クロフサスグリ種子油とは…成分効果と毒性を解説

エモリエント成分 ベース成分
クロフサスグリ種子油
[化粧品成分表示名称]
・クロフサスグリ種子油

[慣用名]
・ブラックカラントシードオイル、カシスオイル

スグリ科植物クロスグリ(学名:Ribes nigrum 英名:Blackcurrant)の種子から得られる植物油(植物オイル)です。

クロスグリは、別名として黒房スグリ(クロフサスグリ)、一般的にはカシスと呼ばれており、ヨーロッパを原産とし、世界最大の産地であるポーランドをはじめ、北ヨーロッパやニュージーランドなどで栽培され、日本では主に青森県青森市で栽培されています(文献2:2011)

クロフサスグリ種子油の脂肪酸組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

脂肪酸名 脂肪酸の種類 炭素数:二重結合数 比率(%)
オレイン酸 不飽和脂肪酸 C18:1 9-16
エイコセン酸 不飽和脂肪酸 C20:1 3
エルカ酸 不飽和脂肪酸 C22:1 1
リノール酸 不飽和脂肪酸 C18:2 40-54
γ-リノレン酸 不飽和脂肪酸 C18:3 11-18
ステアドリン酸 不飽和脂肪酸 C18:4 2-5
パルミチン酸 飽和脂肪酸 C16:0 6-10
ステアリン酸 飽和脂肪酸 C18:0 1-4
アラキジン酸 飽和脂肪酸 C20:0 1
ベヘン酸 飽和脂肪酸 C22:0 1

このような種類と比率で構成されています(文献1:2017)

γ-リノレン酸の含有量がルリジサ種子油に次いで多いことが特徴で、リノール酸が40-54%、γ-リノレン酸が11-18%を占めており、リノール酸は二重結合を2つもっている酸化安定性の低い不飽和脂肪酸であり、またγ-リノレン酸は二重結合を3つもっているさらに酸化安定性の低い不飽和脂肪酸であるため、総合的に酸化安定性はかなり低いと考えられます。

また二重結合を4つもっている不飽和脂肪酸であるステアドリン酸を2-5%含有していることも酸化安定性を大きく下げる一因となっています。

γリノレン酸は必須脂肪酸に分類され、体内で合成できず摂取する必要があると考えられていますが、同じく必須脂肪酸であるリノール酸の代謝経路の中でアラキドン酸を合成する前駆体として生合成されるため、必須脂肪酸からは外されることもあります(文献3:2007)

またアトピー性皮膚炎、湿疹、乾燥肌、経表皮の水分損失量の増加、表皮のバリア機能低下などの障害は、γ-リノレン酸の不足と関係していることが明らかにされており(文献4:1990;文献5:1991)、γ-リノレン酸の摂取または塗布は、湿疹、皮膚炎、ニキビの症状を減少させ、乾燥肌や荒れ肌を改善し、皮膚の滑らかさを増し、紫外線による発赤や紅斑を改善することが報告されています(文献6:1990;文献7:1996)

ちなみに、経口摂取によって皮膚細胞中γ-リノレン酸量を増加させて起こる効果と皮膚に塗布して起こる効果は同様で(文献8:2002)、このことは、どちらにせよ体内に入ったγ-リノレン酸は同じメカニズムで作用していると考えられています。

一方でγリノレン酸を補う必要があるのは、高齢者やアトピー性皮膚炎のように皮膚障害を有している場合であり、健康なヒトは通常、必須脂肪酸であるリノール酸から必要量のγ-リノレン酸を体内で合成することができるため、γ-リノレン酸を摂取してもとくに効果を示さないという報告もあります(文献8:2002)

またヨウ素価は、

ヨウ素価 ヨウ素価による分類
145-185 乾性油

一例としてこのように記載されており(文献1:2017)、130以上の乾性油のため、乾燥性が高いと考えられます。

乾油性とは、皮膜状に空気中に放置すると、固化して弾性のある乾燥皮膜を生じるオイルのことで、たとえば油性塗料に用いることで塗料の乾きが早くなります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗浄製品、ヘアケア製品、ネイル製品などに幅広く使用されています(文献1:2017)

角質水分量増加および経表皮水分蒸散量抑制によるエモリエント作用

角質水分量増加および経表皮水分蒸散量抑制によるエモリエント作用に関しては、リノール酸を主成分とし、またγ-リノレン酸を11-18%含んでいることから、ベタつきなくサッパリした軽い質感であり、皮表柔軟化作用と経表皮水分蒸散抑制作用に優れたエモリエント剤であると考えられます。

