グリセリンとは…成分効果と毒性を解説

保湿 ベース成分 バリア改善 温感 透明化
グリセリン
[化粧品成分表示名称]
・グリセリン

[医薬部外品表示名称]
・グリセリン、濃グリセリン

天然油脂を鹸化(けんか)またはプロピレンから合成して得られる吸湿性を有した多価アルコール(三価アルコール)(∗1)で、多価アルコールの中でも吸湿性が高いことから非常に汎用されている保湿剤です。

∗1 多価アルコールとは、非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール:エチルアルコール)は別の物質です。

鹸化とは石鹸(せっけん)を産生する方法であり、以下の鹸化図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

油脂 + 水酸化Na → 高級脂肪酸Na + グリセリン
油脂 + 水酸化K → 高級脂肪酸K + グリセリン

油脂と水酸化Na(アルカリ剤)を反応させたものは、アニオン界面活性剤である高級脂肪酸Na(石ケン素地)と副産物としてグリセリンが産生され、また油脂と水酸化K(アルカリ剤)を反応させたものは、アニオン界面活性剤である高級脂肪酸K(カリ石ケン素地)と、同じく副産物としてグリセリンが産生されます。

この副産物として得られるグリセリンを脱水・脱臭など精製処理したものが鹸化法によって得られるグリセリン(天然グリセリン)となりますが、現在は合成法によって得られる合成グリセリンが主流となっています(∗2)

∗2 天然グリセリンと合成グリセリンは化学的に同様の構造であり、物質としての違いはありません。

グリセリンには、含量84-87%で流動性のあるグリセリンと含量95%以上で粘性の高い濃グリセリン(∗3)がありますが、もともと産生されるのは粘性の高い濃グリセリンであり、そのままでは粘度が高すぎて扱いにくいことから、精製水で濃度を84%~87%に希釈したものが一般的なグリセリンとして汎用されているというだけで、これらは同様の物質です。

∗3 含量95%以上のものは化粧品表示名称はグリセリンですが、医薬部外品表示名称としては濃グリセリンと記載されます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献4:1993;文献5:1985;文献7:2000)

角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用

角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用に関しては、1993年に資生堂によって報告された保湿剤のまとめによると、

グリセリンをはじめとする代表的保湿剤の吸湿性を比較検討したところ、以下のグラフのように、

保湿剤の各相対湿度における吸湿性への影響

50%相対湿度21-27℃における多価アルコールの吸湿性

グリセリンは、各相対湿度においても高い吸湿性が示された。

また水分保持性を相対湿度50%、25℃の環境下で他の保湿剤類と比較したところ、以下のグラフのように、

各保湿剤の水分保持性(相対湿度50%,25℃)

グリセリンにも水分保持性が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:1993)、グリセリンに角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用が認められています。

また1985年にポーラ化成工業によって報告された各保湿剤の保湿性比較検証によると、

各保湿剤の吸湿性および保水性を検討した。

吸湿性は、相対湿度80%(20℃)に調整したデシケーター中に乾燥した各試料(ヒアルロン酸Na,ポリペプチド,グリセリン,PEG4000,PCA-Naおよびソルビトール)1gを放置し、10分単位で60分までの短時間と1日単位で5日までの長時間の吸湿量を測定したところ、以下のグラフのように、

グリセリンの短時間における吸湿性

グリセリンの長時間における吸湿性

短時間においてはヒアルロン酸Naの吸湿量が最も大きいが、長時間においてはPCA-Naやグリセリンのほうが大きいことが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1985)、グリセリンに角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用が認められています。

また1985年に資生堂によって報告された技術情報によると、ヒアルロン酸Naと多価アルコール類(グリセリン)を併用することで、グリセリンそのものの柔軟効果をはるかに上回る柔軟効果とその持続性をもたらす相乗効果が得られることが明らかになっています(文献6:1985)

TEWL回復促進によるバリア改善作用

TEWL回復促進によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識としてTEWLについて解説します。

TEWLは、Trans Epidermal Water Lossの略で、皮膚表面から空気中へ水分が蒸散される皮膚水分蒸散量(経表皮水分喪失量)を表します(文献8:2002)

アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症などにみられる種々の皮膚症状においては、皮膚からの水分消失が健常な皮膚に比べて盛んであることが知られており、TEWLの増加は表皮内の水分保持やバリア機能を担っている成分の減少が関与していると考えられています。

2000年に資生堂によって公開された技術情報によると、

皮膚バリア機能回復促進効果試験において、皮膚をテープストリッピングすることによって破壊された皮膚バリア機能がもとの状態へ回復していく過程におけるアルギニンの影響をTEWLを指標として評価したところ、以下のグラフのように、

グリセリンのTEWL回復効果

グリセリンにTEWL回復効果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2000)、グリセリンにTEWL回復促進によるバリア改善作用が認められています。

温感作用

温感作用に関しては、グリセリンは水に接すると反応熱(溶解熱)により温感を生じることが知られており、温感目的でグリセリンを配合する場合は、60%-99%の配合範囲で主剤となり、化粧品の成分表示一覧では一番前に記載されます。

