シクロペンタシロキサンとは…成分効果と毒性を解説




・シクロペンタシロキサン
[医薬部外品表示名称]
・デカメチルシクロペンタシロキサン
化学構造的に5個のシロキサン(∗1)が環状結合した分子構造骨格を持つ五量体(∗2)の低分子ジメチルシロキサンであり、環状シリコーン油です。
∗1 シロキサンとは、Si(ケイ素)とO(酸素)が交互に連なったシロキサン結合構造を骨格とする合成高分子化合物の総称で、一般にシリコーンと呼ばれます。
∗2 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体といい、シクロペンタシロキサンの場合、5個のシロキサン結合がまとまって機能しているため五量体です。
環状シリコーンの中でもシロキサン結合が20個未満のものは、低分子環状シリコーンに分類され、シクロペンタシロキサンは5個のシロキサン結合であることから五量体として機能するため、低分子環状シロキサンに分類されます。
シクロペンタシロキサンは、常温で揮発性(∗3)に優れ、また生分解性(∗4)を有しているのが特徴であり、環境に危険性をもたらさないと結論づけられていることからシリコーン溶剤として汎用されています(文献3:2012)。
∗3 揮発性とは、液体が蒸発しやすい性質のことです。
∗4 生分解性とは、微生物・酵素の働きによって最終的に無害な物質まで分解される性質のことであり、一般的にシリコーンは生分解されにくい化合物ですが、シクロペンタシロキサンは環境中に放出しても短期間で二酸化ケイ素、二酸化炭素、水に分解されるため、環境への負荷はわずかであることが明らかになっています。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、ヘアスタイリング製品、フレグランス製品などに汎用されています(文献1:2011)。
感触改良
感触改良に関しては、低粘度でベタつきを抑えてさっぱり感を付与し、広がりや伸びがよく、他の化粧品成分と相溶性に優れていることからスキンケア化粧品、乳化系メイクアップ化粧品、日焼け止め製品に配合されます(文献4:2016)。
溶剤
溶剤に関しては、化粧品原料として高重合シリコーンの溶剤として配合されているため、シクロペンタシロキサンで溶解した高重合シリコーンを処方する場合は一緒に配合されます(文献4:2016)。
また、シクロペンタシロキサンが撥水性(∗5)の被膜形成能を有するシリコーンを溶かし込んでいる原料を配合した製品の場合、皮膚に塗布することでシクロペンタシロキサンはすぐに揮発し、溶かし込んでいたシリコーンの皮膜形成を促進することから、ウォータープルーフ系(∗6)製品に配合されています(文献5:2015)。
∗5 撥水性とは水をはじく性質のことです。
∗6 ウォータープルーフとは耐水性のことであり、汗や涙、水などに強く落ちにくいという意味で用いられます。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2008-2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
シクロペンタシロキサンの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし
- 眼刺激性:ほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
- 光毒性・光感作性:ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 110人の被検者に90.37%シクロペンタシロキサンを含むヘアスプレー製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、試験期間中において22人の被検者にほとんど知覚できないレベルから軽度の皮膚反応が観察されたが、これらの皮膚反応は臨床的に意味のある皮膚刺激および皮膚感作ではないと結論付けられた(Anonymous,2007)
- [ヒト試験] 154人の被検者に89.75%シクロペンタシロキサンを含むヘアスプレー製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中において15人の被検者にほとんど知覚できないレベルの皮膚反応が観察されたが、これらの皮膚反応は臨床的に意味のある皮膚刺激および皮膚感作ではないと結論付けられた(Anonymous,2007)
- [ヒト試験] 105人の被検者に55.76%シクロペンタシロキサンを含む制汗剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間中にいずれの被検者も皮膚反応を示さなかったため、この製品は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(TKL Research,2008)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
– 過敏な皮膚を有する場合 –
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2011)によると、
- [ヒト試験] 敏感肌であると自己申告している106人の被検者(18-66歳)に56.3%シクロペンタシロキサンを含むデオドラント製品を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間中にいずれの被検者も皮膚反応を示さなかったため、この製品は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではないと結論付けられた(TKL Research,2008)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されていることから、過敏な皮膚を有する場合において、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
- [動物試験] ウサギの眼にシクロペンタシロキサン(濃度不明)を適用したところ、眼刺激性は示さなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されていることから、眼刺激性はほとんどないと考えられます。
光毒性および光感作性について
シクロペンタシロキサンは紫外線を吸収しないため、試験は行われていません(文献2:2014)。
∗∗∗
シクロペンタシロキサンはベース成分、溶剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
∗∗∗
文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(2011)「Safety Assessment of Cyclomethicone, Cyclotetrasiloxane, Cyclopentasiloxane, Cyclohexasiloxane, and Cycloheptasiloxane」International Journal of Toxicology(30)(6_suppl),149S-227S.
- 近藤 秀俊, 他(2014)「シリコーンの歴史と安全性」化粧品の安全・安心の科学 -パラベン・シリコーン・新原料,98-109.
- シリコーン工業会(2012)「デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)に関する諮問委員会報告書(要約)」, <http://www.siaj.jp/ja/pdf/fact_sheet/d5-j.pdf> 2019年6月7日アクセス.
- 日光ケミカルズ(2016)「シリコーン油およびフッ素油」パーソナルケアハンドブックⅠ,87-94.
- 宇山 侊男, 他(2015)「シクロペンタシロキサン」化粧品成分ガイド 第6版,64.
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