オレイン酸とは…成分効果と毒性を解説

洗浄 起泡 乳化 感触改良 抗菌成分
オレイン酸
[化粧品成分表示名称]
・オレイン酸

[医薬部外品表示名称]
・オレイン酸

主にオリーブ果実油などから得られる、化学構造的に炭素数:二重結合数がC18:1で構成された分子量282.5の高級脂肪酸(不飽和脂肪酸)です(文献3:2019)

高級脂肪酸とは、化学構造的に炭素数12以上の脂肪酸のことをいい、炭素数が多いとそれだけ炭素鎖が長くなるため、長鎖脂肪酸とも呼ばれます。

また直鎖で炭素鎖が長いほど(炭素数が大きいほど)融点(∗1)が高くなりますが、オレイン酸は1つの二重結合があり、直鎖ではなく二重結合部を頂点とした山なりに曲がったような化学構造になるため、融点は直鎖より低く、13.4℃です(文献4:2016)

∗1 融点とは固体が液体になりはじめる温度のことです。

高級脂肪酸は、以下の表のように大きく2種類に分類され、

  飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
化学結合 すべて単結合(飽和結合) 二重結合や三重結合を含む(不飽和結合)
含有油脂 動物性油脂に多い 植物性油脂に多い
常温での状態 固体(脂) 液体(油)
融点 高い 低い
酸化安定性 高い 比較的低い

化学構造的に二重結合(不飽和結合)の数が多いほど酸化安定性が低くなりますが、オレイン酸は化学構造的に二重結合(不飽和結合)をひとつ有する不飽和脂肪酸であり、飽和脂肪酸ほどではないですが、不飽和脂肪酸の中では酸化安定性の高い脂肪酸です(文献5:1997)

ただし、2004年に資生堂によってオレイン酸やパルミトレイン酸など二重結合が1つの不飽和脂肪酸が恒常的に過剰に存在すると、顔面毛穴周囲の肌状態およびキメの状態が悪化する可能性が高いことが報告されています(文献6:2004)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、ボディ&ハンドソープ製品など様々な製品になどに使用されます(文献4:2016)

ナトリウムセッケン合成による洗浄・起泡

ナトリウムセッケン合成による洗浄・起泡に関しては、まず前提知識としてナトリウムセッケン合成およびナトリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケン(∗2)は、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

∗2 セッケンには、「セッケン」「石けん」「せっけん」「石鹸」など4種の表記法があり、これらの用語には界面活性剤を意味する場合と界面活性剤を主剤とした製品を意味する場合がありますが、化学分野では界面活性剤を「セッケン」、製品を「せっけん」と表現する決まりになっています。それらを考慮し、ここでは界面活性剤を「セッケン」、セッケンを主剤とした製品を「石鹸」と記載しています。

  • ケン化法:油脂 + 水酸化Na → 油脂脂肪酸Na + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化Na → 高級脂肪酸Na + 水

この2種類があります。

オレイン酸は高級脂肪酸であることから中和法が用いられ、また中和に用いるアルカリを水酸化Naにすることでナトリウムセッケン(固形石鹸)が得られます(文献7:1979)

上記では、中和法によって合成されるセッケンを「高級脂肪酸Na」と表記しましたが、中和法で得られるオレイン酸のナトリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na オレイン酸、水酸化Na
オレイン酸Na
石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「オレイン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naが一緒に記載されます。

次にオレイン酸を使用したナトリウムセッケンの洗浄力および起泡力については、以下の表のように、

脂肪酸名 洗浄力
(温水)
洗浄力
(冷水)
起泡性 泡持続性
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献8:1990)、実際にすすぎに使用する38℃付近ではミリスチン酸とほぼ同等の洗浄力であると報告されています(文献9:1957)

オレイン酸はステアリン酸と同じく炭素数18ですが、ステアリン酸が38℃付近では水に溶けにくく、洗浄力が低いのに対してオレイン酸は洗浄性が高いという違いがあります。

