コムギ胚芽油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
コムギ胚芽油
[化粧品成分表示名称]
・コムギ胚芽油

[医薬部外品表示名称]
・コムギ胚芽油

[慣用名]
・ウィートジャームオイル

イネ科植物コムギ(学名:Triticum aestivum or Triticum sativum or Triticum vulgare 英名:Wheat)の胚芽から得られる植物油(植物オイル)です。

小麦の種子は、表皮、胚乳、胚芽から形成され、そのうち胚芽部は2%しかありませんが、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維、タンパク質などの栄養成分が多く含まれ、小麦胚芽油および小麦胚芽食品として利用されています。

脂溶性成分としてビタミンE(トコフェロール)や糖アルコールの一種であるオクタコサノールが含まれています(文献7:2011)

オクタコサノールは渡り鳥のエネルギー源として知られており、ヒトにおいても持久力や鋭敏性、基礎代謝の向上が報告されています(文献2:1990)

コムギ胚芽油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
パルミトレイン酸 不飽和脂肪酸 C16:1 0.1
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 21.9
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 53.5
リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 6.1
エイコセン酸 不飽和脂肪酸 C20:1 1.3
ミリスチン酸 飽和脂肪酸 C14:0 0.1
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 15.5
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 1.1
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 0.2
ベヘン酸 飽和脂肪酸 C22:0 0.2

このような種類と比率で構成されています(文献2:1990)

リノール酸が約50%、オレイン酸が約20%を占めており、リノール酸は二重結合を2つもっている酸化安定性の低い(自動酸化速度はオレイン酸の約10倍速い)不飽和脂肪酸であるため、酸化安定性は低いと考えられますが、トコフェロール(240mg/100g)の含有量が植物油の中ではかなり多いのが特徴で、そのため酸化安定性も高くなっています(文献5:1990)

またヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
115-129 半乾性油

一例としてこのように記載されており(文献3:1990)、100を越えることがある半乾性油のため、いくらかの乾燥性は有しますが、乾油性よりは劣ります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、ヘアケア製品などの製品に使用されます(文献4:2016)

エモリエント作用

エモリエント作用に関しては、1983年にコーセーによって報告された油脂の抱水力比較によると、

抱水力をもたないスクワランを比較対照として、アボカド油オリーブ果実油ブドウ種子油サフラワー油、コムギ胚芽油、モモ核油ホホバ種子油の抱水力を比較検討したところ、以下の表のように、

油性成分 抱水力(%)
アボカド油 5
オリーブ果実油 8
ブドウ種子油 14
サフラワー油 3
コムギ胚芽油 40
モモ核油 10
ホホバ種子油 5
スクワラン 0

コムギ胚芽油は、高い抱水力をもっており、優れた湿潤性を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:1983)、コムギ胚芽油に皮膚柔軟によるエモリエント作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2001年および2010年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

コムギ胚芽油の配合製品数と配合量の比較調査結果(2001年および2010年)

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コムギ胚芽油の安全性(刺激性・アレルギー)について

コムギ胚芽油の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.005%コムギ胚芽油を含むスカルプコンディショナーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Clinical Research Laboratories,2010)
  • [ヒト試験] 臨床試験の結果、小麦胚芽油は皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Elder RL,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

2010年に加水分解コムギ末を配合する製品の使用によって重篤な全身性のアレルギーの報告が相次いだことにより、それ以降は小麦由来成分を配合している場合は、容器または外箱にその成分および小麦由来であることを表示するようになりました(文献6:2011)

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 未希釈のコムギ胚芽油は最小限の眼刺激性があり、また2%コムギ胚芽油を含む水溶液は非刺激性であった(Elder RL,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、100%濃度で最小限の眼刺激性または2%濃度で非刺激性と報告されているため、一般的に眼刺激性は非刺激性-最小限の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

コムギ胚芽油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の脂肪酸組成」油脂化学便覧 改訂3版,104-110.
  3. 日本油化学協会(1990)「植物油脂の性状」油脂化学便覧 改訂3版,99-101.
  4. 日光ケミカルズ(2016)「油脂」パーソナルケアハンドブック,3.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「小麦胚芽油」香粧品科学 理論と実際 第4版,95.
  6. “厚生労働省”(2011)「小麦由来成分を配合する医薬部外品及び化粧品への成分表示について」, <https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/cyanoshizuku/dl/01.pdf> 2019年1月31日アクセス.
  7. 鈴木 洋(2011)「小麦(こむぎ)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,71.
  8. 足立 佳津良(1983)「エモリエント剤―最近10年の進歩と発展」Fragrance Journal(62)(5),46-49.

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