ゴマ油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分 抗酸化成分
ゴマ油
[化粧品成分表示名称]
・ゴマ油

[医薬部外品表示名称]
・ゴマ油

[慣用名]
・セサミオイル

ゴマ科植物ゴマ(学名:Sesamum Indicum 英名:sesame)の種子を圧搾または抽出し精製して得られる植物油(植物オイル)です。

ゴマは、別名セサミと呼ばれ、アフリカのサバンナ(熱帯草原)を原産とし、現在は世界各地で栽培されています。

日本でも奈良時代に栽培され、食用、薬用のほかにも灯油としても使用されていました(文献8:2018)

ゴマの種子は脂肪とタンパク質が豊富で、含油率は40%-55%もあり、オレイン酸やリノール酸が多く含まれるほか、カルシウム、鉄分、γトコフェロール、セサミン、セサモリン、セサモール、セサミノールなどのリグナン化合物が含まれています(文献7:2011)

このゴマリグナンの大半を占めるセサミンには抗酸化作用が認められており、ゴマ油が他の植物油と比較して酸化変敗しにくいのは、セサミノールやセサモールの強力な抗酸化作用によることが知られています(文献7:2011)

またゴマには白ゴマ、黒ゴマまたは金ゴマなどの種類があり、いずれも栄養価の高い強壮食品として知られていますが、黒ゴマは香りが強く薬用に用いられ、白ゴマは油の含有量が多いことが明らかになっています(文献8:2018)

ゴマ油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 39.2
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 45.8
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 0.1
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 8.8
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 5.3
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 0.1

このような種類と比率で構成されています(文献3:1990)

リノール酸が約45%、オレイン酸が約40%を占めており、リノール酸は二重結合を2つもっている酸化安定性の低い(自動酸化速度はオレイン酸の約10倍速い)不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性は低い(酸化しやすい)のですが、一方でゴマ油中には強力な抗酸化性を有するゴマリグナンの一種であるセサモールが含有されており、AOM(Active Oxygen Method)試験(∗1)ではゴマ油は100時間後もわずかしか酸化しないことが明らかになっています(文献6:1997)

∗1 AOM試験とは、油脂の安定性を評価する試験であり、試料20mLをを試験管に入れ、97.8℃の油浴中で毎秒2.33mLの空気を吹き込み、一定時間ごとにPOV(過酸化物価)を測定し、空気の吹込み開始からPOVの値が定めた値に達するまでの時間で表します。

またヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
103-118 半乾性油

一例としてこのように記載されており(文献4:1990)、100を越えることがある半乾性油のため、いくらかの乾燥性は有しますが、乾油性よりは劣ります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、サンオイル、洗浄製品、ヘアケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、リップ製品、ネイル製品などの製品に使用されます(文献5:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、精製してにおいのほとんどないものが閉塞剤・基剤として各種クリーム、マッサージオイルなどに使用されます。

また医薬品では軟膏基剤としても使用されています。

UVB照射における活性酸素増加抑制による抗酸化作用

UVB照射における活性酸素増加抑制による抗酸化作用に関しては、ゴマ油にはゴマリグナンとしてセサミン、セサモリン、セサモールおよびセサミノールがゴマリグナンとして0.5%-1%含有されており(文献9:1982)、ゴマリグナンの一種であるセサモールは強力な抗酸化作用を有していることが明らかになっています。

そこでまず前提知識として生体内における活性酸素の構造について解説します。

生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

発生した過酸化水素は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによって、また抗酸化物質であるグルタチオンを用いてグルタチオンペルオキシターゼによって水に分解されますが、それでも処理できない場合は、ヒドロキシラジカルを発生させます。

紫外線を浴び続けるとこれらの活性酸素が増加し、そういった状態が続くと光老化などにつながるため、紫外線による活性酸素の増加を抑制することは皮膚の恒常性を保つためまた老化の促進を抑制するために重要であると考えられます。

2010年にインドのアンナマライ大学生化学バイオテクノロジー部によって報告されたセサモールのUVBによる生体内活性酸素への影響検証によると、

ヒト真皮線維芽細胞を培養し、セサモールを添加したグループと添加しないグループに分け、30分後に洗浄し、UVBを1.52×10³mJ/cell照射した。

その結果、セサモールを添加していないグループでは紫外線によって細胞内の活性酸素は明らかに増加した。

また、細胞膜の酸化度が上昇し、活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)、カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ活性が低下し、生体内の抗酸化システムが崩壊していた。

一方でセサモール前処理をしたグループは、用量依存的に細胞内活性酸素の増加抑制および各活性酸素分解酵素の活性低下抑制が認められた。

さらに、セサモールはUVBによるDNAの損傷を保護し、アポトーシス(∗2)も抑制する結果となった。

∗2 アポトーシスとは、あらかじめ遺伝子で決められたメカニズムによる細胞の自然死現象のことです。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:2010)、セサモールを含有したゴマ油にUVB照射における活性酸素増加抑制による抗酸化作用が認められています。