ただし、かなり酸化安定性が低いので、ほかの酸化安定性の高い植物油と併用して使用されます。

1976年にユニリーバ研究所によって報告されたラット皮膚における脂肪酸トリグリセリド塗布による経表皮水分蒸散量の影響検証によると、

低下したバリア機能の修復に対する不飽和脂肪酸トリグリセリドの影響を検討した。

必須脂肪酸を欠乏させたラットの剃毛した皮膚に種々の不飽和脂肪酸を含むトリグリセリド10mg含有ジエチルエーテル溶液0.2mLを5日間毎日塗布した。

他の不飽和脂肪酸は、経表皮水分蒸散量(TEWL)の継続的な増加を示すかまたは特に変化を示さなかったのに対して、リノール酸とγ-リノレン酸のトリグリセリドは経表皮水分蒸散量(TEWL)の減少が2日目以降に顕著に観察され、4日目には処理前よりも減少したことがわかった。

この結果は、適用された脂肪酸が表皮レシチン(細胞膜)に取り込まれることで、経表皮水分蒸散量の変化に影響を与えたと考えられ、皮膚に塗布されたトリグリセリドは皮膚によって代謝され、脂質に取り込まれる可能性があることを示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1976)、リノール酸とγ-リノレン酸を含有するクロフサスグリ種子油に経表皮水分蒸散量抑制によるエモリエント作用が認められると考えられます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

クロフサスグリ種子油の配合製品数と配合量の調査結果(2010年)

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クロフサスグリ種子油の安全性(刺激性・アレルギー)について

クロフサスグリ種子油の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • アクネ菌増殖性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 114人の被検者に0.1%クロフサスグリ種子油を含むスカルプコンディショナーの1%溶液を対象に一次皮膚刺激性試験を実施したところ、皮膚刺激はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2005)
  • [ヒト試験] 119人の被検者に0.25%クロフサスグリ種子油を含むクリームを対象に一次皮膚刺激性試験を実施したところ、皮膚刺激はなかった(Institut D’Expertise Clinique,2005)
  • [ヒト試験] 114人の被検者に0.1%クロフサスグリ種子油を含むスカルプコンディショナーの1%溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2005)
  • [ヒト試験] 228人の被検者に0.2%クロフサスグリ種子油を含むアイマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、誘導期間において4人の被検者に疑わしい皮膚反応が観察されたが、臨床的に関連があるとは判断されず、また期間中にほかに皮膚反応は観察されなかったため、皮膚感作剤ではなかった(TKL Reseach,2007)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に0.2%クロフサスグリ種子油を含むスキンクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2010)
  • [ヒト試験] 118人の被検者に0.25%クロフサスグリ種子油を含むクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、皮膚刺激剤または皮膚感作剤ではなかった(Institut D’Expertise Clinique,2005)
  • [ヒト試験] 195人の被検者に0.2%クロフサスグリ種子油を含むアイマスクを対象に4週間使用試験を実施したところ、有害な報告はなく、過敏な肌にも適しいていると判断された(Q Research,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2017)によると、

  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて、0.2%クロフサスグリ種子油を含むアイマスクを処理したところ(HET-CAM法)、実質的に非刺激性に分類された(CPTC,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

コメドジェニシティ(ニキビの原因となるアクネ菌の増殖促進性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 6人の被検者に0.2%クロフサスグリ種子油を含むアイマスクを適用したところ、コメドの増殖性はなかった(Ivy Labs,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、アクネ菌増殖性なしと報告されているため、アクネ菌増殖性はほとんどないと考えられます。

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クロフサスグリ種子油はエモリエント成分、ベース成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:エモリエント成分 ベース成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Plant-Derived Fatty Acid Oils」International Journal of Toxicology(36)(3),51S-129S.
  2. 鈴木 洋(2011)「カシス」カラー版健康食品・サプリメントの事典,35.
  3. 藤岡 賢大(2007)「γ-リノレン酸高含有ボラージ油のスキンケアへの応用」Fragrance Journal 臨時増刊号(20),90-93.
  4. Campbell K.L(1990)「Fatty Acid Supplementation and Skin Disease.」Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice(20)(6),1475-1486.
  5. Melnik B, et al(1991)「Atopic dermatitis and disturbances of essential fatty acid and prostaglandin E metabolism.」Journal of the American Academy of Dermatology(25)(5 Pt.1),859–860.
  6. Ziboh VA, et al(1990)「Essential fatty acids and polyunsaturated fatty acids: significance in cutaneous biology.」Annual Review of Nutrition(10),433-450.
  7. Gunji H, et al(1996)「Clinical effectiveness of an ointment containing prostaglandin E1 for the treatment of burn wounds.」Journal of the International Society for Burn Injuries(22)(5),399-405.
  8. 田中 稔久(2002)「γ-リノレン酸を化粧品に配合した時の効果」Fragrance Journal(30)(8),86-88.
  9. P.J. Hartop, et al(1976)「Changes in transepidermal water loss and the composition of epidermal lecithin after applications of pure fatty acid triglycerides to the skin of essential fatty acid‐deficient rats」British Journal of Dermatology(95)(3),255-264.

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