この違いは、オレイン酸が分子の真ん中に二重結合を1つもっており、二重結合は弱いながらも親水基の仲間であるため、水にもよく溶け、洗浄力を発揮することに起因しています(文献10:2007)

次に、1955年に日本油脂によって報告された飽和脂肪酸のナトリウムセッケンの起泡力検証によると、

各高級脂肪酸のナトリウムセッケンを水道水溶液(温度35℃)で0.25%濃度に希釈し、それぞれの起泡力をRoss&Miles法に基づいて測定したところ、以下の表のように、

高級脂肪酸 炭素数:二重結合数 起泡力:泡の高さ(mm)
直後 5分後
ラウリン酸 C₁₂:0 217 208
ミリスチン酸 C₁₄:0 350 350
パルミチン酸 C₁₆:0 37 32
ステアリン酸 C₁₈:0 25 21
オレイン酸 C₁₈:1 268 269

起泡力に最適な高級脂肪酸はC₁₂-C₁₄に存在し、他の炭素数ではかなり起泡力が低下していることがわかった。

また不飽和脂肪酸であるオレイン酸もミリスチン酸ほどではないが高い起泡力をもっていることがわかった。

さらに同じ条件(各試料0.25%濃度、温度35℃)でオレイン酸と各飽和脂肪酸を1:1の等量配合した場合の起泡力を測定したところ、以下の表のように、

不飽和脂肪酸 飽和脂肪酸 起泡力:泡の高さ(mm)
直後 5分後
オレイン酸 ラウリン酸 267 267
ミリスチン酸 285 286
パルミチン酸 303 304
ステアリン酸 279 279

オレイン酸を等量配合した場合、各飽和脂肪酸ナトリウムの炭素数による起泡力の影響はなかり少なくなり、またパルミチン酸およびステアリン酸の起泡力に著しい相乗効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1957;文献11:1955)、オレイン酸は実際にすすぎに使用する38℃付近で、ミリスチン酸ほどではないものの高い起泡力が認められています。

オレイン酸は炭素数18ですが、同じく炭素数18のステアリン酸の起泡力が低いのは、38℃付近で水に溶けにくいためであり、オレイン酸は分子の真ん中に二重結合を1つもっており、二重結合は弱いながらも親水基の仲間であることから、水にもよく溶け、起泡力を発揮することからステアリン酸との起泡力の違いが生じていると考えられます(文献10:2007)

また、各ナトリウムセッケンに等量のオレイン酸を配合することで単体では起泡力の低いパルミチン酸およびステアリン酸の起泡力を著しく増大することが報告されています(文献9:1957)

このような背景から、市販の洗浄製品には複数のナトリウムセッケンが混合されており、総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(文献12:1993)

カリウムセッケン合成による起泡・選択洗浄

カリウムセッケン合成による洗浄・起泡に関しては、まず前提知識としてカリウムセッケン合成およびカリウムセッケンの化粧品成分表示記載方法について解説します。

セッケンは、洗浄基剤として洗浄性および起泡性を有していることが知られており、その製造法には、

  • ケン化法:油脂 + 水酸化K → 油脂脂肪酸K + グリセリン
  • 中和法:高級脂肪酸 + 水酸化K → 高級脂肪酸K + 水

この2種類があります。

オレイン酸は高級脂肪酸であることから中和法が用いられ、また中和に用いるアルカリを水酸化Kにすることでカリウムセッケン(液体石鹸)が得られます(文献7:1979)

上記では、中和法によって合成されるセッケンを「高級脂肪酸K」と表記しましたが、中和法で得られるオレイン酸のカリウムセッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化K オレイン酸、水酸化K
オレイン酸K
カリ石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「オレイン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Kが一緒に記載されます。

また、ナトリウムセッケンやカリウムセッケンのほかに、ナトリウムセッケン(固形セッケン)にカリウムセッケン(液体セッケン)を添加することで、水に対する溶けやすさや泡立ちを改良したカリ含有ナトリウムセッケンがあり、オレイン酸を含むカリ含有セッケンが化粧品成分表示一覧に記載される場合は、以下のように、