マッサージ料、シート&マスク製品、クレンジング料などに使用されています。

石鹸の透明化

石鹸の透明化に関しては、従来より枠練石鹸生地に、二糖類であるスクロース、糖アルコールであるソルビトール、多価アルコールであるグリセリン、PGまたはこれらの混合物を配合することによって石鹸が透明になることが明らかにされています(文献9:1975)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

グリセリンの配合製品数と配合量の調査結果(2014年)

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グリセリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

グリセリンの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:増殖しやすい

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、他の保湿剤に比べてアクネ菌が増殖しやすいため、脂性肌やニキビができやすい場合は注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] ウサギ12匹に天然および合成の純度99.5%グリセリンを体の表面に0.5~4mLを1日のうち5時間、週に5回を45週にわたって塗布したところ、塗布から90日後で皮膚刺激性はみられなかった
  • [動物試験] ウサギ6匹に0.5%グリセリン水溶液を塗布したところ、皮膚刺激なし
  • [動物試験] 45匹のモルモットの剃毛した腹部に100%グリセリン0.1ccを塗布したところ、軽度の皮膚刺激が観察された
  • [ヒト試験] 皮膚炎をもつ420人の被検者に50%グリセリン水溶液を20~24時間塗布したところ皮膚刺激を示さなかったが、1人の被検者が陽性反応を示した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、大部分において共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] ウサギ6匹に100%グリセリン0.1mLを点眼したところ、1,24,72時間後および1日後にdraize法に基づく評価で眼刺激性なし
  • [動物試験] ウサギ4匹に純度99.5%の天然グリセリンと合成グリセリンを点眼したところ、最初の1時間はすべてのウサギの結膜に眼刺激があったものの24時間後には治まったため、眼刺激性なし
  • [ヒト試験] 角膜の表面に浮腫を伴った被検者の眼に無水グリセリンを局所投与したところ、浮腫の軽減および視覚の改善がみられた
  • [ヒト試験] 100%グリセリンを被検者(人数不明)の眼に投与したところ、眼刺激性はなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] 雄モルモット12匹に天然および合成グリセリンの0.1%溶液を0.1mLを1日おきに合計10回注射し、2週間の休止後にチャレンジ段階として0.1%溶液0.05mLを注入したところ、感作はみられなかった
  • [ヒト試験] 48名の被検者に65.9%グリセリンを含む保湿剤を適用したところ、誘導期およびチャレンジ期のいずれも反応はなかった
  • [ヒト試験] 発泡ゴム工場で働き、定期的にグリセリンに曝露されている15名の被検者に100%グリセリン水溶液(濃度不明)を48時間パッチテストしたところ、皮膚感作性は観察されなかった
  • [個別事例] 29歳の女性が顔、首、眼窩および頭皮に湿疹を発症したため、ふだん使用している化粧品やトイレタリーでパッチテストを受けたところ、4日目に1%ジメチルアミノプロピルアミン水溶液と保湿クリームに陽性反応を示したため、さらにこの保湿クリームの成分でパッチテストを行っていくと、4日目に1%グリセリン水溶液で陽性反応を示した。彼女の湿疹は化粧品中のグリセリンを避けることで解決した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1件の個別症例が報告されていますが、大部分において共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ニキビの原因となるアクネ菌の増殖性について

2009年にサティス製薬によって公開された研究調査によると、

ニキビ用化粧品の開発に役立つアクネ菌(Propionibacterium acnes)の資化性試験を用いて研究調査を行った。

資化性(しかせい)とは、微生物がある物質を栄養源として利用し増殖できる性質であり、化粧品に汎用されている各保湿剤がアクネ菌の栄養源になりうるかを検討するために、14種類の保湿剤(BG、グリセリン、DPGジグリセリントレハロースグルコースソルビトールプロパンジオールキシリトールPCA-NaベタインラフィノースGCS(グリコシルトレハロース/加水分解水添デンプン混合物))をアクネ菌に与えてその増殖率を測定したところ、以下のグラフのように、

アクネ菌の保湿剤に対する資化性

縦軸の資化性スコア(吸光度)が高いほど菌が増殖していることを示しており、無添加と同等の増加率の場合はアクネ菌に対する資化性は非常に低いと考えられるが、グリセリンは、通常の約4倍のアクネ菌増加率を示した。

このような検証結果が報告されており(文献3:2009)一般的にアクネ菌が増殖しやすいと考えられます。

∗∗∗

グリセリンはベース成分、保湿成分、バリア改善成分、温感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 バリア改善成分 温冷感成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2016)「多価アルコール」パーソナルケアハンドブック,97.
  2. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Glycerin as Used in Cosmetics」Tentative Report for Public Comment.
  3. “株式会社サティス製薬”(2009)「化粧品でアクネ菌が増える?」, <http://www.saticine-md.co.jp/exam/trustee_service/release/20090519.html> 2018年12月30日アクセス.
  4. 西山 聖二, 他(1993)「保湿剤」色材協会誌(66)(6),371-379.
  5. 外岡 憲明(1985)「ヒアルロン酸ナトリウムの保湿性」皮膚(27)(2),296-302.
  6. 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288.
  7. 株式会社資生堂(2000)「皮膚バリアー機能回復促進剤」特開2000-290135.
  8. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  9. 花王株式会社(1975)「透明石鹸の製造法」特開昭50-135104.

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