(∗2)です。

∗1 スクアレン(squalene)は、スクワレンと記載されることもありますが、スクアレンで統一します。
∗2 炭化水素とは、炭素と水素のみからなる化合物で、化学的に極めて不活性な物質です。

スクワランの元であるスクアレンは、1906年に日本の油脂化学者によって黒子サメ肝油の中から初めて発見され(文献4:1906)、その後角サメ科に最も多く含有されていたため、squaleneと命名されました。

スクアレンは、人間の皮脂中にも10%前後含まれていることが古くから知られていますが(文献5:1969)、化学構造として不飽和結合(二重結合)を6つ有しており、非常に不安定な炭化水素で空気にさらすと酸化しやすく、そのままでは化粧品原料として使用できないため、水素添加することで安定化した飽和炭化水素であるスクワラン(∗3)として用いられています。

∗3 スクワラン(squalane)はスクアランとも記載されますが、正式な化粧品成分表示名称としてはスクワランと記載されているため、スクワランで統一します。

スクワランは、もともと深海ザメの肝油から得たものが主流でしたが、2004年に北スマトラ島沖で発生した大震災によって深海ザメの生息地域が移動したことや西ヨーロッパ地域での漁獲方法の規制により供給が減少しているため、現在では

  • オリーブ果実油やコメヌカ油など植物油から得られる植物性スクワラン
  • サトウキビ糖液から得られるシュガースクワラン
  • イソプレンから合成される合成スクワラン

なども開発されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、ネイル製品などに使用されています(文献2:2016;文献3:1997)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、皮膚に対する浸透性がよく、ベタつきのないサラッとした感触を有しており、また水分保持能を有しているため、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品などに用いられます(文献2:1997;文献6:1991)

感触改良

感触改良に関しては、伸びがよく、ベタつきのないサラッとした特性のため、他のオイルと併用してクリームなどの感触改良に使用されます(文献2:1997)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1982年および2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

スクワラン配合製品数および種類と配合濃度の調査結果(1982年および2001年)

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スクワランの安全性(刺激性・アレルギー)について

スクワランの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に8%スクワランを含むリップエモリエント剤を3週間おきに48時間適用したところ、19名の反応は陰性で1名の反応は報告されなかった(CTFA,1974)
  • [ヒト試験] 240人の患者に16.6%スクワランを含むアイパックを3週間おきに48時間適用したところ、いずれの患者も皮膚反応は陰性だった(CTFA,1974)
  • [ヒト試験] 98人の患者に15%スクワランを含むモモ核油をパッチテストしたところ、いずれの患者も皮膚反応は陰性だった(CTFA,1968)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に16.8%スクワランを含むクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激性および皮膚感作性はなかった(CTFA,1978)
  • [ヒト試験] 20人の女性(15-54歳)に20%スクワランを含む夜用スキンケア製剤をSchwartz-Peckの48時間パッチ法に従って0~4の刺激スコアを用いて検査したところ、2人の被検者において2+の反応を示し、これは明確な紅斑を意味した。21日間の製剤使用中に他の皮膚反応は認められなかった(CTFA,1974)
  • [ヒト試験] 600人の被検者に7.2%スクワランを含む保湿クリームをDraize法に従ってパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(CTFA,1977)
  • [ヒト試験] 100似の女性被検者に7%スクワランを含むクリームをパッチテストしたところ、いずれの被検者においても皮膚刺激性および皮膚感作性を示さなかった(CTFA,1975)
  • 100人の女性被検者に20%スクワランを含むリップスティック製剤をパッチテストしたところ、この製品に一次刺激性および皮膚感作性は認められなかった(CTFA,1976)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に9%スクワランを含む制汗剤スプレーをKligman and Woodingの手順に従ってパッチテストしたところ、この製品は目に見える一次刺激性を示さなかった(CTFA,1974)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に9%スクワランを含む制汗剤スプレーをKligmanの手順に従ってパッチテストしたところ、この製品は接触皮膚感作の兆候を示さなかった(CTFA,1974)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

大阪市立大学医学部皮膚科学教室および山口クリニックの臨床データ(文献6:1991)によると、

  • [ヒト試験] 接触皮膚炎または皮膚疾患を有する63人の患者にスクワランおよび合成スクワランを48時間パッチ適用し、パッチ除去30分後および72時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの患者においても刺激反応および感作反応はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚炎を有する場合において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に未希釈のスクワランを点眼し、Draize法に基いて眼刺激性を評価したところ、眼を洗浄したかどうかにかかわらず、ウサギの眼に刺激や損傷は誘発されなかった(CTFA,1956)
  • [動物試験] 6匹のウサギに希釈されていないスクワランを点眼し、1時間および1,2,3,4,7日後に眼の観察を行ったところ、眼球刺激指数は1時間後で4.33であり、その後は0.0だった。眼球刺激指数が10.0未満の場合は重大な損傷を引き起こさないと結論づけた(Guillot JP,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

– 皮膚炎を有する場合 –

大阪市立大学医学部皮膚科学教室および山口クリニックの臨床データ(文献6:1991)によると、

  • [ヒト試験] 接触皮膚炎または皮膚疾患を有する16人の患者にスクワランおよび合成スクワランを48時間パッチ適用し、パッチ除去30分後にUVAライトを15cmの距離で10分間照射した。照射から24時間後に皮膚反応を評価したところ、いずれの患者においても光感作反応はみられなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

スクワランはベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Squalane and Squalene」International Journal of Toxicology(1)(2),37-56.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「炭化水素」パーソナルケアハンドブック,26-27.
  3. 広田 博(1997)「炭化水素類」化粧品用油脂の科学,54-60.
  4. 辻本 満丸(1906)「黒子鮫油に就て」工業化学雑誌(9)(10),953-958.
  5. DT Downing , et al(1969)「Variability in the chemical composition of human skin surface lipids.」The Journal of Investigative Dermatology(53)(5),322-327.
  6. 谷井 司, 他(1991)「乾燥性皮膚疾患に対するスクワランの有用性, 皮膚刺激性および保湿性についての検討」皮膚(33)(2),155-163.

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