アルカリ剤の種類 化粧品成分表示方法
水酸化Na + 水酸化K オレイン酸、水酸化Na、水酸化K
オレイン酸Na、オレイン酸K
カリ含有石ケン素地

これら3つのいずれかの記載方法で記載されるため、セッケン(洗浄基剤)目的で「オレイン酸」が化粧品成分表示一覧に記載されている場合は、水酸化Naおよび水酸化Kが一緒に記載されます。

次に、カリウムセッケンによる起泡・選択洗浄に関しては、カリウムセッケンはナトリウムセッケンより溶解性が高く、起泡性に優れていることが知られています(文献13:1958)

また、30℃および40℃での各脂肪酸における0.5%濃度の脂肪酸カリウムセッケンの起泡力および泡持続性は、

  脂肪酸名 起泡性 泡持続性
30℃ 40℃ 30℃ 40℃
飽和脂肪酸 ラウリン酸
ミリスチン酸
パルミチン酸
ステアリン酸
不飽和脂肪酸 オレイン酸

このような傾向が明らかにされており(文献14:1989)、オレイン酸は40℃および30℃付近の両方でミリスチン酸と同等の優れた起泡力および泡持続性が知られています。

ただし、市販の洗浄製品には使用されているカリウムセッケンは複数の混合物であり、またほかの界面活性剤との相乗効果を考慮した処方設計されていることも多く、製品における洗浄力や起泡性はこれらの総合的な洗浄力、起泡性および泡持続性を示します(文献12:1993)

次に、カリウムセッケンは主に洗顔料に使用されますが、洗顔の場合、過剰な皮脂や汚れを洗浄することが必要である一方で、皮膚の恒常性を保持するための角質細胞間脂質などまで洗い流してしまうことは望ましいことではありません。

このような背景から、洗顔において皮膚のつっぱり感や肌荒れを回避するために、皮膚の恒常性に必要な物質を極力洗い流さない選択洗浄性(∗3)が重要であり、顔におけるカリウムセッケンの選択洗浄性とは、皮膚の向上性を保つために重要な因子である角層細胞由来脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルを残存させ(∗4)、皮脂由来脂質であるスクワレンを汚れとともに洗浄することを意味します。

∗3 選択洗浄性とは、ある物質はよく洗い流すが、ある物質は洗い流さず残すという洗浄剤の性質のことです。

∗4 角質細胞間脂質であるコレステロールおよびコレステロールエステルの残存は皮膚の乾燥や肌荒れを防ぐための重要な因子であると考えられています。

1989年にポーラ化成工業によって報告された各カリウムセッケンの選択洗浄性検証によると、

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールエステルおよびコレステロールの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を0.5%濃度の各カリウムセッケン洗浄液300mLで30分間洗浄し、水洗いを比較として、30分後の豚皮に残存した皮脂組成を検討したところ、以下のグラフのように、

30分洗浄後のブタ皮の皮膚組成比率の変化

水洗いでは、親水性の高いコレステロールが除去され、コレステロール比率の減少を示した。

一方で、オレイン酸は他の脂肪酸カリウム塩ほどではないが、スクワレンを洗浄し、コレステロールエステルおよびコレステロールを残す選択洗浄性を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献15:1989)、オレイン酸は他のカリウムセッケンほどスクワレンの洗浄率が高いわけではありませんが、コレステロールエステルおよびコレステロールは残しており、選択洗浄性が認められています。

セッケン合成による乳化

セッケン合成による乳化に関しては、まず前提知識として乳化とエマルションについて解説します。

乳化とは、1つの液体にそれと溶け合わない別の液体を微細な粒子の状態に均一に分散させることをいいます(文献16:1990)

