エチルヘキシルグリセリンとは…成分効果と毒性を解説

ベース成分 保湿 防腐 消臭
エチルヘキシルグリセリン
[化粧品成分表示名称]
・エチルヘキシルグリセリン(改正名称)
・オクトキシグリセリン(旧称)

[医薬部外品表示名称]
・グリセリンモノ2-エチルヘキシルエーテル

化学構造的にグリセリンのヒドロキシ基に2-エチレンヘキシルアルコールがエーテル結合したアルキルグリセリルエーテルです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、シート&マスク製品、デオドラント製品などに汎用されています(文献1:2013)

角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用

角質層の柔軟化および水分量増加による保湿作用に関しては、グリセリンと同様に吸湿性・保湿性を有していると報告されていますが、詳細がみつからず、わかりしだい追補します(文献3:2015)

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、2006年に成和化成によって報告されたエチルヘキシルグリセリンの抗菌性検証によると、

大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ、コウジカビに対するエチルヘキシルグリセリンのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)をメチルパラベンフェノキシエタノールペンチレングリコール1,2-ヘキサンジオールおよびカプリリルグリコールと比較検討したところ、以下の表のように(∗1)

∗1 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

試験物質 MIC(ppm)
大腸菌 緑膿菌 黄色ブドウ球菌 カンジダ コウジカビ
エチルヘキシルグリセリン >2,500 >2,500 1,300 1,300 1,300
メチルパラベン 1,300 2,600 2,600 2,000 1,000
フェノキシエタノール 3,600 3,200 8,500 5,400 3,300
ペンチレングリコール 25,000 15,000 40,000 25,000 20,000
1,2-ヘキサンジオール 10,000 10,000 15,000 10,000 10,000
カプリリルグリコール 1,300 5,000 2,500 1,300 1,300

エチルヘキシルグリセリンは、大腸菌・緑膿菌などのグラム陰性菌には作用しないが、グラム陽性菌、酵母およびカビなどに対しては他の成分と比較して有効な静菌作用を有することが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2006)、エチルヘキシルグリセリンにグラム陽性菌、酵母およびカビに対する製品自体の抗菌・防腐作用が認められています。

また、エチルヘキシルグリセリンはフェノキシエタノールと併用することでカンジダおよびコウジカビに対して相乗効果を示すことが明らかにされています(文献2:2006)

腋臭菌増殖抑制による消臭作用

腋臭菌増殖抑制による消臭作用に関しては、まず前提知識として腋臭菌について解説します。

腋臭(ワキの臭い)や汗臭は、汗の成分が皮膚常在菌によって分解されることで発生し、腋臭に関与している菌としてコリネバクテリウム属菌(学名:Corynebacterium)が知られています。

このような背景から腋臭菌の原因菌であるコリネバクテリウム属菌(Corynebacterium)の増殖を抑制することは腋臭の予防・防止において重要であると考えられます。

2006年に成和化成によって報告されたエチルヘキシルグリセリンの腋臭菌に対する抗菌性検証によると、

エチルヘキシルグリセリンの腋臭菌に対するMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下の値が得られています。

微生物 MIC(ppm)
(ppm) (%)
表皮ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus epidermidis
1,000 0.10
ミクロコッカス・ルテウス(グラム陽性球菌)
Micrococcus luteus
1,000 0.10
腋臭菌(グラム陽性桿菌)
Corynebacterium aquaticum
500 0.050
腋臭菌(グラム陽性桿菌)
Corynebacterium flavescens
1,000 0.10
腋臭菌(グラム陽性桿菌)
Corynebacterium callunae
1,000 0.10
腋臭菌(グラム陽性桿菌)
Corynebacterium nephredii
250 0.025

エチルヘキシルグリセリンは、いくつかの腋臭菌に抗菌活性を示した。

次にエチルヘキシルグリセリンのヒトに対するデオドラント作用を20人の被検者を対象に実施した。

試験には0.1%トリクロサン(最も汎用性のある消臭成分)、0.3%エチルヘキシルグリセリンおよびアルコール水溶液を1日朝夕2回5日間使用して、初回塗布時の16時間後および24時間後、塗布10回目(5日目)の6時間後にそれぞれの消臭率を評価したところ、以下の表のように、

試験物質 消臭率(%)
初回塗布
16時間後
初回塗布
24時間後
塗布10回目
6時間後
0.1%トリクロサン 28.92 21.48 22.75
0.3%エチルヘキシルグリセリン 33.58 21.42 19.81
アルコール水溶液 12.75 9.18 14.96

0.3%エチルヘキシルグリセリンは、0.1%トリクロサンと同等のデオドラント効果を有していることがわかった。

これらの結果より、エチルヘキシルグリセリンは消臭成分として有効であることが示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献2:2006)、エチルヘキシルグリセリンに腋臭菌増殖抑制による消臭作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

エチルヘキシルグリセリンの配合状況調査結果(2011年)

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エチルヘキシルグリセリンの安全性(刺激性・アレルギー)について

エチルヘキシルグリセリンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:5%濃度以下において軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [ヒト試験] 600人の被検者に0.4975%エチルヘキシルグリセリンを含むフェイシャルクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Orentreich Research Corporation,2005)
  • [ヒト試験] 105人の被検者に0.4%エチルヘキシルグリセリンを含むファンデーションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質に皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Product Investigations Inc,2007)
  • [ヒト試験] 115人の被検者に0.5%エチルヘキシルグリセリンを含むリキッドアイライナー0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質に皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Consumer Product Testing Company,2008)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に0.995%エチルヘキシルグリセリンを含むメイクアップ製剤100μLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質に皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Product lnvesigations Inc,2008)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に0.6965%エチルヘキシルグリセリンを含むボディローション100μLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質に皮膚刺激および皮膚感作の兆候はなかった(Clinical Research Laboratories Inc,2008)

– 個別事例 –

  • [個別事例] 57歳の女性はエチルヘキシルグリセリンを含むフェイシャルクリームを使用した後、まぶたにかゆみを伴う紅斑および浮腫が生じたことから10%エチルヘキシルグリセリンを含む軟膏のパッチテストを実施したところ、陽性(+)であった。対照として5人の患者にも同様のパッチテストを実施したところ、いずれの患者も陰性であった(G Linsen et al,2002)
  • [個別事例] 68歳の女性はエチルヘキシルグリセリンを含むクリームを使用した後、顔面皮膚炎を発症した。48時間閉塞パッチ試験を実施し、3および7日目に皮膚反応を評価したところ、5%エチルヘキシルグリセリンを含む軟膏に対して陽性反応を示した。対照として25人の患者にも同様のパッチテストを実施したところ、いずれの患者も陰性であった(C G Mortz et al,2009)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、個別試験において皮膚感作の報告があるため、ごくまれに皮膚感作が起こる可能性があると考えられます。

– 個別事例 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [個別事例] 慢性湿疹を有する64歳の女性は製造元から提供された成分を用いてパッチテストを実施したところ、5%エチルヘキシルグリセリンを含む軟膏に対して強い陽性反応を示したため、5%エチルヘキシルグリセリンを含む軟膏を対象に開放パッチテストを実施したところ、強い陽性反応を示した。対照として25人の患者にも同様のパッチテストを実施したところ、いずれの患者も陰性であった(K E Stausbol-Gron Andersen,2007)

と記載されています。

試験データは個別試験データのみですが、皮膚感作性が報告されているため、皮膚炎を有する場合においてごくまれに皮膚感作が起こる可能性があるとと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に未希釈のエチルヘキシルグリセリン0.1mLを点眼し、OECD405テストガイドラインに基づいて21日目まで眼刺激性を評価したところ、すべてのウサギに結膜発赤およびケモーシスが観察され、刺激スコアは3のうち2であった。未希釈のエチルヘキシルグリセリンはウサギの眼に重度の刺激性を引き起こすと結論付けられた(Schiilke Mayr GmbH,2010)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に5%エチルヘキシルグリセリン水溶液0.1mLを点眼し、OECD405テストガイドラインに基づいて21日目まで眼刺激性を評価したところ、1時間で刺激スコア3のうち1の結膜紅斑を引き起こしたが、それらは24時間以内に完全に消失し、虹彩や角膜に刺激の兆候はなかった。この結果から5%エチルヘキシルグリセリン水溶液は軽度の眼刺激性に分類された(Schiilke Mayr GmbH,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、100%濃度で重度の眼刺激性および5%濃度で軽度の眼刺激性が報告されていますが、化粧品においてはほとんどの場合、5%濃度以下で使用されていることから、軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2013)によると、

  • [動物試験] モルモットの脇腹に25%-100%濃度範囲のエチルヘキシルグリセリン溶液を適用した後、UVAライト(20j/c㎡)を照射し、反対側の脇腹は各濃度の溶液を適用した後に照射はせず陰性対照とし、光毒性を評価したところ、この試験物質は光毒性の調光を示さなかった(Schiilke Mayr GmbH,2010)
  • [動物試験] モルモットの皮膚に未希釈のエチルヘキシルグリセリンを適用しその後にUVAおよびUVBライトを照射する手順を14日間で5回行い、その後にチャレンジパッチを実施したところ、いずれのモルモットも皮膚反応を示さなかった。この結果からこの試験物質は光感作剤ではないと結論付けられた(Schiilke Mayr GmbH,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

エチルヘキシルグリセリンはベース成分、保湿成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分 安定化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2013)「Safety Assessment of Alkyl Glyceryl Ethers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(32)(5),5S-21S.
  2. 永尾 聖司(2006)「オクトキシグリセリン(Ethylhexylglycerin)の抗菌力と特性」Fragrance Journal(34)(4),39-46.
  3. 宇山 光男, 他(2015)「エチルヘキシルグリセリン」化粧品成分ガイド 第6版,48.

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