ただし、この作用はセサモール含有量に応じて作用も増減し、また化粧品用のゴマ油は精製されており、一般に精製工程とともにゴマリグナンの含有量は減少する傾向にあるため(文献12:1958)、精製度合いによってはUVB照射における活性酸素増加抑制による抗酸化作用はほとんど期待できない可能性も考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2008-2009年および2010年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ゴマ油の配合製品数と配合量の調査(2008-2009年および2010年)

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ゴマ油の安全性(刺激性・アレルギー)について

ゴマ油の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [ヒト試験] 108人の被検者に25%ゴマ油を含むフェイスセラムを対象に皮膚一次刺激性試験を実施したところ、皮膚刺激性はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に25%ゴマ油を含むフェイスセラムを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
  • [ヒト試験] 209人の被検者に8%ゴマ油を含む軟膏を対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(TKL Research,2007)

– 個別事例 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [個別事例] 1人の女性は未希釈のゴマ油を含む軟膏を適用後に掻痒性紅斑、丘疹および小胞を発症したため、軟膏基剤およびゴマ油のそれぞれを別々にパッチテストしたところ、軟膏とゴマ油の両方で陽性反応を示し、他の基剤では皮膚反応を示さなかった。20人の健康な被検者にゴマ油を対象にパッチテストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作を示さなかった(Oiso N, et al,2008)

久保皮膚科医院および長崎大学医学部皮膚科学教室の症例データ(文献11:1987)によると、

  • [個別事例] 接触皮膚炎および蕁麻疹の発症歴のない35歳の女性が1985年3月に60%ゴマ油を含む市販の紫雲膏を約10日間塗布したところ、瘙痒感をともなう紅斑が発症し、左前腕ほぼ全域に浮腫性紅斑と小水疱が観察されたため、ゴマ油に関連するセサミン、セサモリン、セサモールなどを各1%含有する白色ワセリン基剤を調製し、患者に48時間Finn Chamber適用し、パッチ除去1および24時間後で判定したところ、セサミンに+、セサモリンに++の陽性反応が認められたが、セサモールは陰性であった。対照として健康な男女10人に同様のパッチテストを実施したところ、すべて陰性であった。この結果からセサミンおよびセサモリンによる接触アレルギーであることが確認された。

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、個別事例として皮膚感作の報告があります。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献2:2017)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いて未希釈のゴマ油を対象にめ刺激性試験を実施したところ、非刺激性-最小限の眼刺激性と結論付けられた。また10%-11%ゴマ油を含むリップ製剤を対象にした眼刺激性試験では眼刺激性はなかった(Johnson W, et al,2011)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2011)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者の背中に32%ゴマ油を含むオイルマッサージ製剤0.2gを24時間半閉塞パッチを適用し、パッチ除去後に試験部位にUVAライトを17分照射し、照射後反応を記録した。照射部位および非照射部位で皮膚反応は観察されず、試験物質は皮膚光毒性を誘発しなかった(Harrison Research Laboratories,2006)
  • [ヒト試験] 32人の被検者の背中に32%ゴマ油を含むマッサージオイル0.2gを対象にHRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)において各パッチ除去後にUVAライトとUVBライトを照射し、照射直後に反応を記録したところ、皮膚反応は観察されず、光感作剤ではなかった(Harrison Research Laboratories,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、一般的に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ゴマ油はエモリエント成分、ベース成分、抗酸化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分 抗酸化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2011)「Amended Safety Assessment of Sesamum Indicum (Sesame) Seed Oil, Hydrogenated Sesame Seed Oil, Sesamum Indicum (Sesame) Oil Unsaponifiables, and Sodium Sesameseedate」International Journal of Toxicology(30)(3),40S-53S.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油化学便覧 改訂3版,104-110.
  4. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油化学便覧 改訂3版,99-101.
  5. 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,4.
  6. 広田 博(1997)「半乾性油」化粧品用油脂の科学,15-18.
  7. 鈴木 洋(2011)「胡麻(ごま)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,70-71.
  8. ジャパンハーブソサエティー(2018)「ゴマ」ハーブのすべてがわかる事典,86.
  9. 吉田 政晴, 他(1982)「高速液体クロマトグラフィーによるごま油中のセサモリン, セサミンの定量及びセサモールの確認」食品衛生学雑誌(23)(2),142-148.
  10. S. Ramachandran, et al(2010)「Sesamol inhibits UVB-induced ROS generation and subsequent oxidative damage in cultured human skin dermal fibroblasts」Archives of Dermatological Research(302)(10),733–744.
  11. 久保 容二郎, 他(1987)「ゴマ油皮膚炎の抗原について」皮膚(29)(3),523-526.
  12. 藤村 敬, 他(1958)「ゴマ油の採製および精製工程におけるセザモール, セザモリン, セザミンの消長について」油化学(7)(1),31-33.

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