そして、乳化の結果として生成された分散系溶液をエマルションといい、基本的な化粧品用エマルションとして、以下の図のように、

エマルションの基本構造

水を外部相とし、その中に油が微細粒子状に分散している水中油滴型(O/W型:Oil in Water type)と、それとは逆に油を外部相とし、その中に水が微細粒子状に分散している油中水滴型(W/O型:Water in Oil type)があります(文献16:1990)

身近にあるO/W型エマルションとしては、牛乳、生クリーム、マヨネーズなどがあり、一方でW/O型エマルションとしてはバター、マーガリンなどがあります。

オレイン酸セッケンは自己乳化能を有しており、O/W型エマルションを自動的につくることができることが古くから知られており(文献17:1957;文献18:1957)、乳化目的でスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、ハンドケアクリームなどに使用されています。

乳化物の感触改良

乳化物の感触改良に関しては、クリームの伸び、硬さ、流動性など質感を調整するベース成分として非常に重要な成分であり、ヘアクリームやシェービングクリームなど毛髪関連乳化物に用いると飽和脂肪酸だけを用いた場合よりも毛髪に柔軟効果を付与します(文献19:1997)

黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用

黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用に関しては、まず前提知識として皮膚常在菌について解説します。

一般に、健常なヒト皮膚上には皮膚常在菌と呼ばれる多種の微生物が常在して微生物叢を形成し、健康な状態においてはそれが病原性微生物の侵入を排除する生体バリアとしても機能しており、皮膚の恒常性を保つ一因となっています。

皮膚常在菌には、主に、

  • アクネ菌(Propionibacterium acnes)
  • 表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)
  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

などが大半を占め、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は拮抗関係にあり、黄色ブドウ球菌に対して表皮ブドウ球菌の優位性を高めることが健康な皮膚をつくるための重要な要因のひとつであると考えられています(文献20:2001)

これら常在菌は、皮膚上でバリア機能として働いている一方で、皮脂分泌の亢進により皮脂貯留が起こることで増殖し、それにともなって増殖したアクネ菌や表皮ブドウ球菌に存在するリパーゼも増加することにより、皮脂成分であるトリグリセリドが分解され、遊離脂肪酸が増加し、炎症を引き起こすといわれています。

またアトピー性皮膚炎発症の原因のひとつに黄色ブドウ球菌の異常増殖が関係していることが報告されています(文献21:2015)

1996年に昭和薬科大学微生物学研究室 によって報告された脂肪酸および植物油脂における黄色ブドウ球菌の増殖抑制検証によると、

アトピー性皮膚炎患部からは高率に黄色ブドウ球菌が分離され、増悪因子であると考えられている。

精製ツバキ油にはアトピー性皮膚炎のスキンケアに用いられた際に有用であった例が報告されているが、その効果も主に乾燥性皮膚を改善するスキンケア効果の間接的なものと思われている。

しかし、精製ツバキ油のアトピー性皮膚炎に対する効果はスキンケア効果だけでなく、トリグリセリドとして含まれるオレイン酸の黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用による可能性もあるのではないかと考え、局方ツバキ油、精製ツバキ油およびオリーブ油などの植物油脂による黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用について検討し、脂肪酸のリノール酸およびオレイン酸、化粧品基剤のスクワランミネラルオイルについて比較した。

各種細菌の発育支持能に優れた培地に各試料80μg/mLを添加し、均一に混ぜた後に培養した黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus FDA 209 P)を1.0×10⁷CFU/mLになるように接種した。

試料を含まない培地における増殖と比較し、それぞれの試料が増殖に与える最小濃度を求めたところ、以下の表のように(∗5)(∗6)

∗5 NI(Not inhibitory at the concentrations tested)とは、試験した濃度では増殖抑制効果は認められないという意味です。

∗6 ID50(median infective dose:50%感染量)とは、細菌やウイルスなどの定量法の一つで、多数の動物や培養組織に、感染性の微生物を含む検体を接種した場合に、全体の50%に感染させると推定される微生物等の量を表す数値です。

