シア脂とは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 エモリエント成分
シア脂
[化粧品成分表示名称]
・シア脂

[医薬部外品表示名称]
・シア脂

[慣用名]
・シアバター

アカテツ科植物シアーバターノキ(学名:Butyrospermum parkii = Vitellaria paradoxa 英名:Shea)の種子から得られる植物油脂です。

シアーバターノキは、シアベルトと呼ばれる中央アフリカのヴェルデ岬からチャドにかけて広がるサヘル帯に天然分布しています。

シアバターノキの種子は鶏卵ほどの大きさでシアナッツと呼ばれ、種子中の総脂質量は34-57%で、種子の中の胚を加工してシア脂(シアバター)になります。

シア脂の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 0.2
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 47.4
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 6.1
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 4.0
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 41.0
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 1.5

このような種類と比率で構成されています(文献3:1990)

オレイン酸約45%、ステアリン酸約40%を占めており、オレイン酸は不飽和脂肪酸で二重結合が1ですが、ステアリン酸は飽和脂肪酸で二重結合が0であり、総合的に酸化安定性は高いと考えられます。

不けん化物(∗1)としては、直鎖炭化水素34%、トリテルペンアルコール60%、フィトステロール3%などが含まれています(文献6:1985)

∗1 不けん化物とは、アルカリで加水分解(鹸化)したときに鹸化されずに残った物質の総称で、ステロール、色素、脂溶性ビタミンなどです。

またヨウ素価および融点(∗1)は、

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

ヨウ素価 ヨウ素価による分類 融点
49-67 不乾性油 23-45

一例としてこのように記載されていますが(文献4:1990)、ヨウ素価は100以下の不乾性油のため、乾燥性はほとんどなく、また融点は23-45℃であり、日本においては冬など23℃以下の気温では半固体ですが、夏など23℃を超えてくると液体化し始めます。

シア脂と同様にステアリン酸が主成分で、融点が32-39℃のカカオ脂は体温でシャープに溶解しますが、シア脂は低融点のオレイン酸を多量に含んでいるため、カカオ脂より融点の幅が大きく、体温で溶解はするもののシャープな溶解性は示しません(文献5:1997)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンド&フットケア製品、リップ製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ヘアケア製品、日焼け止め製品などに使用されます(文献5:1997;文献6:1985)

皮膚保護および皮膚水分量増加によるエモリエント作用

皮膚保護および皮膚水分量増加によるエモリエント作用に関しては、オレイン酸とステアリン酸を多量に含むことから、低粘度でなめらかでしっとりした感触を示し、浸透性に優れ、また長鎖脂肪酸やフィトステロールが含まれていることから高い保湿性を有しているという特徴があり、スキンケア化粧品の乳化物、ボディケア&ハンドケアクリームまたはヘアケア製品の基剤、口紅やリップクリームの基剤として使用されています(文献6:1985)

さらに香料の保留性が良好であるという特性も有しており(文献5:1997)、香料を含むオイルバターなどにも配合されます。

1988年に報告されたシア脂の保湿効果検証によると、

10人の被検者の前腕に5%シア脂配合クリームまたは無添加クリームを1日1回30日間適用し、皮膚水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

シア脂の保湿効果

5%シア脂配合クリームは、短時間で保湿効果を示し、連用することで効果が持続することがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1988)、シア脂に皮膚水分量増加による保湿作用が認められています。

効果・作用についての補足

シア脂に含まれれる不けん化物の主成分であるトリテルペンアルコールの桂皮酸エステルには、250-300nmの紫外線を吸収する作用が知られており、UVB(280-320nm)の吸収作用を有していると考えられますが、20%トリテルペンエステルを含む2分画シアバターを用いた研究では、SPF値(∗2)が3-4しか得られないことが明らかになったため、トリテルペンの紫外線吸収作用の有効性には疑いがでてきています(文献7:2014)

∗2 SPFとはUVBによる日焼け防止効果を表す数値で、0-50+の数値で表し、標準的な日焼け止めでは15-30あたりが基準となります。

こういった背景から、シア脂の紫外線吸収作用は現在掲載していません。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

シア脂の配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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シア脂の安全性(刺激性・アレルギー)について

シア脂の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 104人の被検者に23.7%シア脂を含むリップグロスを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者に皮膚反応が観察されたが、皮膚感作性ではなかった(TKL Reseach,2008)
  • [ヒト試験] 113人の被検者に24.1%シア脂を含むリップワックスを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(TKL Reseach,2008)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に24.7%シア脂を含むリップグロスを対象に28日間連用試験(1日2-6回使用)を実施したところ、1人の被検者に落屑がみられた(Groupe Dermscan,2008)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に45%シア脂を含むボディクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Clinical Research Laboratories,2004)
  • [ヒト試験] 31人の被検者に45%シア脂を含むボディクリームを対象に2週間連用試験(1日2回使用)を実施したところ、紅斑、浮腫および乾燥はみられなかった(Clinical Research Laboratories,2004)
  • [ヒト試験] 111人の被検者に60%シア脂を含むヘアクリームを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Clinical Research Laboratories,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に未希釈のシア脂0.1mLを滴下したところ、軽度の結膜反応はみられたが、眼刺激性はなかった(Henkel Kga A,1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2011)によると、

  • [動物試験] 10匹のモルモットに10%および20%シア脂を含むアセトンを適用し、次いでUV-Bを80秒照射し、続いてUV-Aを80分間照射したところ、光毒性はなかった(IBR Forschungs GmbH,1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性なしと報告されているため、光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

シア脂はベース成分、エモリエント成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 エモリエント成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2011)「Plant-Derived Fatty Acid Oils as Used in Cosmetics」Final Report.
  3. 日本油化学協会編集(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,104-110.
  4. 日本油化学協会編集(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
  5. 広田 博(1997)「シア脂」化粧品用油脂の科学,28-29.
  6. 井端 泰夫(1985)「油脂原料としてのシア脂の概要」Fragrance Journal(13)(4),76-78.
  7. M.O.Israel(2014)「Effects of Topical and Dietary Use of Shea Butter on Animals」American Journal of Life Sciences(2)(5),303-307.
  8. Poelman M C, et al(1988)「Etude del’activité hydratante d’une émulsion essai de l’émulsion Xéroderm.」Les Nouvelles dermatologiques(7)(1),78-79.

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