試料 試料が増殖に与える最小濃度(μg/mL) ID50(μg/mL)
リノール酸 1.25 1.6
オレイン酸 5 6.0
局方ツバキ油 2.5 3.5
精製ツバキ油 10 35
オリーブ油 20 ≧100
スクワラン NI NI
ミネラルオイル NI NI

オレイン酸は、優れた黄色ブドウ球菌の増殖抑制効果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献22:1996)、オレイン酸に黄色ブドウ球菌増殖抑制による抗菌作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2006年および2016-2019年の比較調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

オレイン酸の配合製品数と配合量の調査結果(2006年および2016-2019年)

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オレイン酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

オレイン酸の現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 100年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(すすぎなし):ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性(すすぎあり):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 20人および21人の被検者グループに市販品のオレイン酸30%を単一閉塞パッチ適用したところ、単一刺激スコアは最大8.00のうち0.05および0.19で、本質的に非刺激性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1972)
  • [ヒト試験] 16人の被検者に50%オレイン酸を含むミネラルオイルをソープチャンバーテストで5日間毎日閉塞パッチ適用したところ、紅斑スコアは0~5のスケールで0.22で、非刺激性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1984)
  • [ヒト試験] 16人の被検者に8%オレイン酸を含む石けん調剤をソープチャンバーテストで5日間毎日閉塞パッチ適用したところ、紅斑スコアは0~5のスケールで2.13で、中等の刺激性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1985)
  • [ヒト試験] 15人の被検者に6%オレイン酸を含む2つのマスカラ調剤を毎日23時間21日間連続で閉塞パッチ適用したところ、累積刺激スコアは最大945のうち204および212で、累積刺激があると考えられた(Hill Top Research,1974)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に5%オレイン酸を含む調剤を毎日23時間21日間連続で閉塞パッチ適用したところ、累積刺激スコアは最大630のうち95で、おそらく軽度の累積刺激性があると考えられた(Hill Top Research,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、軽度の累積皮膚刺激性が複数報告されているため、軽度の累積皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

セッケンの皮膚刺激性に関しては、

ラウリン酸(C₁₂) ← ミリスチン酸(C₁₄) ← オレイン酸(C₁₈) ← パルミチン酸(C₁₆) ← ステアリン酸(C₁₈)

この順に皮膚刺激が強いことが知られており、またナトリウムセッケンよりカリウムセッケンのほうが皮膚刺激性が強いことが報告されていますが(文献23:1939)、一般に洗浄製品のような短時間の非連続使用として皮膚から完全に洗い流すように設計された製品において、セッケンが皮膚に与える影響は極めて少ないことが明らかにされています(文献24:1972)

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 23人の女性被検者に2~3%オレイン酸を含むマスカラおよびアイシャドーを毎日2回(朝と夕方)3週間使用してもらったところ、いずれの被検者にも眼刺激の兆候はみられなかった(MED Check,1982)
  • [ヒト試験] 35人の女性被検者に2~3%オレイン酸を含むマスカラおよびアイシャドーを毎日2回(朝と夕方)3週間使用してもらったところ、いずれの被検者にも眼刺激の兆候はみられなかった(MED Check,1985)
  • [動物試験] 6匹のうさぎを用いてオレイン酸(濃度不明)を対象にした眼刺激性試験を実施したところ、24時間後で眼刺激性スコア最大110のうち2、48および72時間後は1であり、非刺激性であった(International Bio-Research-U.S,1974)
  • [動物試験] 6匹のうさぎの眼に5%オレイン酸を含むクリーム製剤を14日間毎日点眼し、眼はすすがず、眼刺激性を評価したところ、1週間の間ずっと軽度の結膜炎が続いた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)
  • [動物試験] 3匹のうさぎ2群の眼に3%オレイン酸を含むマスカラ製剤を点眼し、1群は眼をすすぎ、もう1群は眼をすすがず、眼刺激性を評価したところ、眼をすすがなかった群でGrade1の角膜紅斑が観察されたが2日以内に消失した(Leberco Laboratories,1984)
  • [動物試験] 3匹のうさぎ2群の眼に2%オレイン酸を含むマスカラ製剤を点眼し、1群は眼をすすぎ、もう1群は眼をすすがず、眼刺激性を評価したところ、いずれのうさぎも眼刺激性は観察されなかった(Leberco Laboratories,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼をすすがない場合に軽度の眼刺激性が報告されているため、眼をすすがない場合に軽度の眼刺激性を誘発する可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987;文献2:2019)によると、

  • [ヒト試験] 23人の被検者に6%オレイン酸を含むマスカラを対象にMaximization皮膚感作試験を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1974)
  • [ヒト試験] 153人の被検者に5%オレイン酸を含む製剤を対象にRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、誘発期間において1-3人の被検者に微弱な反応がみられ、チャレンジ期間において1人の被検者にわずかな反応がみられた(HTR,1983)
  • [ヒト試験] 205人の被検者に2%オレイン酸を含むマスカラ調剤を対象にRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作はなかった(UCLA,1985)
  • [ヒト試験] 14人の被検者に2%オレイン酸を含むマスカラ調剤を対象にRIPT(皮膚累積刺激&感作試験)を実施したところ、チャレンジパッチにおいて1人の被検者に不明瞭な皮膚反応がみられた(H.I.Maibach,1982)
  • [in vitro試験] 皮膚感作性試験代替法であるDPRA(Direct Peptide Reactivity Assay:ペプチド結合性試験)において、合成システインペプチドおよび合成リシンペプチドと97%オレイン酸を混合・反応させ、ペプチドの減少率から皮膚感作性を評価したところ、陰性であった(Yamashita K,et al,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ほとんど共通して皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:1987;文献2:2019)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に5.08%オレイン酸を含むチーク製剤を対象に光感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も光感作の反応はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1983)/li>
  • [ヒト試験] 25人の被検者に1.5%オレイン酸を含むリキッドファンデーション製剤を対象に光感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も光感作の反応はなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚吸着性について

皮膚吸着性に関しては、まず前提知識としてナトリウムセッケンおよびカリウムセッケンの皮膚吸着に対する影響について解説します。

セッケンを含む洗顔料を使用した洗顔においては、カリウムセッケンが皮膚に吸着残留する量が増えるほど洗顔後につっぱり感やかさつき感を感じる傾向にあり、洗顔後のつっぱり感やかさつき感を防ぐためには、皮膚吸着の少ないカリウムセッケンの使用が重要であると考えられます。

1989年にポーラ化成工業によって報告された各カリウムセッケンの選択洗浄性検証によると、

皮脂由来スクワレンと角層細胞由来脂質であるコレステロールエステルおよびコレステロールの比率が72:14:14の豚皮のモデル皮脂を0.5%濃度の各カリウムセッケン洗浄液300mLで5分,15分および30分間洗浄し、30分後の豚皮に残存した脂肪酸(洗浄に使用したものと同じ脂肪酸)の量を測定したところ、以下のグラフのように、

脂肪酸セッケンによる皮膚洗浄後に残存吸着した脂肪酸量の比較

ラウリン酸およびミリスチン酸で洗浄した場合は、使用した脂肪酸と同じ脂肪酸量が洗浄時間とともに増加したことから、明らかに皮膚吸着を示していると考えられた。

一方で、パルミチン酸およびステアリン酸は残存量が非常に少なく、洗浄時間とともに減少しており、皮膚吸着していないものと考えられた。

また、オレイン酸の場合は、残存量は比較的多いものの洗浄時間とともに減少していることから、皮膚吸着の可能性は低いと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献25:1999)、オレイン酸のカリウムセッケンは皮膚吸着性がほとんどないことが認められています。

そのため、オレイン酸のカリウムセッケンは、かさつき感やつっぱり感を感じることが比較的少ないと考えられます。

∗∗∗

オレイン酸はベース成分、界面活性剤、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 界面活性剤 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

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